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好きな音楽のことについて語りたいと思います。

The Beach Boys - In My Room

 相変わらずの新型コロナ報道。メディアでは医師や専門家の先生による「今のニューヨークの状況が、2週間後の東京」、「日本国民全員に毎週のPCR検査を実施せよ」といった趣旨の解説や意見が賑わっており、国家や医療を崩壊させたいのかと勘ぐってみたくなるような印象を受けております。

 そんな暗く沈んだようになる気分を吹き飛ばしてくれるような1曲はないものかと思いを巡らせていると、5月の爽やかな涼風と眩い陽光の下、ふとザ・ビーチ・ボーイズのCDが目に止まりました。そこで、今回は彼らが1963年9月16日にリリースしたアルバム『Surfer Girl』に収録されていた「In My Room」を取り上げます。作者はブライアン3兄弟の長兄であるブライアン・ウィルソンとゲイリー・アッシャー。ゲイリー・アッシャーは後にザ・バーズのアルバム(『Yonger Than Yesterday』、『The Notroious Byrd Brothers』、『Sweetheart of The Rodeo』 など)のプロデューサーとして名をあげました。なお、ゲーリー・アッシャーはウィルソン家とご近所さんだったことから親交を深め、ブライアン・ウィルソンと楽曲を共作する仲になったとのこと。バンドやソロでレコードをリリースした経験があり、大学生の時に学費と生活費を捻出するために銀行で働いた経歴もあるというゲイリー・アッシャー。音楽にもビジネスにも才能がありそうな男が、ブライアンに近づく状況を父親のマリーは快く思わなかったのか、やがてゲイリーを出入り禁止に。それでもブライアンとゲイリーの友情は続いていったのです。

 



IN MY ROOM
自分の秘密を打ち明けられる世界がある
そこがこの部屋
俺の部屋なのさ
閉じこもって心配や恐れを締め出す世界
そこがこの部屋
俺の部屋なのさ

夢を見て 計画を練り
横になって祈る
涙を流し ため息をつき
過去を笑い飛ばす

闇の中でひとりきりでも
俺は怖れない
この部屋にいれさえすれば
俺の部屋にいれさえすれば

この部屋に
俺の部屋に

 この曲はブライアンの父であるマリー・ウィルソンとの確執がテーマとなっていると思われます。ソングライターであり、ビーチ・ボーイズのマネージャーを務めたマリー・ウィルソンは自己顕示欲が強く、しばしば家庭内暴力で子供達を屈服させていたとか。前述のゲイリー・アッシャーに関する逸話を鑑みると、自己独占欲や嫉妬心も強かったのでしょう。そんな彼が、マネージャーとしてバンドの行動全てに口を出すのは当たり前。ブライアン3兄弟のみならず他のメンバーも「おっさん、ええ加減にせいよ」と嫌悪感を抱いたとしても無理もないところです。それでブライアンらはマリーを解雇するのですが、マリーは報復行為のようにサンレイズというあたかもビーチ・ボーイズのフォロワーのようなバンドを1964年にデビューさせたり、1960年代後半には勝手にビーチ・ボーイズの版権を売却して大金を手に入れるような行動に出ました。そうした出来事が、ブライアンに精神的重圧をかけることになっていったのです。

 TVショーの映像のようです。ブライアンの切なさがよりいっそう込み上げてくるかのようなストリングスが、効果的に挿入されていました。


 それではこの曲のカヴァー・ヴァージョンを幾つか紹介しておきましょう。まずはカントリー・シンガーのジョディ・ミラーのヴァージョンです。この曲をカヴァーしたアーティストはおそらく彼女が初めてでしょう。淡々としたビーチ・ボーイスのヴァージョンとは対照的に情感込めて歌い上げています。1965年リリースのアルバム『Home Of The Brave』に収録。
 


 お次は1960年代後半に結成されたソフト・ロック・バンド、サジタリアスのヴァージョンです。サジタリアスは、この曲の共作者で、ブライアン・ウィルソンの盟友であるゲーリー・アッシャーとザ・ミレニアムのカート・ベッチャーを中心としたプロジェクト。演奏はミレニアムとスタジオ・ミュージシャンによるもので、正規のバンドではありません。彼らのセカンド・アルバム『The Blue Marble』(1969)に収録されていました。


 リンダ・ロンシュタットのヴァージョンは『Dedicated to the One I Love』(1996)に収録。囁くようなリンダの歌声はもとよりハープの音色が琴線に触れます。


 ブライアン・ウィルソン参加のタミー・ワイネットのヴァージョンです。『Tammy Wynette』(1998)に収録。タミー・ワイネットはカントリー・ミュージックのファースト・レディと呼ばれるほどの絶対的な存在でした。


 カーリー・サイモン、ディヴイッド・クロスビー、ジミー・ウェッブの嬉しい揃い踏み。ブライアン・ウィルソン・トリビュート・コンサートからの映像です。ビデオ『An All-Star Tribute to Brian Wilson』(2001)に収録。


 娘さんたちのヴァージョンも紹介しておきましょうね。ブライアン・ウィルソンを父に持つカーニー、ウェンディ姉妹とママス&パパスのジョン・フィリップスとミシェル・フィリップスを両親に持つチャイナによるコーラス・グループ、ウィルソン・フィリップスです。彼女たちのサード・アルバム『California』(2004)に収録されていました。


 それでは、ビーチ・ボーイズの歌声にロンドン管弦楽団の演奏を組み合わせたアルバム『The Beach Boys With The Royal Philharmonic Orchestra』(2018)に収録されていたヴァージョンで、今回はお開きとしましょう。


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