好きな音楽のことについて語りたいと思います。

Linda Ronstadt - Lovesick Blues

 今回もリンダ・ロンシュタットの『Silk Purse』から「Lovesick Blues」をお題として、数曲を取り上げることにします。

シルク・パース(紙ジャケット仕様)シルク・パース(紙ジャケット仕様)
(2014/08/27)
リンダ・ロンシュタット

商品詳細を見る



Best of the Capitol YearsBest of the Capitol Years
(2005/12/07)
Linda Ronstadt

商品詳細を見る


 クリフ・フレンドとアーヴィン・ミルズによって書かれ、ハンク・ウィリアムスの代表曲のひとつとなった、「Lovesick Blues」。リンダのヴァージョンは失恋の痛みを吹き飛ばすような軽快なカントリー・ロックに仕上げられています。前々回で扱った「Long Long Time」とのライヴ映像でご覧ください。


LOVESICK BLUES
私はすっかりブルース気分、ああ神様
あの人に別れをを告げられてからなの
ねえ神様、私どうしたらいいのか分からない
ただこうやって座って泣いてるだけなのよ

あの人がさよならを言ったあの日
ああ神様、私は死んでしまいたいと思ったわ
誰にでも、私にでも
あの人はそんな風な愛し方をするでしょうよ
俺の可愛い人よなんて
あの人から呼ばれたいけれど
ああ、そんなのほとんど美しい夢物語ね
終わったことだなんて思いたくないわ
あの人に夢中になっていたんだから

なーんか、あまりにもあの人に馴染んでしまったので
今は誰かのいい人になるなんてできやしない
そんなことでひとりじゃ淋しいわ
恋に悩むブルースってとこね

うん、恋してるわ 愛してるの
自分がどんな状態なのかなんて
分かりきったこと
うん、恋してるわ 愛してるの
自分が相手にされていないなんて
分かりきったことなのよ

あの人を満足させたいと
何度も頑張ってきた私
でもあの人は留まらず
ここを出て行ってしまうのよ
もうどうにもならないわね

 前々回で扱った『Long Long Time』を彷彿させるような失恋の歌です。気持ちの通じない人のことなどさっさと見切りを付け、新しい恋へ、人生へと向かって行くのが幸福への道なんでしょうが、そんな風にあっさりと心の重荷を下ろせないのが人情というもの。それでも泣いたり、愚痴をこぼせるだけの余裕があると救われるのかもしれません。

 エヴァリー・ブラザーズ・ショーに出演した際の映像のようです。


 スワンプウォーターをバックに、1970年に行われたビッグ・サー・フェスティヴァルに出演した際の音源です。


 男の切ない気持ちが滲み出るようなハンク・ウィリアムスのヴァージョンは1948年にリリースされました。

 
 オリジナル・ヴァージョンはエルシー・クラークによる1922年のレコーディングのようですが、1920年代から30年代に活躍したボードビリアンのエメット・ミラーが、1925年にリリースしたヴァージョンがよく知られています。ミンストレル・ショー出身の彼は顔を黒塗りにし、ヨーデルを使って歌うのを得意としていました。


 1960年にリリースされたカントリー界の大御所、パッツィ・クラインのヴァージョンです。
 

 ドリー・パートン、ロレッタ・リン、タミー・ウィネットによるカヴァー。パッツィ・クラインのヴァージョンに被せてレコーディングされたようです。1993年リリースの『Honky Tonk Angels』に収録。


 この曲は現在も様々なアーティストによって歌い継がれています。こちらはノラ・ジョーンズやリチャード・ジュリアンらによって2003年に結成されたバンド、ザ・リトル・ウィリーズのヴァージョン。ジョニー・キャッシュの「Wide Open Road」、ロレッタ・リンの「Fist City」、ドリー・パートンの「Jolene」などをカヴァーしたアルバム、『For The Good Times』(2012年発表)に収録されていました。



 ロックン・ロール・デュオのドン・ハリス&デューイ・テリーによる「I'm Leaving It All Up To You」。原曲はR&B調のロックン・ロールですが、リンダのヴァージョンはスティール・ギターやフィドルををフィチャーし、カントリー・ロック風にアレンジされています。


I'M LEAVIN' IT ALL UP WITH YOU
すべてあなたに任せるわ
あなた次第よ
これからどうするのか、あなたが決めてね
私の愛がほしいのか?
それともふたりの仲を終わりにしたいのか?

