好きな音楽のことについて語りたいと思います。

Judee Sill

今回も以前から気になっていた人を記事にします。その人の名はジュディ・シル。アサイラム・レコードの第一回発売アーティストの一人でした。

ジュディ・シルジュディ・シル
(2005/12/02)
ジュディ・シル

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1. Crayon Angels
2. Phantom Cowboy
3. Archetypal Man
4. Lamb Ran Away with the Crown
5. Lady-O
6. Jesus Was a Cross Maker
7. Ridge Rider
8. My Man on Love
9. Lopin' Around Thru the Cosmos
10. Enchanted Sky Machines
11. Abracadabra

ジュディ・シルは1944年(46年説もあり)10月7日カリフォルニア州ロスアンジェルスに生まれ、オークランドで育ちました。父母が経営するバーに置いてあったピアノに幼き頃から親しみ、その後もウクレレやギターの演奏を覚えて作曲を始めるようになります。やがて父が亡くなり、母は再婚したものの酒浸りの毎日。虐待も受けたそうです。そんな日々に嫌気をさしたジュディは両親に反抗的な態度を取るようになり、次第に犯罪とドラッグに手を染めて行きました。1963年にジュニア・カレッジに入学して真剣に音楽を学ぼうとするも、犯罪を行うことのスリルが快感となってガソリン・スタンドや酒屋へ強盗に入る始末。間もなく逮捕されて感化院に送られます。
ジュディは感化院で矯正プログラムを受けて改心。入院中には施設内の教会に置かれたオルガンでゴスペルのコード奏法を習得しました。ここでの体験はその後の彼女の音楽活動のみならず人生においても重要なものとなったことでしょう。
退院後はカレッジに戻り、ソング・ライティング・コンテストに出場して優勝。音楽の才能を開花させて行きます。しかし、地元のバーで歌い始めこのままシンガー・ソング・ライターへの道へと進むかに思われたのも束の間、またもドラッグの地獄へとはまってしまいました。ジャンキーとなりクスリを買うために身を売ることもあったそうです。
再び逮捕されたジュディはやっと中毒症状から脱することができ、そうした荒んだ体験の癒しとなったのか宗教に惹かれるようになりました。なお、この頃には母と兄が他界し、さらに彼女は結婚と離婚を経験しています。彼女に取って人生の荒波が一気に押し寄せていたかのような時期でした。

音楽活動を再開したジュディはクラブで歌うようになります。ジュディにようやく幸運が舞い込んで来たのか、彼女が書いた「Lady-O」がタートルズに取り上げらることになりました。タートルズのベーシストであるジム・ポンスがジュディと友人だったことが幸いしたのでしょう。また、グラハム・ナッシュとの出会いもこの時期のことです。
自作の曲がタートルズによってレコーディングされ、グラハム・ナッシュとの親交を深めて行ったことからジュディの活動はデヴィッド・ゲフィンの目に留まることになりました。彼はローラ・ニーロを手始めとしてジャクソン・ブラウン、ジョニ・ミッチェル、クロスビー、スティルス&ナッシュらのマネージメントを行うまでになり、さらにはレコード会社を立ち上げようとしていたのです。
晴れてジュディ・シルはデヴィッド・ゲフィンのアサイラム・レコードと契約。1971年に発表されたアルバム『JUDEE SILL』はアサイラムから発売された最初のアルバムとなりました。

絶妙なオーケストレーションをバックに透明感のある高音で囁くように歌うジュディ・シルの魅力が溢れたファースト・アルバム『JUDEE SILL』。アルバムは評論家や業界から賞賛を持って迎えられました。シングル・カットされた「Jesus Was A Cross Maker」はグラハム・ナッシュがプロデュースを行って話題となり、キャス・エリオットやザ・ホリーズに相次いで取り上げられています。また、デヴィッド・クロスビー&グラハム・ナッシュのツアーのオープニング・アクトにも抜擢されて彼女はこのまま順調な活動を続けて行くかのように思われました。

ジュディ・シルの半生を鑑みるとローラ・ニーロやリッキー・リー・ジョーンズ同様、思春期のドラッグ体験が共通項として浮かび上がります。しかし、その状況は彼女たちに比べて悲惨なもので、人生をも大きく左右し、生死の境を彷徨うほどの凄まじいものが窺えます。また、貧困と挫折を味わった経験が彼女の紡ぎ出す作品に大きな影響を及ぼしていることも確かでしょう。それ故、ジュディ・シルの歌に悔恨と贖罪の念が込められていました。

1973年にはセカンド・アルバム『Heart Food』を発表し高い評価を得るものの、大衆の支持をつかむことが出来ず商業的に芳しい成績を上げることなく、次第にジュディ・シルの名はシーンから消えて行きます。失意の彼女はまたもドラッグに頼る日々に逆戻り。さらに不運は重なり、交通事故で負った大怪我の痛みから逃れるためにドラッグ中毒に拍車がかかりました。そして、1979年11月にコカインの過剰摂取がもとで帰らぬ人となっています。

