好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Karen Carpenter

図らずもクロディーヌ・ロンジェ、ザ・サンド・パイパーズと初期A&Mレコーズを代表するアーティストを紹介してきましたので、今回はそのA&Mの大看板だったザ・カーペンターズを取り上げることにしました。しかし、カーペンターズを扱ったブログの記事については星の数ほど存在します。というわけで、私は比較的論じられているのが少なそうなカレン・カーペンターの唯一のソロ・アルバムについて語ってみたいと思います。
リチャード・カーペンターが睡眠薬依存症の治療のために休養を余儀なくされた1979年、カレンはニュー・ヨークに渡りフィル・ラモーンをプロデューサーに迎えてソロ・アルバムを制作することを決意しました。フィル・ラモーンはポール・サイモンの『Still Crazy After All These Years(時の流れに)』(1976年発表)やビリー・ジョエルの『Just The Way You Are(素顔のままで)』(1979年)、『52nd Street(ニューヨーク52番街)』(1980年)などのアルバムのプロデューサーとして有名ですが、彼がプロデューサーとして関わったアーティストのアルバムや楽曲は枚挙に暇がありません。
カレンとラモーンは入念に打ち合わせをし、「カーペンターズのようなサウンドと一線を画すもの」、「歌詞の面でより成熟味を出すこと」の2点をコンセプトに決めました。1950年生まれのカレン。30歳という年齢を目前にした立派な大人の女性です。カレンは従来のイメージを払拭しようと努めたのでしょう。それ故完璧なものを目指したためか、当初半年の予定だった制作期間が一年掛かりの大仕事となり、余分に発生した制作費をカレンが私費で負担するはめになりました。
これほど苦労して作り上げたアルバムですが、完成された録音を聴いたリチャードの反応は鈍く、当時のA&Mの重役たちも発売に難色を示しました。失望したカレンはこのアルバムをお蔵入りさせることに決め、回復したリチャードとともにカーペンターズとしての活動を再開させて新しいアルバムの制作に取り掛かります。
このアルバムに収録された楽曲の中の4曲(「Lovelines」、「If I had You」、「If We Try」、「Remember When Lovin' Took All Night」)はカーペンターズ名義で出された『Lovelines(愛の軌跡)』(1989年発表)で世に出ており、また、カレンが亡くなった1983年に発表された『Voice Of The Heart』ではソロ・アルバム用に録音された「Make Believe It's Your First Time(遠い初恋)」のふたつのヴァージョンのうちの片方が収録され、シングル・カットもされています。ちなみにこの曲はボビー・ヴィントンが1980年にカレンに先んじてリリースし、小ヒットを記録していました。
まるで楽曲が小出しにされていたような印象を受けますが、『Make Believe It's Your First Time』のもう一方のヴァージョンを収録したカレンのソロ・アルバムは1983年に彼女が亡くなってから13年が経った1996年にようやく陽の目を見ます。

カレン・カーペンターはもともと内向的な性格だったらしく、それ故自分がリード・ヴォ-カルという目立つポジションにいることをためらっていたと言われています。レオン・ラッセル作の「Superstar」(1971年発表の『Carpenters』収録)の中の「And I can hardly wait to sleep with you again」という歌詞の一文をボニー・ブラムレット(1970年にシングルで発表、1972年発表のデラニー&ボニーの『D&B Together』に収録)やリタ・ク-リッジ(1970年発表のジョー・コッカーの『Mad Dogs & Englishmen』に収録)やベット・ミドラー(1972年発表の『The Divine Miss M』に収録)らは原文のまま歌っているのに対し、その内向的な性格からかカレンはどうしても「Sleep」と発することが出来ず、カーペンターズのヴァージョンは「Be with you again」と変更されていました。カーペンターズのキャラクターも考慮されたのかもしれませんが、当時の社会背景やカレンの生い立ちや年齢なども念頭に入れて取られた措置だったのでしょう。
しかし、前述のようにこのソロ・アルバムでは成熟した「大人の女」の雰囲気を醸し出そうとしたためか、過激で刺激的な歌詞が目立ちます。

元シカゴのピート・セテラの作品、「Makin' Love In The Afternoon」。カレンとのデュエットの相手として彼の歌声も聴けます。「Sleep」さえ口に出せなかった人が、「Makin' Love」とは年相応というのか、自然な成長を遂げられたというのか、人間とはそんなものなんでしょうね。


Makin' love in the afternoon
Makin' love to another Beatle tune
And I know you're feelin' the same way too

午後の情事
ビートルズの曲で愛を交わす
あなたもまた同じような気分じゃないかしら


アルバムの中から2曲続けて聴いたいただければ幸いです。「Remember When Lovin' Took All Night」 、ポール・サイモン作の「Still Crazy After All These Years(時の流れに)」(1976年発表の同名アルバムに収録)です。


Discover Karen Carpenter!


