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Judy Collins - Suzanne

 今回もジュディ・コリンズのアルバム、『In My Life』を取り上げます。このアルバムが彼女の転機となったことを前回の記事の中で述べましたが、少々意外な選曲と並び、同時代のシンガー・ソング・ライターの作品を独自の解釈でカヴァーするといったサード・アルバム『Judy Collins 3』からの路線も堅持していました。

イン・マイ・ライフイン・マイ・ライフ
(2014/06/11)
ジュディ・コリンズ

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 レナード・コーエン作の「Suzanne」。スザンヌとはコーエンの妻だったスザンヌ・エルロッドのことであり、コーエンは彼女との離婚をきっかけとしてこの歌を作ったとされております。コーエンは母国カナダでは作家、詩人として有名な存在でしたが、ジュディがこの歌をとりあげたことでその名がアメリカでも知られるようになり、翌年のシンガー・ソング・ライターとしてのレコード・デビューに至りました。


SUZANNE
スザンヌはあなたを連れて行く 
川のほとりの小さな彼女の家に
小舟が行き交う音を聞きながら
彼女の傍らで夜を過ごせるわ
あなたは分かっている 彼女が半分気がふれていることを
でもそうだからあなたはそこにいたいのね
彼女は遥か中国からやって来た紅茶とオレンジを
あなたにご馳走してくれる
あなたが彼女に与える愛はないと告げようとするまさにその時
彼女はあなたを自分の波長に合わせ
川のせせらぎに答えさせる
だいぶ長い間 あなたは彼女の恋人だった
あなたは彼女と旅行がしたい
行き当たりばったりの旅をしたいのね
あなたは彼女を信じてもいいと思っている
あなたの完璧な身体に彼女の心が触れたのだから

イエスは船乗り
彼が水面を歩いた時
彼は孤独な木の塔から眺めながら
多くの時間を過ごした。
そして溺れるものだけが
自分を見ることが出来ると確信した時
彼は言った「海が彼らを解放するまで
全ての人間は船乗りである」と
しかしイエス自身は
空が割れるずっと前に崩れ落ち
見捨てられ、ほとんど人間のように
石のような人間の知恵の下に沈んだ

あなたは彼女と旅行がしたい
行き当たりばったりの旅をしたいのね
あなたは彼女を信じてもいいと思っている
あなたの完璧な身体に彼女の心が触れたのだから

スザンヌは手を取りあなたを川のほとりに連れて行く
あなたは行き交う船の音を聞きながら
永遠の夜を過ごすことが出来るわ
太陽が蜂蜜のように降り注いでいる
港の貴婦人の上に
そして彼女は教えてくれる
ゴミと花の見分け方を
海藻の中にヒーローがいて
朝の光の中に子供たちがいる
人々は愛を得ようと身を傾けている
いつまでもそんな風に身を傾けているのよ
スザンヌが鏡を握っている間は

あなたは彼女と旅行がしたい
行き当たりばったりの旅をしたいのね
あなたは彼女を信じてもいいと思っている
あなたの完璧な身体に彼女の心が触れたのだから

 レナード・コーエンのヴァージョンは1967年12月27日リリースのファースト・アルバム『Songs Of Leonard Cohen』に収録。ジュディ・コリンズのヴァージョンとは歌詞が一部異なっております。


 ジュディ・コリンズとレナード・コーエンの共演映像です。


 ジュディ・コリンズによるピアノの弾き語り映像です。



 ランディ・ニューマン作の「I Think It's going To Rain Today」。伯父や叔父が作曲家として有名だったランディ・ニューマンも、ジュディ・コリンズがこの歌を取り上げたときはまだレコード・デビューをしておりませんでした。無名のソング・ライターの作品に注目するジュディの先見の明。彼女の慧眼が、彼らを世に送り出すきっかけを与えたと言っても過言ではないでしょう。


I THINK IT'S GOING TO RAIN TODAY
壊れた窓に何もない廊下
空に浮かぶ青ざめた月が灰色の縞模様を付けた
人間の優しさが溢れ出し
今日は雨が降りそうだ

案山子は最新の流行の服を纏い
凍てついた微笑みで
まとわりつく愛を振り払う
人間の優しさが溢れ出し
今日は雨が降りそうだ

寂しい心 ひとりきり
足下にはブリキの缶
通りに向かって蹴りつけよう
それが友達の扱いかた

目の前の光は私に慈悲を懇願する合図
恵まれない人々に支援を、そして救いの道をと
人間の優しさが溢れ出し
今日は雨が降りそうだ

 ランディ・ニューマンの作品の特徴は、皮肉や風刺を込めて人種差別や偏見を描くことにあります。彼はこの歌について、感傷的な情景描写であるとの趣旨を語っていましたが、とても額面通りには受け取れません。"human kindness" を直訳すると「人間味」ですが、どうして人間味が溢れて雨が降り出すのか。シェークスピアの『Macbeth(マクベス)』の中に、"milk of human kindness" という台詞があり、そこでも「生まれながらの人情、人情の暖かさ、優しい思いやりの心など」と訳され、ニューマンもこれを踏襲したのでしょう。しかし、アイロニーを身上とする彼のこと、本当は逆説的な意味があると思われます。他人への優しさは偽善でしかなく、友情さえも信じられない、そんな絶望感が静寂の中で漂っているとのメッセージが受け取れました。

 ランディ・ニューマンのヴァージョンは1968年6月リリースのファースト・アルバム、『Randy Newman』に収録。


 TVショーの映像でしょう。ピアノの弾き語りで歌うジュディ・コリンズ。グラハム・ナッシュがコーラスでゲスト参加しています。



 ビート・ジェネレーションからフラワー・チルドレン(ヒッピー・ムーヴメント)の時代へと移り変わることを予見した、「Sunny Goodge Street」。イギリスのボブ・ディラン、フォークの貴公子などと称されたドノヴァンの作品です。


