好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Don Nix - LIVING BY THE DAYS

前回のB.J.トーマスに続いて南部人つながりということで、今回はドン・ニックスが1971年に発表したアルバム『Living By The Days』を取り上げます。幼少期は聖歌隊に所属し、チップス・モーマンのプロデュースでアルバムを制作など共通点がある二人。ルーツとした音楽にも相通じるものが見出せます。

リヴィング・バイ・ザ・ディズリヴィング・バイ・ザ・ディズ
(1991/03/10)
ドン・ニックス

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1. The Shape I’m In
2. Olena
3. I Saw The Light
4. She Don’t Want Lover
5. Living By The Days
6. Going Back To Iuka
7. Three Angels
8. Mary Louise
9. My Train’s Done Come And Gone

南部のR&Bやブルースをルーツに持つドン・ニックス。レオン・ラッセルとともにマッド・ドッグス&イングリッシュメンのメンバーとしてジョー・コッカーを支えた人でもあります。そんな活動の中でジョージ・ハリスンとも知り合って意気投合し、バングラディッシュのコンサートではバック・ヴォーカルのメンバーとして出演していました。また、彼の手による「Going Down」はジェフ・ベックに取り上げられ、1972年のアルバム『Jeff Beck Group』に収録。このアルバムはドン・ニックスの親友であるスティーヴ・クロッパーがプロデュースを担当していたので、おそらく彼からベックに推薦があったのでしょう。さらにはベック、ボガート&アピス(BB&A)として再編成した『Beck, Bogert & Appice』(1973年発表)では「Black Cat Moan」や「Sweet, Sweet Surrender」といった楽曲の提供のみならず、ドン・ニックスはプロデュースまで任されています。

BB&Aの「Sweet, Sweet, Surrender」。
http://www.youtube.com/watch?v=YpY3buZChDQ

ドン・ニックスは1941年9月27日、テネシー州メンフィスに生まれました。幼き頃より教会の聖歌隊で歌い始め、ジョン・リー・フッカーのブルースに魅せられ、エルヴィス・プレスリーに夢中となる少年時代を送っています。ハイ・スクールに入学すると同級生だったドナルド・ダック・ダンやスティーヴ・クロッパーらとともにバンドを結成。しかし、ドン・ニックスは卒業後に兵役に就き、脱退を余儀なくされました。
やがて兵役を解かれメンフィスに戻ったドンはドナルドとスティーヴが結成していたMar-Keysにバリトン・サックス奏者として加入。ドンは従軍中に楽隊から教えを受けてサックスをマスターしていたのです。

幸運にもメンバーでテナー・サックスを担当していたチャールズ・アクストンの母親エステルと叔父のジム・ステュワートがスタックス・レコードの前身となるサテライト・レコードを興し、そのレーベルから彼らもチップス・モーマンのプロデュースで1961年にシングル「Last Night」を発表。全米3位となるヒットを記録しました。

Last Night / Do the Pop-EyeLast Night / Do the Pop-Eye
(2002/06/18)
Mar-Keys

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Mar-Keysの「Last Night」。レコーディングではドン・ニックスのパートはスタジオ・ミュージシャンに取って代わられるという苦杯をなめさせられたとのことです。
http://www.youtube.com/watch?v=ue9D0AcFN2M

その後もヒット曲を放ち順調な活動を続けて行くかに思えたMar-Keysでしたが、メンバー・チェンジを行いドン・ニックスもバンドを脱退。やがてMar-Keys本体も活動を停止し、ドナルド・ダック・ダンとスティーヴ・クロッパーはブッカー・T・ジョーンズらとブッカー・T&The MG’sを結成します。

親友二人がブッカー・T と組んでスタックスのお抱えバンドとして活動を続ける中、ドン・ニックスの目はロサンゼルスの音楽シーンに向いていました。60年代の半ば、ツアーで知り合って親交を深めたレオン・ラッセルの下を訪れ、彼のパートナーとして働きプロデュース業の何であるかを学んだのです。

ドン・ニックスとレオン・ラッセルが共作し、プロデュースも行ったゲーリー・ルイス&ザ・プレイボーイズの「The Loser」。
http:///www.youtube.com/watch?v=3YINZMXdaNo

ロサンゼルスで修行し、実績を積んでメンフィスに戻ったドン・ニックスはスタックス・レコードのプロデューサーとして迎えられました。スタックスにすればドンがロスで培った人脈にも期待していたと思われます。新たな活躍の場を得たドンは1969年にデラニー&ボニーをアルバム『Home』でデビューさせ、1971年にはブルース・ギタリストのアルバート・キングの『Lovejoy』を手掛けますが、どちらも商業的な成功を得られませんでした。
また、ドン・ニックスは同時期にミュージシャンとしてレオン・ラッセルが主宰するシェルター・レコードと契約。1970年にソロ・デビュー・アルバム『In God We Trust』をリリースします。マッスル・ショールズでレコーディングした泥臭いながらもスウィートな香りが漂う一枚でしたが、こちらも売れ行きが芳しくなく、この一作のみでシェルターとの関係は打ち切られました。