Remember When Lovin' Took All Night
You're close enough
To touch again
Where you should be
I'd love to think what your smile is leading to
I feel your eyes, starting a fire all over me
Oh baby you know, I know what your arms can do

Remember whe lovin' took all night
Remember the feelin' of doing it right
It's been so wrong
You've been gone too long
Now it's gonna be all right
We'll take all night again tonight

And I think you know that missing you
Took all my time
Loneliness never ran so deep till then
Now here we are
Lost in a feelin' of feelin' good
Baby you know, I'll love you again and again

Remember when lovin' all night
Remember the feeling of doing it right
It's been so wrong you've been gone too long
Now It's gonna be alright
We'll take all night again tonight

手を伸ばせば届くほど近くに
あなたは戻って来た
あなたがいるべきところに
あなたの微笑みが誘う意味を
考えるのが好き
あなたの視線を感じ
私の体中に火がつき始める
あなたの腕が何をするのか分かっている

憶えてる? 一晩中愛し合ったことを
憶えてる? 上手くいったあの感じを
ずっと間違っていたのよ
あなたが長い間いなかったなんて
もう大丈夫
今夜も一晩中愛し合いましょう

分かってると思うけど
会えなくて辛いと
ずっとそのことばかりを考えている
あのときほど孤独が身に滲みたことはなかった
今はこうして
最高にいい感じの夢中
ベイビー、何度でも愛してあげたいわ

憶えてる? 一晩中愛し合ったことを
憶えてる? 上手くいったあの感じを
ずっと間違っていたのよ
あなたが長い間いなかったなんて
もう大丈夫
今夜も一晩中愛し合いましょう


アルバムから「If I Had You」。


続いて「My Body Keep's Changing My Mind」。1970年代末から80年代始めに流行ったディスコ調のサウンドです。バックにはブラザーズ・ジョンソンのルイス・ジョンソンや元ルーファスのジョンソン・ロビンソンなどが参加していました。このソロ・アルバムが発売された1996年に聴いたときは古めかしく感じたのですが、いま耳にするといやに新鮮な気がして何とも妙です。


最後に「Make Believe It's Your First Time」。時間が宜しければソロ・アルバムに収録されたヴァージョンとカーペンターズ名義で発表されたヴァージョンを聴き比べていただければ幸いです。




この他にもカレンがビリー・ジョエル・バンドを従えた「Still Love With You」を始めとして心に残る曲が揃っておりますが、とても全曲紹介しきれません。また、このソロ・アルバムのセッションでレコーディングされた曲の中にはポール・サイモン作の「I Do It For Your Love」などアルバム未収録曲が幾つか存在します。それらはブートレグとして発売されておりますし、YouTubeでもアップされていました。

遠い初恋遠い初恋
(2003/01/29)
カレン・カーペンター

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コメント

今晩は♪
初コメントです!・・・毎度、Toshinosukeでございます。

いや~、書いてますね。
私も去年3月、ポール・サイモンの『時の流れに』について書きましたが、カレンが歌っているとは知りませんでした。

記事を読んでいると、私と同じくけっこうアコースティックなのが好きなんじゃないですか?

男で色気はありませんが、また、遊びに来ま~す。
Toshinosuke様、コメントありがとうございます。
カレンがポール・サイモンの楽曲を選曲したのはソロ・アルバムのプロデューサーにフィル・ラモーンを起用したことによるところが大きかったのかもしれません。
私は特にアコースティックやシンガー・ソング・ライターが好みというわけではないのですが、せわしない音楽はあまり好きではないですね。
稚拙で陳腐なブログですが、今後とも宜しくお願い申し上げます。
こんばんは。
私はカレンのソロアルバムを最初聴いた時、その性格の生真面目さからくる懸命さをひしひしと感じ、明るいメロディの曲には余計せつなさを感じたりしました。
これはファンの勝手な思い入れも入っているものとは思いますが。
リチャードからのある意味支配から逃れて本当の自分をみつけたい。今までの自分とは違う自分を表現したい。変わりたい。。
自分の中にたくさんの問題を抱えていたことが彼女の必死の想いとなってこのソロアルバム作りを続けさせたのかなぁ、なんていうことも思います。
結婚式の写真は何度みても幸せそうで美しいですね。
天国が本当にあるのなら、幸せに笑って歌ってすごしていてほしいと真剣に願う一人がカレンです。
wakuwaku様、コメントありがとうございます。
リチャードが病に倒れた頃が皮肉にもカレンに取って一番充実していた時期だったのかも知れません。アーティストとしても一人の女性としても、本来の自分の姿がそこにあったのだと思います。
カレンは1980年に結婚するものの幸せな日々は長く続かず、離婚届にサインをする直前に亡くなったと言われています。最愛の伴侶でさえもリチャードの呪縛からカレンを解き放たせることが出来なかった、と言えば言い過ぎでしょうか。
カレンは内向的な性格と言われていますが、幼き頃よりスポーツを好みドラムを演奏する活発で外向的な女性だったとの記述もあります。天国というものがあるのなら、そこでドラムを叩きながら歌うという彼女本来のスタイルを取り戻しているかもしれませんね。

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