好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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The Long Black Veil

前回扱ったシャロン・シャノンの流れで今回はアイリッシュ・トラッドを取り上げようと物色しているうちに、ザ・チーフタンズがローリング・ストーンズやスティングをゲストに招いて録音したアルバム『The Long Black Veil』が目に留まりました。以前よりその中に収録されたタイトル曲である「The Long Black Veil」が気になっていたので、この曲に絞って少しばかり述べてみることにします。


Long Black VeilLong Black Veil
(1995/01/01)
The Chieftains

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THE LONG BLACK VEIL
10年前の寒く暗い夜
公民館の明かりの下である男が殺された
その場に居合わせた何人かが口を揃えて証言した
逃げた男は俺にそっくりだったと

判事は言った「君にはアリバイがあるのか
他の場所にいたのなら死刑の判決を受けることはない」
俺は人生を賭けて何も言わずにいた
親友の女房の腕の中にいたのだから

彼女は黒色の長いヴェールを被って丘を歩いて登り
夜風が呻く俺の墓を訪れてくれるだろうか
誰も知らない 誰も見ていない
俺しか知らないことだ

絞首台は高く、あの世はすぐそば
彼女は群衆の中に立ち、一粒の涙も流さなかった
だが時おり冷たい風がうなる夜、黒色の長いヴェールを被って
彼女は俺の亡骸の上で泣いてくれている

チーフタンズのヴァージョンはミック・ジャガーをリード・ヴォーカルに迎えてレコーディングされました。儚さが滲み出た説得力のあるミックの歌声はローリング・ストーンズとまた違った趣があります。かつてミックの恋人だったマーシャ・ハント(1971年発表の『Woman Child』に収録) 、マリアンヌ・フェイスフル(1984年発表の『Rich Kid Blues』に収録) らがこの曲を彼に先んじて取り上げていました。ミックがどのような気持ちで歌っていたのかと考えると興味深いところです。

この歌は作者であるマリジョン・ウィルキンとダニー・デイルがニュー・ジャージーで実際に起こった事件をもとにして共作した曲です。1959年にレフティ・フリッゼルによってカントリー・チャートで6位となるヒットを記録しました。

ウィリー・ネルソンやマール・ハガードに影響を与えたというレフティ・フリッゼル。優しい歌声に心が和みます。



That's the Way Life Goes: The Hit Songs 1950-1975That's the Way Life Goes: The Hit Songs 1950-1975
(2004/08/24)
Lefty Frizzell

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この歌は1959年に作られましたが、描かれた世界は19世紀のアメリカ社会を連想させます。少々事情が異なりますが、リチャード・ギアー、ジョディ・フォスター主演で『Sommersby(邦題ジャック・サマースビー)』(1993年公開)という映画を観たときにこの歌のことが頭の中に浮かびました。南北戦争終結直後の1860年代後半のアメリカ南部テネシー州が舞台のこの映画。戦死したと思われた農園経営者だったジャック・サマースビーが6年ぶりに帰郷し、冷酷な性格で暴力的だった彼の性格が別人のような変貌を遂げ、小作人や黒人奴隷に領地を分けて村の人々と共同で煙草栽培に取り組むようになります。妻は困惑を隠せず偽者であることに気づくも彼の優しさにほだされ情を通わすようになって行きました。その熱心な仕事ぶりにサマースビーは次第に人々の尊敬を集めますが、ある日、警察がやって来て彼は殺人容疑で逮捕されます。実は変貌を遂げたサマースビーは偽者で、戦友となった本者のサマースビーから故郷の話を聞いており、本者が戦死したのを機に入れ替わっていたのでした。しかし、本者は故郷を出た後に殺人事件を起こしていたのです。妻は「この人は本当の夫ではない。なぜなら夫のことをこれほどまでに愛せなかった」と証言して偽者の無実を訴えますが、偽のサマースビーは「自分の人生の中で君と暮らした時が一番幸せだった。君の夫して死にたい」と本者のサマースビーであることを主張。小作人や黒人たちとの契約が反故になる事態をも鑑み、偽者であることを認めず死刑に処せられることを受け入れたのでした。処刑の日、妻は群衆をかき分け最前列に立ち、永遠の愛を近いながら彼の最後を見届けます。

不倫の代償とはいえ、親友の妻を守るために墓場まで秘密を持って行ったことが歌われた「Long Black Veil」。妻への愛と人々からの尊敬の念に殉じた『Sommersby』。異なった事情ながらどちらも重いテーマが根底にあり、裏切れぬ人への愛が貫かれていました。21世紀の日本社会ででこうした状況に置かれることはないと思いますが、私のように覚悟のない人間には決して真似の出来ないことです。

私はザ・バンドの『Music From Big Pink』(1968)に収録されていたヴァージョンでこの歌を知りました。リック・ダンコがリード・ヴォーカルを取り、セカンド・ヴァースからはリヴォン・ヘルムが絡むように加わり、リチャード・マニュエルもコーラスで参戦する様はたんなる「泣き節」を通り越した「無常」の人生観が示されているようにさえ思えました。


