好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Chris Hillman - SLIPPIN' AWAY

 咲き誇る桜に向かって時おり吹くそよ風が、花びらをはらはらと散らす光景に春を実感しています。そんな爽やかな気分に似合うのは、やはりウエスト・コースト・サウンド。前回はキュートなシスター・ケイトにご足労いただきましたが、今回は憎たらしいオヤジ、じゃなくて凛々しい男性に登場を願うことにしました。その方の名はクリス・ヒルマン。ザ・バーズやマナサスで活躍した御仁です。

スリッピン・アウェイスリッピン・アウェイ
(2005/12/21)
クリス・ヒルマン

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 クリス・ヒルマンは1944年12月4日(11月17日説もあり)、カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれました。幼き頃より家族の影響でカントリー・ミュージックに親しみ、学生時代にマンドリン奏者としてカントリー/ブルーグラスのフィールドで音楽活動を始めました。1961年にはラリー・マレイ、ケニー・ワーツらとスコッツヴィル・スクワイアレル・バーカーズを結成し、63年にアルバム『Blue Grass Favorites』を発表。その後、ワーツが脱退し、バーニー・レドンを加えて活動するもののバンドは解散し、ヒルマンはマレイと組んだグリーン・グラス・ボーイズ、ヴァーン&レックス・ゴスディン兄弟と結成したゴールデン・ステイト・ボーイズを経て、ヒルメンを旗揚げします。
 このままカントリー/ブルーグラスの分野で活動を続けて行くはずだったクリス・ヒルマンでしたが、レコーディングを担当した際のプロデューサーであるジム・ディクソンからベーシストとしてジェット・セットというロック・バンドへの加入要請を受け承諾。ロック・ミュージシャンとしての第一歩を踏み出すことになりました。ディクソンは後にザ・バーズを名乗ることになるジェット・セットのマネージメントもしていたのです。彼はリーダー格のロジャー・マッギン(当時の名はジム・マッギン)からベーシストを探すように依頼されていたようですが、マンドリン奏者であるヒルマンに白羽の矢を立てるとは不可解な人選に思えてなりません。しかし、その後のクリス・ヒルマンの活躍ぶりを鑑みると結果オーライと受け止めて良いでしょう。
 バーズではロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビー、ジーン・クラークの陰に隠れて地味なクリス・ヒルマンの存在でしたが、彼はベーシストとして腕を磨き、ソング・ライティングの才能も発揮して行くようになります。また、ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング作の「Goin' Back」のレコーディングを嫌がったデヴィッド・クロスビーに解雇を言い渡す汚れ役も引き受けたり、ジャジーなサウンドを展開しようとしていたロジャー・マッギンの思惑に反してグラム・パーソンズを引き入れてカントリー・ロックのアルバム、『Sweetheart Of Rodeo』を制作したりと策士の面も垣間見せていました。
 その後、グラム・パーソンズとともにクリス・ヒルマンはザ・バーズを脱退。彼らはフライング・ブリトー・ブラザーズを結成し、カントリーとロックの融合を追求して行きます。ヒルマンはバーズ時代の同僚だったマイケル・クラーク(ドラムス)や旧知のバーニー・レドンを迎えてバンドの充実した運営に力を注ぎますが、素行不良を理由にグラムを解雇。その穴を埋めるべくリック・ロバーツをスカウトしてバンドを継続させるもののやがて解散へと向かいました。
 フライング・ブリトー解散後、クリス・ヒルマンはスティーヴン・スティルスのマナサスに参加し、彼の片腕として存分に技量を発揮。1973年のオリジナル・メンバーによるザ・バーズの再結成を経て、1974年にはJ.D.サウザーやポコのリッチー・フューレイらとともにサウザー・フューレイ・バンドを結成。ヒルマンは個性的なメンバーと渡り合う中で、ますますキャリアとスキルをブラッシュ・アップさせて行くのです。
 そんな彼が満を持して1976年に発表したのが、今回のお題となる『Slippin' Away』。カントリー/ブルー・グラスにこだわらず、ヴァラエティに富んだサウンドを醸し出し、彼独自の音楽性が表現されていました。

 アルバムのオープニングを飾る「Step On Out」。スワンプ・ロックを彷彿させるアーシーな雰囲気に少しばかり南国風の味わいを付けたような軽快な演奏をバックに、ユーモアに溢れた歌詞が興味深く心に響きます。自分の恋する女性が少々手に余る様子が描かれており、それでも別れられないのが男の性といったところなのかもしれません。


STEP ON OUT
俺が恋するあの女は虜になった男なんて相手にしない
彼女は他の女のために傷ついた男を残しておいてやるのだ
彼女は舞台裏の暗闇の中の閃光
彼女に手出しをする奴は俺が黙っちゃいない

彼女はこれまで見られるものはすべて見て来たらしい
そして体験したことがないことには聞き耳を立てて来た
だから秘密を隠しておけ
俺は心の内を率直に打ち明ける男
目がドアのところに張り付きっぱなしなのさ