禍福はあざなえる縄の如し。翌71年、南部の音楽に注目していたエレクトラ・レコードと契約が成立。セカンド・アルバムとしてリリースされたのが、この『Living By The Days』です。
このアルバムは旧友のドナルド・ダック・ダンやマッスル・ショールズのミュージシャンを起用し、ドン・ニックスのルーツであるR&B、ゴスペル、ブルース、カントリーといったアメリカ南部の音楽の色合いが反映されているとはいえ、それほどアーシーな雰囲気が漂っているわけではありません。それはロサンゼルスで経験を積んだことで冷静かつ客観的に自分自身を見つめた賜物ではないでしょうか。同時に豪快で無骨な南部人魂や神への信仰心も窺え、粗野な部分と繊細さが内包されたこの上ない魅力を醸し出しています。

アルバムのオープニング・ナンバーは教会のオルガンの音色が荘厳に響く「The Shape I'm In」。


THE SHAPE I'M IN
一文無しで
俺はフェアファックスからやって来た
体は震え
酒浸りで頭はクラクラさ
度を超していて
俺はベッドで寝ているべきだった
俺の周りにいる奴らが警官を呼んだのだろう
死んだものと見切りをつけたのだ

聖歌隊の歌が聞こえる
俺は聖アウグスティヌスを目にした
でもそんな事態にはならず、こんな格好で現世にいるのさ
俺はどこを彷徨っているのか分からない
罪深いものかも
こんな格好で生きてるなんて

俺は盲目の男に
目を覚ませと起こされた
俺が聞かされてきたことは
嘘八百ばかりだとその男に言ってやった
奴は俺が見えないと言ったが
俺のなく声は聞けた
そして俺が向きを変えて立ち去ろうとしたので
奴は一枚の10セント硬貨を俺の手に握らせた

落ち葉が風に舞い
夜風が冷たくなってきた
輝く三個の玉の中に
俺の姿が映っている
ぼろ服を纏った英雄には身を隠す場所さえない
ポケットの中には震える両手だけ
傍らには俺の影だけが寄り添う

フェアフアックス(Fairfax)とはヴァージニア州フェアファックス郡。
聖アウグスティヌスとは古代キリスト教の哲学者、神学者。思想的影響は今日の西洋社会全体にも及ぶとのこと。

軽快なピアノで始まるロックン・ロール・ナンバー、「Olena」。

http://www.youtube.com/watch?v=y-tsl9zEwno

ハンク・ウィリアムズ作の「I Saw The Light」。B.J.トーマスもハンク・ウィリアムズの「I'm So Lonesome I Could Cry」でメジャー・デビューを飾りましたが、ドン・ニックスにもまたハンクへの強い想いが窺われます。


アレンジはザ・バンドを彷彿とさせますが、ギター・プレイはロビー・ロバートソンよりも、むしろビートルズの「Let It Be」(シングル・ヴァージョン及びゲット・バック・セッション時のもの)におけるジョージ・ハリスンを連想させるような「She Don’t Want Lover」。家庭環境が荒んでいるために却って模範的であろうとする女性にシンパシーを寄せる男性の姿が描かれた歌でした。


哀愁を帯びた歌声にストリングスを効果的に配した表題曲「Living By The Days」。

http://www.youtube.com/watch?v=mTPUmn2miEw

スライド・ギターをフィチャーしたブルース・ナンバー、「Going Back To Iuka」。アユーカとはミシシッピ州に存在する地名です。


2002年リリースの『Going Down - The Songs Of Don Nix』で再録音されていました。
http://www.youtube.com/watch?v=BSM2Uk8xFwM


Going Down: The Songs of Don NixGoing Down: The Songs of Don Nix
(2002/10/08)
Don Nix

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ゴスペル色の濃い「Three Angels」。歌の冒頭において、雨の日の三人の天使との出会いが語られ、その後は暗く寂しい道を旅するときも天使たちが見守ってくれているのが分かると神の愛と加護を讃えています。


アコースティック・ギターのリフが印象的な「Mary Louise」。娘に怪しげな男どもの勧誘が悪魔の囁きの如く迫っていることを忠告する内容が歌われています。

http://www.youtube.com/watch?v=6ncUOl8qtoo

これもまた、ザ・バンドを思わせる「My Train’s Done Come And Gone」。ゴスペル風のコーラスも心地よく響きました。カリフォルニアにやって来た旅の男が知り合った女に引き止められて列車に乗ることが出来ず、「俺は魂が救われるのを待っている。根無し草の俺はどこへ行けばいいのだ」との逡巡と嘆きが表された歌です。

http://www.youtube.com/watch?v=t7vmZEDhTJI


このアルバムの裏ジャケットと見開きに、南北戦争時のものと思われる軍服を着て気取るドン・ニックスの姿が写っていました。私は軍服には疎いのでよく分かりませんが、彼が被っている紺色のキャップ、身に纏う紺色のジャケット、スカイ・ブルーのトラウザーズは北軍のユニフォームのように見受けられます。グレーを基調にした南軍のものには見えません。彼のこのパフォーマンスにどういう意図があったのでしょうか。詳しい方のご教示がいただければ幸いです。

