好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Carly Simon - TORCH

 前回で取り上げたジェイムズ・テーラーの『Her Town Too』の記事の中で、カーリー・サイモンとの関係が破綻しかかっていたことに言及しました。その頃のカーリー・サイモンの音楽活動はどうだったのでしょう。そこで、「Her Town Too」が収められていたJTのアルバム、『Dad Loves His Work』がリリースされた同じ年である1981年8月1日、彼女はスタンダード曲をカヴァーした『Torch』を発表。スタンダードの中でも、トーチソングといわれる片思いの相手への恋慕や失恋の悲しみの歌を歌っていたのです。

TorchTorch
(2008/07/15)
Carly Simon

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 アルバムのオープニングを飾るのは、ニコラス・ホームズの曲にカーリーが補作詞した「Blue Of Blue」。


BLUE OF BLUE
憂鬱で暗い青
殆ど灰色ね
希望の光なんてありゃしない
明るい明日もね
来るべき最後の望みも
うまく手に入れることが出来なかった
どうやら私はここで打ちひしがれたままのようね
そう、打ちひしがれたままなの

蹴飛ばしてみても私は何も感じやしないだろう
感覚がなくなってしまったから
以前にあったものは
何もかもなくなってしまった
でも嘆きはいま始まったばかり
あの甘酸っぱい味なんていまさらよね
でも身を引くわ
揺りかごがこの空っぽのベッドを揺らすことはない
もし泣くことが私にとって良くないことなら
私は間違ったことをしているのね
だから私はこの嘆きの歌を歌うの
泣きながら

 カーリ自身が詞を補い、あたかも結婚生活に夢も希望も見いだすことが出来ない様子を歌っているようです。蹴飛ばされても何も感じなくなるほどの深い悲しみを受け、嘆きはこれから始まるとの絶望感に言葉を失いました。愛情も信頼関係も破綻した行く末が、このような結果になるとは本当に残酷なものです。

 次はデューク・エリントンとポーラ・フランシス・ウェブスターが、ミュージカル『Jump For Joy』(1941)のために書いた「I Got It And That Ain't Good」。


I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD
善意ある人々は
涙を拭けと言うけれど
私は彼に夢中なの
彼なしじゃ生きて行けないわ
彼は優しく上品に扱ってくれないの
そうするべきなのに
のぼせあがってたのね
ちっともよくないわね
私の惨めな心はセンチメンタル
丸太作りじゃないもの
週末が過ぎて
月曜がまた巡って来ると
振り出しに戻るように
心底泣き出すだけ
彼は私が彼を愛してるようには私を愛してくれないの
私のように彼を愛せる女なんていやしない
重症よね
本当にどうかしてるわ
天にまします神様、
彼が私を愛せるようにしてください
それが自然の成り行きでしょ
どうしようもないわね
どうしたらいいのかしら

 恋の相手にのぼせ上がっている自分が悪いという失恋の歌ですが、その反面、「ちっともよくない」と冷静に見つめる目を持っております。それでも神様にまでお願いするとは、恋の悩みは藁をもつかむほど苦しいものなんでしょうか。

 男性ボーカルでお楽しみください。登場をいただくのはフランク・シナトラ。1957年にリリースされた『A Swingin' Affair!』に収録されていました。指揮、アレンジはネルソン・リドルです。


 もう1曲、男性ボーカルを。ジャズ、ロック、クラシック、ラテンなど様々な音楽の要素を取り入れて独創的な世界を作り上げてきたジョー・ジャクソンが2012年にリリースした『Duke』収録されていたヴァージョンをお聴きください。


 続いて「Stardust」、「Georgia On My Mind」、「Skylark」などの名曲で知られるホーギー・カー・マイケルが1933年に書いた、「I Get Along Without You Very Well」。詞はジェーン・ブラウン・トンプソン。
 ホーギー・カー・マイケルはもともと弁護士を生業としていましたが、作曲した作品が認められて作曲家に専念。前述の「Stardust」を皮切りに、次々とヒットを飛ばすようになります。また、テレビ・ドラマ『Laramie/ララミー牧場』(1959-1963)に俳優として出演。ちょっと異色の経歴を持った人でした。


I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL
あなたなしでも私はうまくやっていけるわ
ええ、もちろんよ
でも、しめやかな雨が降り注ぎ
木の葉から雫が滴り落ちる時は別
あなたの腕の中に抱かれていた時の
あの旋律を思い出してしまうの
ああ、そうなの
でも、あなたなしでもうまくやっていけるわ

あなたのことなんか忘れたわ
そう自分に言い聞かせるようにして
ええ、もちろんよ
でも、あなたの名前を耳にしたり
誰かの笑い声があなたのと似ていたりしたときは別
だけど、私もう、あなたのことなんか忘れたわ
当然よね

本当に素敵な人だった
傷ついた私の心が月をからかえると思えるなんて
私はなんて愚かなの
どんな運命が待ち構えてるのでしょう
もう一度だけ電話をするべきかしら
いいえ、このままの自分であり続けるのが一番ね

