好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Al Stewart - Orange

フェアポート・コンベンション、ストローブスとブリティッシュ・フォークの香りが漂うグループの記事を続けてしまい、英国ロックの深い森からなかなか抜けられそうにありません。というわけで、今回は英国王家の血を引くというアル・スチュアートに登場していただくことにしました。取り上げるアルバムは『Orange』。ストローブスに在籍したリック・ウェイクマンが参加しています。

OrangeOrange
(2007/06/22)
Al Stewart

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1. You Don't Even Know Me
2. Amsterdam
3. Songs Out Of Clay
4. The News From Spain
5. I Don't Believe You
6. Once an Orage, Always an Orange
7. I'm Falling
8. Night Of the 4th Of May
9. Soho (Needless To Say)
10. Elvaston Place
11. It Doesn't Matter Anymore

アル・スチュアートは1945年9月5日、スコットランドのグラスゴーで誕生。生後間もなくグリーノックに移り、幼少期から思春期の頃まではボーンマスで過ごしました。
17歳で学校を退学。幾つかのバンドを転々とした後、19歳でロンドンに出てフォーク・クラブでボブ・ディランのナンバーや自作の曲を歌って注目されるようになります。
1966年、シングル「The Elf」でデビュー。翌67年、CBSと契約してアルバム『Bedsiitter Images』を発表します。69年にはリチャード・トンプソンやアシュリー・ハッチングスらフェアポート・コンベンションのメンバー、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが参加したセカンド・アルバム『Love Chronicles』をリリース。メロディ・メイカー紙の "Folk Album Of The Year" に選ばれ高い評価を得ました。タイトル曲では自身の恋の遍歴が18分に渡って延々と歌われ、生々しい描写と衝撃的な言葉が波紋を呼びます。表現の自由とはいえ、この歌の直接的な描写はあからさま過ぎてこれ以上とても説明できません。当然ながら、当時の本国イギリスで放送禁止となりました。続く1970年のサード・アルバム『Zero She Files』ではロック色を強め、恋愛だけではなく戦争をテーマに取り上げるなど変化の兆しが訪れます。

1972年、『Orange』では再びリアルなラヴ・ソングを中心とした内省的な歌に戻り、アル・スチュアートによる私小説的な世界が繰り広げられていました。自分自身の実体験をもとに、その想いを赤裸々にさらけだす作風が痛々しくも魅力的で心を打ちます。恋愛とは濃淡や程度の差こそあれ、誰もが経験し想い悩むこと。アル・スチュアートの描く歌はそうした男性と女性の価値観の違いや考え方の変化を的確に捉え、リスナーの共感を呼ぶ所以となっているのでしょう。

主な参加ミュージシャンはTim Rebeick(ギター)率いるイギリスのフォーク・ロック・グループQuiverの面々、既にイエスに移籍していたリック・ウェイクマン(キーボード)、Brinsley Schwarzからブリンズリー・シュウォーツ(12弦ギター)、ボブ・アンドリュース(オルガン)など。ジミー・ペイジのような大物の名は見当たりませんが、腕達者な人々が駆けつけていました。

それではアルバムの仲から何曲か紹介します。オランダのアムステルダムへの想いと愛する女性への恋慕の情を重ね合わせたポップな曲、「Amsterdam」。


叙情を激しくかきたてるような「The News From Spain」。恋人マンディとの別れが描かれた曲です。アルは彼女との関係が破綻した後の十ヵ月間は何も手がつけられず、歌も歌えない状態だったとのこと。過ぎ去った出来事を振り返りながら、ドラマティックな演奏をバックに切々と歌う様はようやく吹っ切れて現実を直視出来るようになったあらわれでしょう。


THE NEWS FROM SPAIN
スペインからの知らせを耳にした
まだ知りたいことがたくさんあるし
そして戻りたいのかどうかも分からないと君は言う
物事すべてがうまく行くかどうかにかかっている
カルヴァハルでどうにか出来ればの話さ

スペインからの知らせを耳にした
君は君を束縛しない誰かさんを見つけたんだってね
その人は君の涙を拭き、それから君の傍らに横たわった
時の流れというシンプルなワインが
俺たちをカルヴァハルで引き離した

タクシーに乗り込み空港へ
俺は着の身着のままで立っていた
走り書きした住所、歯ブラシ、パスポート
俺たちがビスケットの缶に貯めていた金
不安に駆られながら見知らぬスペインの街へと急ぐ
砂浜や海岸線を捜し求めて

スペインからの知らせを耳にした
冬の風が南の地を占有し
海はマントのように砂浜を包む
人ごみは去り
俺は歌を残して来た
カルヴァハルで
孤独に苛まれて息絶えるように

悲しいけれど、恋をする相手を
人は思うがままに選べるものではない

ボブ・ディランのナンバー、「I Don't Believe You」。アル・スチュアートは当時、「ディランはもう卒業したよ」と嘯いていたという逸話が残っています。情事の後によそよそしい態度を取った恋人への不信が描かれたこの曲を取り上げたことは、パーソナルで内省的なラヴ・ソングと訣別しようとするアルの決意の表れだったのかしれません。


ボブ・ディランのヴァージョンは『Another Side Of Bob Dylan』(1964)に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=oNj6n6BJjIg

こちらは『Live 1966』(1998)に収録されていたヴァージョン。
http://www.youtube.com/watch?v=B_HPYuDC8Ks&feature=related

恋人と愛を交わす描写が鮮やかに表現された「I'm Falling」。


アルバム『Orange』発表後、アル・スチュアートは「私の歌は愛の歌だ。だが私は愛の歌を書き続けようと思わない」とコメントしたとされています。その言葉の通り、1974年には「ノストラダムスの大予言」を扱った『Past Present And Future』をリリース。個人的な愛の歌は影を潜め、戦争、歴史などに目を向けて物事を客観視する姿勢を窺わせました。言わば叙情詩人から叙事詩人へと転向したと理解してもいいのでしょう。
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