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Jackson Browne - Standing On The Beach

 ジャクソン・ブラウンから『Time The Conqueror』以来、6年ぶりの「歌の贈り物」が届けられました。と言っても、盟友デヴィッド・リンドレーとの共演ライヴ盤「Love Is Strange」が2010年にリリースされているので、久々という気はしません。むしろ4年ぶりの新作、『Standing In The Breach』と言ったほうが正しいのでしょうか。


Standing in the BreachStanding in the Breach
(2014/10/07)
Jackson Browne

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スタンディング・イン・ザ・ブリーチスタンディング・イン・ザ・ブリーチ
(2014/10/08)
ジャクソン・ブラウン

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STANDING IN THE BREACH
大地に激震が走り、我々の立つ土台が引き裂かれたとしても
人々は皆集まって、もとのように築き直すだろう
手の届く範囲内にまだ生き残っている命を救助するために急いで駆けつけ
自分たちの世界を一緒に再構築しようとするだろう
この難局に当たって

貧困に苦しむ人々がいる一方で、王様のような暮らしを送る人々もいる
分相応の生活を享受して安らぎを見いだす人々もいるのだけれど
彼らが、どれほどの覚悟をしようとも、私には決して理解できないだろう
誰かの命を救うために他の命を奪うことなどできようものか

大地に激震が走り、我々が仕事を投げ出す事態になろうとも
我々の努力が、あたかも上下に変動する潮流に似てうつろいやすいものであろうとも
愛が我々を救出するという信頼と確信を持って
その波の上で浮かんだり沈んだりするのだ
そして背中を曲げて心をひとつにする
この難局に当たって

わからないのか
この世界があるべき姿からそんなにほど遠くなってしまったのかを
どうしてだかわからないだろうが、
人々は見たいと望む世界のために今なお頑張っているのだ
わからないのか
すべてに綻びが出来た後で
どのようにして今、そんなことがなされようとしているのかを
だけど、人々は現実の世界に変化が必要であることが分かっている
そらすぐそこに、みんなの中に

未だ払われぬ歴史の負債
ぱっくりと開いた時間の傷跡
人間性の法則が、いつも後ろへと引き戻す
私は思いたい
大地(地球)は回復し、人々はまだ学べるかもしれないと
どうすれば世界本来の難題に対処できるのかを
我々の歩む道筋が、別の方向に変えられるのかを

大地に激震が走り、海がうねって潮位が高まろうとも
人々は皆集まって、見上げるだろう
我々の前に置かれた課題を
我々が嘆願する祈りの力を
そして我々の魂を天に向かって投げかける
この難局に当たって

わからないのか
この世界があるべき姿からそんなにほど遠くなってしまったのかを
どうしてだかわからないだろうが、
人々は見たいと望む世界のために今なお頑張っているのだ
わからないのか
すべてに綻びが出来た後で
どのようにして今、そんなことがなされようとしているのかを
人々が待ち望んでいる世界はやって来ないかもしれない
そんな世界はやって来やしないかも
だけど、人々は現実の世界に変化が必要であることが分かっている
そらすぐそこに、みんなの中に

 この歌は2010年に起きたハイチ地震を想起させる内容の歌詞から始まり、続いて格差・貧困へと及び、さらに民族紛争、宗教問題などが扱われているようです。天災や格差社会は決して海の向こうの他人事ではなく、震災、土砂災害、火山噴火など2011年以降の日本の状況にも当てはまるでしょう。
 ジャクソンは「愛が、我々を救出する」という言葉を用いて人間が持つ普遍的な人間性、人道主義の必要性を訴えています。それは仏教でいうところの「慈悲」および「自利利他」とも通じると言えるのかもしれません。
 アルバムのタイトルでもある "Standing In The Breach" は「難局に当たる」、「矢面に立つ」という意味ですが、直訳すると「破れ口に立つ」となります。国内盤の解説で音楽評論家の五十嵐正さんが述べられておられますが、ジャクソン・ブラウンお得意の聖書からの引用(旧約聖書詩篇106篇23節、出エジプト記32章1-4節)を盛り込んだものでしょう。その「破れ口」とは城壁の裂け目。古代の都市は城壁が巡らされ、戦闘時に門を閉ざして敵の侵入を防ぎました。しかし、敵は兵糧攻めにして士気を挫いたうえで城壁を壊し始め、決壊した場所から場内へと攻め入ります。そうなると戦いの雌雄は決し、町が占領されるのは明らか。命がけで敵の侵入を防いで撃退しようとする勇士の存在が必要となるでしょう。このことから聖書では「破れ口に立つ」、「攻撃の矢面に立つ」といった表現は、神の戒めを破り、罪を犯した人間のために許しを乞うべく御前に立つ者の喩えとして用いられるのです。神と人間の間を取り持つことに失敗すれば、報いとして「死」が待ち受けていることでしょう。
 聖書の中にはアブラハム、アロン、パウロ、モーセ、そして主イエス・キリストなど幾人かの「御前の破れに立った」人物がおりますが、その中のモーセの逸話が例としてよく取り上げられます。不信仰と不誠実ゆえに神の逆鱗に触れたイスラエルの民を存亡の聴きから救うためにモーセは御前に立ち、このように懇願したのでした。