あなたなしでも私はうまくやっていけるわ
ええ、もちろんよ
でも、たぶん春には
いいえ、春のことなんか考えるべきじゃないわね
心が確実にふたつに割れてしまうから

 未練を断ち切るように「あなたなしでもやっていける」と強い意志が示され、まるでジェイムズ・テイラーに対しての訣別の気持ちが窺われるようです。でも、ふとしたことで寂しさに気がつくところに、くすぶる女心が表されているのかもしれません。

 トランペット奏者として名を上げたチェット・ベイカーが、全曲で美声も披露したアルバム『Chet Baker Sings』(1956年発表)にてこの曲をとりあげています。


 リンダ・ロンシュタットは1986年発表の『For Sentimental Reasons』で、この曲をカヴァー。彼女は1983年の『What's New』、1984年の『Lush Life』、1986年の『For Sentimental Reasons』いう所謂スタンダード3部作をリリースしています。実は彼女、1981年にトム・スコットやトミー・フラナガンらを迎えてジャズ・スタンダード・アルバムを制作していたのですが、出来具合に満足せずお蔵入りにしてしまいました。カーリー・サイモンの『Torch』を聴き、その素晴らしさに圧倒されたのか、ライバル心に火がついたのか、カーリーのアルバムを凌ぐものを作ろうと考えたのでしょう。その後、改めてネルソン・リドルと手を組んで仕切り直し。『What's New』の完成に至ります。


 エドワード・ハイマン、ロバート・ソウアー、フランク・アイトン作詞、ジョニー・グリーン作曲による「Body And Soul」。数多くのアーティストに取り上げられておりますが、1930年に発表されたアンブローズ・アンド・ヒズ・オーケストラによるものがファースト・リリースでしょう。


BODY AND SOUL
我が心は悲しく寂しい
あなたを想いため息をつく
愛しきあなただけのために
どうして分かってくれなかったの
身も心もあなたに捧げるわ
あなたに想い焦がれて日々を過ごした
どうしてあなたは私のことを
誤解しているのかしら
私は本気で言っているのよ
身も心もあなたに捧げるわ
信じられない
想像すらできないの
あなたがふたりのロマンスを拒むなんて
わざとそんな振りをしているの?
あなたがもう一度
愛していることを証明するチャンスを私にくれなければ
これでおしまいになるように思えるわ
あなたは私の人生を台無しにしている
分かってるんでしょ、ちょっとその気にさえなれば
私はあなたのもの
喜んであなたに
身も心も捧げるわ

 愛する人に最後通告を突きつけているかのようです。この言葉と気持ちが理解できていれば、ふたりの離婚は回避できていたのでしょうか。いや、何か吹っ切れたように歌うカーリー・サイモンの表情を察すると、やはり覆水盆に戻らずなのかもしれません。

 マンハッタン・トランスファーは1979年の『Extension』にてカヴァー。卓越したボーカル技術とハーモニーが、また違った味わいを醸し出しております。


 ジミー・クレーンとアル・ジェイコブス共作の「Hurt」。アルバムから唯一シングル・カットされて、全米106位を記録しています。ちなみに、アルバムは全米50位まで上昇しました。


HURT
傷つくわ
あなたが私に嘘をついていたなんて思うと
痛いわ
心のずっと奥底が
あなたは言ったわ
ふたりの恋は真実だ
ふたりは決して別れないなんてね
でも今じゃ
あなたは素敵な他の誰が欲しいのね
そしてそんな思いが私の心を切り裂くの

傷つくわ
あなたが想像する以上に
痛いわ
私が今でもこんなにもあなたを愛しているから
でも、たとえ他の誰かがしたように
あなたが私を傷つけても
私はあなたを絶対に傷つけないわ

 傷つけられても恨まない余裕。カーリーの方がJTよりも1枚上手だったのでしょうか。いや、引いては女のほうが男よりも1枚も2枚も格が上と言えるのかもしれません。

 リズム&ブルース・シンガーとして活躍したロイ・ハミルトンが、1954年にリリースした盤がオリジナルのようです。なお、ライチャス・ブラザーズでお馴染みの「Unchained Melody」はもともと映画『Unchained』(1955年公開)主題歌として作られ、ハミルトンら4組のアーティストによる競作盤が発売されました。サントラ盤に収録されているのはトッド・ダンカンのヴァージョンですが、ハミルトンのヴァージョンは全米6位、R&Bチャート1位を記録しています。


 ユーモアを交え、時に自虐的に、時に未練がましくカーリーへの慕情をアルバム『Dad Loves His Work』で歌い上げたJT。それに対して、自分自身のありのままの姿を見つめ、彼への想いを断ち切って新たなステージへと羽ばたこうとするカーリー・サイモン。ふたりの気持ちや問題への向き合い方には大きな違いが窺えました。元来、男のロマンと女性の現実はフィットしないものです。

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