SUNNY GOODGE STREET
サニー・グッジ・ストリートの
蛍の飛び交うプラットフォーム
凶暴な愛煙家たちや
シュガー・チョコレートの機械が
食事の場面にとけ込む

ドラッグでハイになった状態で
ネオンライトの中に突っ込んだり
狂ったカルトの女神の姿を前にし
目の中に染み付けたり
メロウでファンタスティックな
ミンガスのサウンドに耳を傾けたりして
ああ、なんて素敵だと彼らはため息をつく
ああ、なんて素敵だと彼らはため息をつく

色鮮やかなライトが揺れる
人形の家の部屋の中で
奇妙な音楽がチリンチリンと悲しげに取り囲む
あたり一面に輝く
太陽を飲み干すように
ああ、なんて素敵だと彼らはため息をつく
ああ、なんて素敵だと彼らはため息をつく

魔術師がサテンとヴェルヴェッドをまとって
きらめいている
あなたは今まで使っていなかった目で
彼の見事な指使いを
じっと見ている
教えてあげよう
彼の名は愛、愛、愛
ああ、なんて素敵だと彼らはため息をつく
ああ、なんて素敵だと彼らはため息をつく

 ジャズを聴きながらドラッグに耽り、妄想の世界を生きるといった趣旨の歌詞からはヒッピーというよりもビートニクを連想させますが、最後のマジシャンのくだりで、「彼の名は愛、愛、愛」というところから来るべきフラワー・チルドレン(ヒッピー・ムーヴメント)の到来を示しているかのようです。

 フルートをフィチャーしてややソフト・ロック風に仕上げたジュディ・コリンズのヴァージョンに比べて、ドノヴァンのヴァージョンはジャジーなアレンジが施されていました。1965年リリースの『Fairytale』に収録。


 冒頭にジュディ・コリンズの転機となったアルバムと述べましたが、前回の記事で取り上げた少々意外な選曲と合わせ、エロティックな描写のあるレナード・コーエンの「Suzanne」、皮肉や風刺の利いたランディ・ニューマンの「I Think It' Going To Rain Today」、そしてドラッグ体験が描かれたドノヴァンの「Sunny Goodge Street」など、どれも従来の清純派のイメージを打ち破り、大人の歌手として成長した姿をさらけ出していたと言えるでしょう。次作、『Wildflower』(1968年発表)に収録されたジョニ・ミッチェル作の「Both Sides Now」で、「私は両側から人生を見てきた/勝ったり負けたり/そしてどういうわけか私が思い出すのは人生の幻影/私には人生がどんなものかいまだに少しも分からない」と歌います。時はカウンター・カルチャー華やかなりし頃。アメリカはヴェトナム戦争を背景に激動の時代を迎えていました。こうして、さらなる変化がジュディ・コリンズに訪れることになるのです。
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コメント

裏通り様 こんばんは

ドノヴァンの初期作はもっていましたが、
歌っている内容までは知りませんでした。
最初期の時点でもうサイケ世界に入っていたのですね。ジュディ・コリンズのヴァージョンは、CBS移籍後のドノヴァンを彷彿させるアレンジで、興味深いです。

それにしても確かに幅広い選曲。
ついつい、ベストで済ませてきたミュージシャンなので機会があれば、きちんとディスコグラフィーを追いかけてみたいです。
GAOHEWGII様、訪問していただき誠にありがとうございます。
ドノヴァンの全盛期は「貴公子」や「おとぎ話のお王子様」というイメージが先行していたようですが、いち早くサイケデリックの世界に入り、交流のあったザ・ビートルズのインドを訪問にも同行していました。それでも歌詞がシュールなので、「おとぎ話の王子様」というイメージを皮肉にも増大させた嫌いがあるようですね。
ジュディ・コリンズというと、どうしても「青春の光と影」や「アメイジング・グレイス」の印象が強いのですが、音楽性は幅広く、スティーヴン・スティルスやライ・クーダーとの交流によって自分の音楽をより確かなものにしていったことも興味深く思えます。
こんばんは

ご無沙汰していますが、いつも拝見させていただいてます。裏通り様の的確な"I THINK IT'S GOING TO RAIN TODAY"の解説で納得しました。同じRandy作品で"I Don't Wanna Hear It Anymore"がこの曲とテーマが似ていますね。人々の善意や慰めの言葉に当事者が傷つき追い詰められていく様を曲にしており、なるほどと思いました。(Dusty Springfieldがこの二曲とも歌っているようです。)

Judyは、いい曲が多いですね。ソンドハイムの「悲しみのクラウン」は、彼女のバージョンが一番だと思っています。続き楽しみにしています。
HY様、訪問していただき誠にありがとうございます。
歌詞の内容についてはあくまでも私の推察によるものであり、ランディ・ニューマンから「そんなつもりで歌ってへんで。好き勝手に解釈すんのもええかげんにしよし」と怒られるかもしれません。
ランディ・ニューマン作の "I Don't Hear It Anymore" のファースト・リリースは1964年のジェリー・バトラーによるヴァージョンだとのこと。シンガー・ソング・ライターとしてのランディ・ニューマンが世に出るまでにはだいぶ時間が掛かったと言えるでしょうね。私は寡聞にしてランディ自身による "I Don't Hear It Anymore" を聴いたことがないのですが、彼はレコーディングしているのでしょうか。
ジュディ・コリンズの「悲しみのクラウン」といえば、フィギュア・スケートで使用していた選手が何組かいましたね。

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