だからすべてあなたに任せるの
あなた次第なんだから
これからどうするのか、あなたが決めてよ
私の愛がほしいのか?
それともふたりの仲を終わりにしたいのか?

これが私の心
これが私の手
そして私、分からないわ
私がしたこと、私がどんな過ちを犯したというの?
あなたのことをこれほどまでに
恋い慕っているのに


 リンダのような女性から、「愛してほしいの」と「終わりにしたいの」との二者択一を迫られたらどうなるでしょうか。幸か不幸か、男女の修羅場の経験に乏しいのでよく分かりません。でも、恋い慕った女性と気持ちが通じ合わなくなり、さよならを告げられたことは幾度かありました。まったく自慢にもならない話ですね。失礼しました。

 ドン&デューイのヴァージョンは1957年にリリース。ドゥー・ワップ・スタイル風です。


 こちらは1963年にヒットした男女デュオのディル&グレイスのヴァージョン。


 人生の酸いも甘いも噛み分けたと思しきソニー&シェールのヴァージョンです。1966年の『The Wondrous World of Sonny & Cher』に収録。ソニーさんと別れた後のシェールさんは恋多き女として、あまたのアーティストと浮き名を流したことは言うまでもありません。さぞかし数々の修羅場をくぐり抜けてきたことでしょう。


 まだまだ現役で活躍しているトム・ジョーンズと日本では「Hello Mr. Sunshine」で知られるタニヤ・タッカーの共演ヴァージョンは『Tom Jones & Friends Live!』(1997)に収録。こちらはライヴ映像をご覧ください。


 スティーヴィー・レイ・ヴォーンの兄であり、ファビラス・サンダーバーズで活躍したジミー・ヴォーンもカヴァーしています。彼一流のブルース・ギターと苦みばしった味のあるヴォーカルが印象的。2010年リリースの『Jimmie Vaughan Plays Blues, Ballads & Favorites』に収録されていました。



 ジーン・クラークとバーニー・リードンのペンによる「He Dark The Sun」。ザ・バーズ脱退後のジーン・クラークが、バンジョーの名手であるダグ・ディラードと組んだディラード&クラーク時代の作品です。彼らのバック・バンドのリード・ギターを務めていたのがバーニー・リードンで、その関係から共作がなされたものでしょう。


HE DARK THE SUN
彼の心は端から端まで
太陽を隠すほどの闇に覆われている

そんなに昔のことじゃない
たぶん1年かそのぐらい前のこと
淋しい私は
誰かいい人を探していた
ニューオリンズの南のずっと奥から
夢を求めて出てきたの
そんな時に出逢った彼
そこからすべてが始まった

あの夜、彼が現れて
俺は君に相応しい男だと口説いてきた
俺の人生のレースが終わるまで
君と一緒だよ、なんてね
身の毛がよだつほどの邪悪な目をした彼が
私の人生の中に入り込んできた
彼の心は端から端まで
太陽を隠すほどの闇に覆われている

ああ、言葉にできないほどの想い出
神様、脱力感に苛まれそう
でも、そんなことは
若さゆえのせいにしておくわ
おかしなことかもしれないって
自分でもわかってるんだけど
私の決められた運命を
変えられる術は他にないの
既に起こってしまったことだから

彼の心は端から端まで
太陽を隠すほどの闇に覆われている

 影のある妖し気な雰囲気の異性を危険視していても、ついつい惹かれてしまうものですね。女性なら母性本能がくすぐられ、男性なら魔性あるいは妖艶な魅力の虜といったところなんでしょうか。分別のつく年頃になると若気の至りですまされませんが、そんなに賢く、学習効果を持ち合わせた人間はあまりいないのかもしれません。同じ過ちを繰り返してしまうのが人生と言えば簡単ですが、ちょっと辛いような気がします。

 こちらはカントリー風味が増したヴァージョン。2006年にリリースされた『The Best Of Linda Ronstadt: The Capital Years』に収録されていたものと似ていますが、また別のテイクかと思われます。


 オリジナルはディラード&クラークで、『The Fantastic Expedition Of Dillard & clark』(1968)に収録。哀愁の漂うジーンの歌声は身につまされるようです。


 クレイグ・フュラーを中心とするカントリー・ロック・バンドのピュア・プレイリー・リーグのヴァージョンです。1999年リリースの『Greatest Hits』に収録。
 