1970年のライヴ映像です。ここではロビー・ロバートソンがリック・ダンコを支えるようにコーラスを付けていました。

ロビー・ロバートソンはザ・バンドがこの歌を取り上げたことについて、「私がその頃やってみたかった伝統的な方式に則った、素晴らしい歌詞例だ」と述懐していました。


Music from Big PinkMusic from Big Pink
(2000/08/11)
The Band

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この曲は多数のアーティストが各々のアルバムの中でカヴァーしており、主だったものだけでもキングストン・トリオ『New Frontier』 (1963)、 ジョーン・バエズ『Joan Baez in Concert Part 2』 (1963) 、ジョニー・キャッシュ『Orange Blossom Special』(1965)、『Johnny Cash at Folsom Prison 』(1968)、『Unearthed』(2003)、ニュー・ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セージ『Gipsy Cowboy 』(1972)、サミー・スミス(1974年にシングルで発表)、ザ・セルダム・シーン 『Scenic Roots』 (1990)、デイヴ・マシューズ・バンド『Listener Supported』(1999)、ジェリー・ガルシオ、デヴィッド・グリスマン、トニー・ライス 『The Pizza Tapes 』(2000) ロザンヌ・キャッシュ(featuring Jeff Tweedy)『The List』 (2009) と枚挙に暇がありません。

ジョニー・キャッシュとジョニ・ミッチェルが共演した映像は、1969年頃にテレビで放送されたジョニー・キャッシュ・ショーからのもののようです。『The Best of the Johnny Cash TV Show 1969-1971』 (2007) に収録。


ジョーン・バエズのスタジオ・テイクは『Joan Baez/5』(1964)、『Any Day Now』(1968)のボーナス・トラックとしてそれぞれ異なるヴァージョンが収録されています。
http://www.youtube.com/watch?v=ktRT-XVYZO8

http://www.youtube.com/watch?v=cGA2U30KGok

デイヴ・マシューズのヴァージョンはエミルー・ハリスとデュエットで歌う映像でお楽しみください。
http://www.youtube.com/watch?v=tA3RKUHhN5A

正式なレコーディングはないようですが、ブルース・スプリングスティーンもライヴでは定番のように取り上げているようです。

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コメント

Jim Reevesを受け継ぐ人でしょうか♪

God bless you...
Azumi様、コメントありがとうございます。
私はカントリーについてさほど詳しくないのですが、レフティ・フリッゼルもジム・リーヴズもテキサスのホンキー・トンクの流れを組む人だったようですね。
こんばんは。
このThe Long Black Veilという曲は、僕もBig Pinkで始めて聴きまして、それ以来Favoriteな曲です。
Chieftains + Mick Jaggerの盤について、随分以前に拙ブログで書いた事があります。あのアルバムは、Mick Jaggerと共演している訳ではありませんが、Marianne Faithfulもゲストで登場していて、面白いですね。Stones、Van Morrison、Sting、Ry Cooder等他のゲストも超豪華でしたね。
オリジナルリリース当時と、ジャケットが変わったのでしょうか? 少なくとも僕の持っているのと、掲載されていたジャケットは異なっています。
Substitute様、コメントありがとうございます。
アイルランドの伝統音楽に現代的なアレンジを施し、音楽の根底は多元的であることを知らしめてくれたチーフタンズ。世界中のアーティストとの共演により、ジャンルにとらわれることなく常に新しいサウンドを創造しています。
アイリッシュ・ミュージックはローリング・ストーンズの音楽的なルーツの一つでもあるのでしょう。ミック・ジャガーは1960年代からのチーフタンズのファンで、マリアンヌ・フェイスフルを伴って彼らのステージをよく観に行っていたそうです。
このアルバムにはどうやら二種類のジャケットがあるようですね。私の持っている国内盤のジャケットは掲載したUS盤と同じです。
 今回の「Long Black Veil」ですが、やはり私もザ・バンドで知り、大好きな曲になりました。
 意味がよく分からずにおりましたが、お陰で理解することができました。m(_ _)m
 小生もこのアルバム、大好きです。さすが、チーフタンズです。誰が加わろうとそのテイストは変わりません。
 勿論、ミック・ジャガーも良かったですが、ヴァン・モリソン、マーク・ノップラー、ライ・クーダーなどもいい雰囲気でした。
takaboh様、コメントありがとうございます。お役に立てて幸いです。
アイリッシュ・ミュージックを基盤としながらも世界のあらゆるミュージシャンと共演して新しいサウンドを創造するチーフタンズ。音楽に境界線などないことを示してくれているようです。
ロック・アーティストととの共演も多いのですが、とりわけヴァン・モリソンとは魂がつながっているようにさえ思わせてくれます。

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