好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Jackson Browne - The Birds Of St. Marks

 今回は、前回の記事で取り上げたネッド・ドヒニーの旧友であるジャクソン・ブラウンに登場していただくことにしました。お題は「The Birds Of St. Marks」。1995年にリリースされた『solo acoustic vol. 1』にて陽の目を見た曲です。

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 『vol. 2』との2in1もあり。

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 この曲は1967年、18歳のジャクソン・ブラウンが高校の先輩であるグレッグ・コープランドに誘われてニューヨークに行き、アンディ・ウォーホルのクラブ「ドム」に出入りしたのが縁で、ニコのギタリストを務めることになった経験から書かれました。ジャクソン・ブラウン本人の言葉によると、「ニコのことを書いた歌。それ以上話すことはないよ」(注1)とのこと。やはり、あまり多くは語りたくないようです。
 ジャクソン・ブラウンとニコの浅からぬ関係については以前、「From Silver Lake」の記事で述べたことがありました。モデルであり、女優でもある妖艶な美貌が魅力のニコ。高校を出たばかりの18歳の少年にはこの上なく刺激的だったことでしょう。

 「ぼくはニコにすっかり夢中だった」とジャクソンは認める。「ものすごくきれいでさ、ぼくをめちゃめちゃにしたよ。くそぉ、まったく、彼女ときたら・・・・・・。ぼくはニューヨークに着いて3週間、6メートルもある彼女のポスターをずっと眺めていて、それから実物を見に行った ー バーへ行ったのも初めてだったと思うな。なにしろ18になったばかりだったからね。ー そしたら1週間後に電話が来て、彼女のバックでギターが弾きたいかだって。もちろん、弾きたいって言った。最高の気分だったよ」それはニコのギター弾きとしてのはじまりだっただけでなく、またしても痛ましい恋のはじまりであった。(注2)

 1962年にリリースされたビル・エヴァンス・トリオの『Moon Beams』。ニコが、アルバム・ジャケットのモデルを務めています。 
 
Moon BeamsMoon Beams
(2012/05/10)
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 バックを受け持った当初のジャクソン・ブラウンはニコにたいそう可愛がられていたのでしょう。実際にどういう関係にまで発展したのか知る由もありませんが、やがて、ジャクソンは「俺は世界で一番いい女をものにしたんだぜ」と周囲に吹聴するようになりました。しかし、18歳の若造のトップ・スターへの一方的な恋慕が成就するわけもなく、弄ばれたあげくに袖にされる結末が待っていたのです。ステージでは、「ギターを弾いてくれているのは毎晩のように私のところへいやらしい電話をしてくる変態少年です」といった具合にニコから観客に紹介される始末。いたたまれなくなったジャクソンはその場でギターをしまってステージを降り、次の朝には荷物をまとめてロスアンジェルス行きの飛行機に飛び乗ってしまいました。



THE BIRDS OF ST. MARKS
ああ、なんて悲しげな響きなんだろう
女王が歌わねばならない死に関する歌の数々
憂鬱なため息がこぼれる女王の座の囚人
いま、彼女に自分の鏡を覗き込むことが出来るなら
自分の前で腰をかがめる人々から自由になれ
足下にある大地をきれいにならせるのになあ

萎み行く真夜中の薔薇の中を彼女は静かに歩き
誰にも気づかれずに刻一刻と過ぎ行く中でじっと見つめる
彼女はまるで気にしていないようだ
彼女の部屋の物陰の中で
誰もいないことを夢見ているのかもしれない

だが、俺の凍りついて発せられなかった言葉はすべて同じ
彼女の城の壁の向こうに俺が飛び立たせた鳥たちを
今こそ呼び戻す時なのだ
この空虚な広間の中の夜の眺めに
俺はうんざりしている

無表情な女よ、俺のうっとおしい秘密の中でくるくる回れ
過ぎ去った時間の中や空っぽになったポケットの中で揺れるがいい
たぶん俺たちが失ったものを見つけたのだろう
幾重にも絡み合った誤解を解いた時に

だが、俺の凍りついて発せられなかった言葉はすべて同じ
彼女の城の壁の向こうに俺が飛び立たせた鳥たちを
今こそ呼び戻す時なのだ
この空虚な広間の中の夜の眺めに
俺はうんざりしている