なお、ジュディ・シルの死後、2005年にサード・アルバムとしてレコーディングされていたデモ音源を中心に集めた『Dreams Come True』、2007年にBBCのテレビ/ラジオ出演時のライブ音源とインタビューを収録した『Live in London: The BBC Recordings 1972-1973』がリリースされました。

それではアルバムに収録された楽曲を幾つか紹介して行きます。
まず、オープニング・ナンバーの『Crayon Angels』。歌詞の内容は「私はここで神様と汽車が来るのを待つ」と救済を望む様子を歌ったものです。



続いて「Lamb Ran Away with the Crown」はライヴ映像でご覧下さい。歌詞の内容は「昔、私の額には悪魔が棲んでいた。私は叫び、嘆き、大声で呪いの声を上げていた」とおとぎ話のような雰囲気を受け取れますが、「子羊は王冠を被って逃げて行った」と締めくくられ、宗教的な表現が示されていました。


シングル・カットされた「Jesus Was A Cross Maker」もライヴ映像でご覧下さい。


JESUS WAS A CROSS MAKER
海の上にいる銀色の優しき天使たちよ
お願いだから私のもとへ低空飛行で降りて来て

知らない人を信じていたことがあるの
その人の甘い歌声を聴いてしまったから
何かおかしいと感じながらも
優しく誘惑されたのだ
だけど振り返るとあの人は姿を消していた

私を盲目にし、今も心に残るあの人の歌
あの人は強盗、ただのハート・ブレーカー
でもジーザスだってたんなる十字架を作っていた男だった

あの人は悪魔と戦っている
傍らにピストルを置いて
窓辺に悪魔を追いつめても
隠れる場所を与えないで
あの人はドアを開けたままにしているの

戦いは続き、あの人はランプを灯して迎え入れようとする
あの人は強盗、ただのハート・ブレーカー
でもジーザスだってたんなる十字架を作っていた男だった

轟く雷鳴が聞こえた
あんなに薄暗い光を見たのは初めて
どんどん交差点に近づいて行くのが見える
風が危険をはらみ
どちらの道も険しく思える

私を隠して 私は逃げる 欲望が私を引き裂く
あの人は強盗、ただのハート・ブレーカー
ああ でもジーザスだってたんなる十字架を作っていた男だった
そう ジーザスだってたんなる十字架を作っていた男だったのよ

宗教的な内容が漂う歌詞ですが、ローリング・ストーン誌のジュディ・シルへのインタヴューによると「多くの人があの歌を神について書かれてものだと思っているけれど、それは間違い。あれは私の心を引き裂いて行った強盗に向けて書かれた歌です」と述べられていました。ジュディ・シルは実体験に基づくラブ・ソングを書いていましたが、この曲も例外でなく、噂によるとJ.D.サウザーとのロマンスの破局が描かれているとのことです。ともに初期のアサイラムに所属したアーティストであるため、さもありなんといったところでしょうか。そう考えるとグラハム・ナッシュがプロデュースまで買って出るほど熱心だったわけは・・・。邪推はこのあたりで止めておきます。
なお、"Jesus was a cross maker"を直訳すると「ジーザスだってたんなる十字架を作っていた男」となるのですが、生活の糧として十字架作りに励んだイエス・キリストの境遇を鑑み、「神が試練を与えた」といった意味が表されているのではないかとも受け取れました。

前述の『Live in London: The BBC Recordings 1972-1973』のヴァージョンです。


キャス・エリオットの記事でも紹介したカヴァー・ヴァージョンです。


同じくホリーズのヴァージョン。1972年発表のアルバム『Romany』で取り上げています。キャメロン・クロウ監督、オーランド・ブルーム主演のアメリカ映画『Elizabethtown』(2005年公開)の挿入歌として使用され、サントラ盤にも収録されました。


2007年にリリースされたサントラの続編ではレイチェル・ヤマガタがこの曲を歌っています。


他にもウォーレン・ジヴォンが1995年に発表したアルバム『Mutineer』の中で取り上げていました。

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コメント

Backstreets 様

こんばんは。
ジュディ・シル、素晴らしいですね。
特にこのアルバムとセカンドはSSWファン必携の名盤だと思います。
ジュディの魅力を半減させてしまったジム・オルークのミックスが最悪な幻のサード「Dreams Come True」は新たなミックスでの再発を期待します。
また、1st,2ndを完全収録した上に71年ボストンでのライヴや多くのアウトテイク、デモテイクを収録した「The Asylim Years」もファンなら手元に置いておきたいところですね。
1st,2ndは名盤探検隊盤も持っていて、ダブッてしまっているんですが、ジャケの色合いが全く違うので手放しがたいんですよねぇ。
おやぢ様、コメントありがとうございます。
おっしゃる通りジュディ・シルの1stと2ndはSSW必携の名盤だと思います。彼女自身の体験をもとにしていても直接的に表現するのではなく、ファンタジー風に語りかけるところが何とも心憎いところです。
私も名盤探検隊の2枚に加えて、『The Asylum Years』も持っていますが、ジャケットの色合いが違うので手放す気が起こりません。

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