外に繰り出そう 繰り出そう
この街中をダイム・ア・ダンスで
踏みつけるように歩くのさ
外へ繰り出そう 繰り出そう
ダンス・シューズ姿の彼女が新聞の第1面を飾る
センセーショナルな大スターのロマンスとして

俺が恋するあの女は人生を踊り続けているのさ
さしずめ彼女は歩道のヴァレリーナといったところだな
万事を楽々とやってのける
よくいるタイプのニューヨークの女性
プライドの高さが罪作りなんだよな

*ダイム・ア・ダンス(dime a dance)
 1920~1930年代に流行したタクシー・ダンス。1曲あたりの料金が決まっていたことからこの名前がついた。なお、タクシー・ダンスとはダンス・ホールやナイトクラブで、女性ダンサーが客にダンスを教えたりダンスの相手をすることである。

 ラス・カンケル、リー・スクラーらセクションのメンバーに加えて、マナサス時代の同僚であるジョー・ララ、ブッカーT&ザ・MG‘Sのスティーヴ・クロッパーらを起用した表題曲の「Slippin' Away」。ジャジーなサウンドを背景に、失った恋の物語が皮肉を交えて綴られています。ちょっとした気の緩みから取り返しのつかないことをしたのは男の方。「たまには君も肩の力を抜いて羽を伸ばしてみろよ」と宣っても言い訳にしかならないでしょう。


SLIPPIN' AWAY
みんなが俺たちの噂話をしている
俺たちの何がそんなに間違っていたのか、いったい何が
今のふたりを巡る1マイルほどの長さの取り沙汰
俺たちが一方通行に乗り入れたと分かった時
ふたりには困難な道だと気付いたのさ
簡単に理解出来ることだよ
君は道に接するように慎重に歩いてるのだから

もう手遅れさ
何が言えるのか
俺たちの愛が滑り落ちて行くのを感じるよ
そして心の内側で何かが
このままでいるのはバカだと言ってるんだ
君の愛するコイツは滑り落ちて行くのさ

昨年の夏、ふたりは一晩中外にいて
日が昇るまで語り明かした
そして君は俺を愛していると言った
すべてがうまく行くはずだったんだ
密かに楽しむことがあるって分かってるだろう
たまには羽を伸ばすべきだと君も分かっているはずさ
君は道に接するように慎重に歩いてるんだな 

滑り落ちて行くのさ
ああ、君を愛する者は滑り落ちて行くのさ

 しっとりとしたバラード曲、「Blue morning」。悲しい失恋の歌ですが、男という生き物はなかなか未練を断ち切れないものと実感しました。ドナルド・”ダック”・ダン、スティーヴ・クロッパーらブッカーT&ザ・MG’Sのおふたりが参加。


BLUE MORNING
道を走りながら
自分に人生の殆どを
感覚に頼って
しっかりとつかまって生きている
すぐそばの曲がり角まで来ている
夢をつかもうと追いかける
ふたりに残されたことはそれだけ
それが残されたすべてなのさ、この先も

憂鬱な朝
神よ、俺を打ちのめしてください
初めての試みで
あるペテン師が幸運を得たようだ
川のほとりの
冷たくじめじめした部屋の中で
人の人生の成り行きを眺めている
もしかしたらほんの少し早すぎるのかもしれない

君のもとを離れて
ずいぶんの時間が経った
分かってるよ
君への思いを断ち切るのは辛かった
誰が君の気持ちを変えたんだ
あの暗く寂しい夜
君が「あなたのものよ」と呼ぶのは誰のことなんだ

それでも太陽が昇り
雲が晴れたなら
新しい1日が輝き
そんな涙も拭ってくれるだろう
君が俺との関係が終わったと確信した時
恋という戦いに勝利した時
ぐっすりとお休み
誰でも夢を見るのは自由だから

早すぎる、早すぎるのかもしれない

 幾つものバンドを渡り歩き、ある時は汚れ役に徹し、ある時は片腕となってリーダー格のサポートを務めてきたクリス・ヒルマン。こうした経験によって、人生の酸いも甘いも噛み分けてきたことでしょう。このアルバムからは、そんな彼の人生の機微が滲み出ているような印象を受けました。

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コメント

この人もまた大好きな人です。
バーズの頃から、ずっと聴いています。
デザート・ローズ・バンドの頃からさらに好きになりました。
takaboh様、訪問していただきありがとうございます。
ザ・バーズ時代、最初は地味な存在でしたが、デヴィッド・クロスビー脱退後に頭角を表し始めたクリス・ヒルマン。その後は脇役をこなしながらも表現力を高めて行きました。
そんなヒルマンは自分のルーツに立ち返ったようなデザート・ローズ・バンドでヒットを飛ばし、この時期の彼が一番脂の乗っていたと言えるのかもしれませんね。

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