 セント・マークスとは「ドム」のあった通り。女王とはもちろんニコのこと。どこかもの憂いのある女王は、自分で自分を宮殿に閉じ込めた囚人の身でもあり、鳥はジャクソン・ブラウンのニコに対する好意や思いやりの喩えなのでしょうか。かなり辛辣な揶揄が込められています。

 こちらは「Criterion Demo」に収められていたヴァージョンです。


 2014年10月7日にリリースされた『Standing In The Beach』にて、ようやくスタジオ・ヴァージョンが録音され、アルバムの冒頭を飾る新曲として収録されました。12弦ギターをフィーチャーした、まるでザ・バーズを彷彿させるアレンジに仕上がっています。


 こちらはアルバム発売直後にTVショーに出演した際の映像です。


 ジャクソン・ブラウンは2015年の来日公演でも、最終日となった大阪の追加公演を除いてこの「The Birds Of St. Marks」を歌っていました。時の流れにより、辛く苦々しい思い出がふっきれたことの証しなのでしょうか。人が自分の過去を笑って振り返るまでにはそれ相当の時間が掛かるものですね。

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(注1)『Jackson Browne - His Life And Music』マーク・ビーゴ著、水木まり訳、P.54 蒼氷社 2007年
(注2)『Jackson Browne - His Life And Music』マーク・ビーゴ著、水木まり訳、P.46~P.47 蒼氷社 2007年

参考文献
『Jackson Browne - His Life And Music』マーク・ビーゴ著、水木まり訳、 蒼氷社 2007年

ジャクソン・ブラウン―ヒズ・ライフ・アンド・ミュージックジャクソン・ブラウン―ヒズ・ライフ・アンド・ミュージック
(2007/11)
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コメント

「THE BIRDS OF ST. MARKS」に、ニコのことが歌われているということを知らずにこの歌を聴いていました。

物憂げな歌だとは思っておりましたが、ニコとの思い出は、彼にとっては辛い思い出だったんですね。


takaboh様、訪問していただき誠にありがとうございます。
若いときの辛い想い出が、笑って過ごせるようになれば良いのですが、なかなかそううまくはいかないものです。ジャクソン・ブラウンの場合、ライヴで「The Birds Of St. Marks」を歌えるようになったということから過去の想い出にとらわれることなく、ふっきれたと解釈してよいのかもしれませんね。
裏通り様 こんばんは

こういう曲があったのですね。
面白い記事でした。

それにしても「Moon Beams」のジャケは
ニコがモデルだったとはまったく気が付きませんでした。いい豆知識をありがとうございました。
GAOHEWGII様、訪問していただき誠にありがとうございます。
ジャクソン・ブラウンとニコとの関係はとても恋愛とはいえないものだったのかもしれませんが、彼にとって貴重な経験になったことでしょう。
旅を通して恋を知り、挫折を経ながら何かに気づいて歌い続けるジャクソン・ブラウン。彼の歌からは人生が聴こえてくるようです。

2015年3月11日、コンサート終了後にオーチャードホールのバックステージでジャクソンに会うことが出来ました。10分くらいジャクソンとヴィンテージギターについてあれこれと話をしました。その時ジャクソンに古い写真を見せたんです。それはとても古い写真で撮影したのはリンダ・マッカートニーです。そうです、高校を卒業して間もない18歳のジャクソンです。ジャクソンはしみじみと写真を見入っていました。スタッフの誰かが何歳の時の写真だ?と聞くと、僕が18歳の時だ。リンダが撮影したんだ...と写真を見たまま答えていました。翌日と翌々日の公演では「The Birds Of St. Marks」を歌う前にこの写真のことを話していました。きっと当時のことがジャクソンの頭によぎったのだと思います。演奏も素晴らしく涙が溢れました。
shun konishi様、訪問していただき誠にありがとうございます。
コンサート終了後にジャクソン・ブラウンと会うことが出来たとは羨ましい限りです。お話の様子だと、ジャクソンは気さくに応対してくれたようですね。
リンダ・マッカートニー撮影によるジャクソン・ブラウンの写真はニューヨークへの「武者修行」当時に撮られたものでしょうか。ならば様々な思い出が甦り、交錯したことでしょう。もちろんニコとの想い出も。
拙いブログですが、今後とも宜しくお願い申し上げます。

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