「今もしあなたが、彼らの罪をゆるされますならば——。しかし、もしかなわなければ、どうぞあなたが書きしるされたふみから、わたしの名を消し去ってください」。 (出エジプト記32章32節)

 モーセの身命を賭した嘆願により、神は思い直してイスラエルの民に恩赦を与えます。己を捨てたモーセの願いと祈りが神の心を動かしたのでした。

 警察国家を自負していたアメリカを中心した体制の終焉。時代は新しい段階を迎えようとしていると言えます。モーセのような「御前の破れに立つ」存在、というよりもモーセのような献身的な心が必要とされるでしょう。
 しかし、世界で起こっている別の現実、引いては日本を取り巻く状況に置き換えたらどうでしょうか。国家と自称する過激派が神の名の下、原理主義を正義として迫害や人権侵害を行い、殺戮と処刑を繰り返しています。その背景には同じ宗教の中の宗派間の対立はもとより、同じ宗派の中でも争いが起きるといった状態になっており、事態は混迷を極め複雑化の様相。有効的で抜本的な解決法は誰にも見いだせないままです。また、日本のすぐ傍に独裁国家があり、今も多くの日本国民が拉致されたままであることは言うまでもないことでしょう。
 独裁国家やテロ組織との「話し合い」は困難を極め、不可能に近いと認識しておくことが肝要です。譲歩するような姿勢を示せば、さらにつけこまれて増々事態が悪化するかもしれません。人質にされた人々や自国民を救い、そして守るためには相手の命を奪う覚悟をしなければならないこともあり得ると思われます。
 地球の未来のために我々は今すぐ行動しなければならないとの意思を示したジャクソン・ブラウン。もちろんひとりのアーティストが、身を呈して「破れに立つ」ことは無理難題であり、非現実的なのかもしれません。しかし、人々に関心を持ってもらうために注意を促すことは可能です。そのことで人々が危機感を抱き、問題解決のためにどうすれば良いのかを考えるきっかけとなり得るでしょう。それが、リスナーの矢面に立ってパフォーマンスを繰り広げるロック・アーティストであるジャクソン・ブラウンが、使命として自覚していることであると思います。

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コメント

裏通り様 こんばんは

 ジャクソン・ブラウンの新作がシリアスだとは聞いていましたが訳詞を読むとなるほど、と実感できました。

 哀愁あるメロディーでこんなことが歌われているとは・・・

人間にとっての便利さを追求した結果、
地球が色々おかしくなってきて
じゃあどうするの、何を我慢するの?
・・・・・・まぁ明日考えよう。
みたいな状況の今日この頃。

歌がグサグサ来ます。
GAOHEWGII様、訪問していただき誠にありがとうございます。
アルバム『Standing In The Breach』は、全体にジャクソン・ブラウンの真骨頂が発揮された内容になっています。彼が歌い上げる社会的なメッセージ。アルバムのジャケットと歌詞ブックレットの素材に、「責任ある木質資源を使用した紙」を使う環境問題へのこだわりよう。ひたむきさと誠実さが滲み出ていて、ますます目が離せません。来春予定の来日公演が楽しみです。
ご無沙汰しております。
ジャクソン・ブラウンが来年3月に来日することが決まったようですね。
ハイチの後に起こった東日本大震災が起こった3.11には東京での公演が予定されています。演奏とともにどんなメッセージを残してくれるのでしょうか?
新作もまだ聴いておりませんが、新作も来日も楽しみです。
takaboh様、こちらこそご無沙汰しております。
懐具合がさびしいところに来日決定で、足を運ぶためになんとかやりくりしなければなりません。
3月11日の東京公演では何かメッセージを発することでしょうね。大阪公演も楽しみです。
初めまして(礼)kashinと申します。

輸入版を購入したので
歌詞の内容は知りませんでした・・・
勉強になりました。ありがとうございます!
Kashin様、拙ブログの以前の記事に度々お越しいただいております。
拙い対訳ですが、参考になりましたら幸いです。
とりとめのない浅薄で無教養のブログですが、今後とも宜しくお願い申し上げます。

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