BB&Aによる「Sweet, Sweet, Surrender」を紹介しましたが、1973年に発表された『Hobos, Heroes And Street Corner Clowns』に収録されていた本人のヴァージョンで今回のお開きとさせていただきます。

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コメント

奇遇ですね。
僕もDon Nixの1stアルバムをエントリーしたばかりでした。
(TBさせて頂きました)
自分の記事にも書きましたが、1stアルバム以外の70年代のアルバムはずっと入手困難でこの2ndアルバムもずっと探し求めています。
今回40年近く振りに音を聴いて当時の事がいろいろと思い出されました。
ワーナーさんCD再発してくれないかなぁ。
今晩は。ドン・ニックス、ちゃんと聴いたっことがなかったのですがとても良いですね。
”スイート・スイート..”は”アイ・シャル・ビ・リリースト”そっくりだし”マイ・トレインズ..”はほとんど”ザ・ウェイト”そのものに聴こえます。共通のひな形でもあるのでしょうか。気になります。
またこの人にしてもドニー・フリッツにしろトニー・ジョーにしろダン・ペンにしろ南部の人たちには無骨なイメージとは裏腹に独特の深い甘みとメローネスがあって惹かれます。

僕も制服のことはまったくわかりませんがCSN&Yもデジャ・ヴでそんな格好をしていましたよね。
”コールド・マウンテン”という小説を読んでも思ったのですが
アメリカ人にとって僕たち日本人には想像し難いものが南北戦争とかメイスン・ディクスン・ライン(マーク・ノップラーが歌にしていましたね)にはあるのでしょうね。そのあたりについても知りたいところです。

良い歌を聴かせていただきました。ありがとうございます。
PurPle_Haze様、コメントおよびトラックバックありがとうございます。
ドン・ニックスが紡ぎ出した音楽はいま聴いても色褪せず新鮮です。R&B、ゴスペル、ロックン・ロール、ブルース、カントリーなどが渾然一体となり人情味溢れる懐の深い音楽を構築していました。彼の作品群の多くが廃盤状態であることがとても残念。再発を強く望む次第です。
40年前の出来事がまるで昨日のことのように感じる毎日です。若き日々は今よりも充実していたのでしょう。昨日、一昨日のことのほうがずっと昔のように思えます。
miracle-mule様、コメントありがとうございます。
いわゆるスワンプ・ロックの範疇に入れられるドン・ニックスの音楽ですが、それほど泥臭さはなく、むしろ繊細で洗練された雰囲気が漂います。外見の無骨さとは対照的な懐の深さや人情味。そんな要素が垣間みれる彼の音楽性は楽曲の中に見出される信仰心の深さとも関係しているのかもしれません。
スティーヴン・スティルスが「Daylight Again」を作ったいきさつについて、「マナサス時代にステージで演奏していた時、突然南北戦争の戦場で折り重なる死体の姿が目に浮かび歌詞が自然に溢れ出た」と述懐し、「我々は戦争に負けたのだ。人種差別はまだ残っている」と付け加えています。南部人にとって南北戦争とはついこの間の出来事なのかもしれません。
こんにちは。この年代のサウンドって本当にいいですね。やめられません。アナログ当時よりCDになってからの方が繰り返し聴くようになりましたが耳になじんできたのかな?
スナジイー様、コメントありがとうございます。
決して売れたわけでもなく、それほど知名度が高かったわけでもないけれど、ドン・ニックスはいつまでも忘れられない人ですね。時代が彼に追いついたという言い方は陳腐かもしれませんが、1990年代になってようやく評価されたようです。しかし、現在はまたもや廃盤状態の作品が多く、再発を強く望む次第です。
こんばんは。youtubeの貼り付けてある映像のアルバム・ジャケットの2枚とも持ってますが、印象ありません。。。スワンプの名盤と誉れも高いんですけど、意外と洗練されているというか泥臭くはなかった気がします。いいかげんですいません^^;
kuwa様、コメントありがとうございます。
声質も手伝ってか、ドン・ニックスの紡ぎ出す音楽は洗練された雰囲気が窺えると思います。ロサンゼルスでプロデュースの修行を積んだ故、泥臭いばかりでなくキャッチーなメロディも肝要と心得ていたのかもしれませんね。

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