 
 今回は奇しくも失恋や成就しない恋愛の歌ばかりになりました。カントリー・ロックのサウンドをバックに、ある時は痛快に、ある時は愁いをたたえて「恋歌」を表現するリンダ。その愛らしい歌声は瑞々しく、歌に賭けるようなひたむきさが感じ取れます。

スポンサーサイト

Linda Ronstadt - Louise

 前回の記事ではリンダ・ロンシュタットのアルバム、『Silk Purse』から「Long Long Time」をお題としました。この曲が、ゲイリー・ホワイトの作であることはその時にお話しましたが、『Silk Purse』の中にはもう1曲ゲイリー・ホワイトが提供した「Nobodys」、さらに彼が演奏に参加した「Louise」(ポール・シーベル作)が収録されています。今回はこの2曲を取り上げることにしましょう。

シルク・パース(紙ジャケット仕様)シルク・パース(紙ジャケット仕様)
(2014/08/27)
リンダ・ロンシュタット

商品詳細を見る

 キャピトル・レコード時代の4作品とボーナス・トラックが収録されたお得なアルバムです。

Best of the Capitol YearsBest of the Capitol Years
(2005/12/07)
Linda Ronstadt

商品詳細を見る




NOBODYS
1年後、彼女を見たわ
奇妙なお化粧をして
誰かに教えられた微笑みを浮かべ
目元で秘密を明かしている

降る雨の向こうに
私は太陽の光を見なかったのかしら
彼女はいま、自分が泣いているのが分かっている
彼女はいま、自分が泣いているのが分かっている
わざと人に見られるようにしながら
これまで何が起ころうと
世間は冷たいから心のうちに秘めていたのに

遅かれ早かれ、彼女は私に打ち明けてくれた
また恋をしているの、今度こそ本物よと
故郷には私を引き止めておくものなんて何も残っていない
都会は素敵なところ
誰もが良くしてくれる

彼女は思わなかったのかしら
私が以前に口癖のように同じ言葉を何度も聞かされていたことを
彼女は自分が嘘をついてるって知ってるわ
彼女は自分が嘘をついてることを知ってるのよ
これまで何が起ころうと
世間は冷たいから心のうちに秘めていたのに

彼女は思わなかったのかしら
私が以前に傷ついた誰かさんの姿を目にしていたってことを
彼女はいま、自分が泣いているのが分かっている
彼女はいま、自分が泣いているのが分かっている
わざと人に見られるようにしながら
これまで何が起ころうと
世間は冷たいから心のうちに秘めていたのに

 友情の証しというわけでもないのでしょうが、バリー・ホワイトのかつての盟友ジェリー・ジェフ・ウォーカーも歌っています。1970年の『Bein' Free』に収録。このアルバムはエリオット・メイザーがプロデュースしており、リンダは彼からの紹介を受けてこの曲を取り上げたものと思われます。


 ジェリー・ジェフ・ウォーカーのバックでギタリストを務めたデヴィッド・ブロンバーグのヴァージョンは、1975年の『Midnight On The Water』に収録。


 こちらもゲイリー・ホワイト絡みの1曲。ルイーズという売春婦あるいはあばずれ女の虚飾と欺瞞に満ちた生き方を描いた歌ですが、彼女のみすぼらしい死に様には同情と哀悼の念が表されています。
 ゲイリー・ホワイトは、シンガー・ソング・ライターのポール・シーベルのファースト・アルバム『Woodsmoke and Oranges』(1970)にベーシストとして参加。「Louise」はそのアルバムに収録されていた曲であることから、ホワイトがリンダに紹介したものと思われます。
 淡々と想い出話をするように歌うリンダ。変に感情を込めないほうが説得力があるのかもしれません。なお、ギターを弾きながらハーモニーをつけているのはホワイトです。

LOUISE
みんなが言ってたわ
ルイーズはちっとも悪い子じゃないって
なのに壁や窓の日よけの落書き
少女のように振る舞う彼女
詐欺師だ、彼女を信じちゃいけない
それが彼女のやり口なんだって

香水の瓶だったり花だったり
レースの装飾品だったりと
男どもはルイーズに安価でこれみよがしのものを買ってきたの
彼らの魂胆はみえみえだったわ
たまには彼女が涙を流すこともあるって
どこの誰でも知っていた
ああ、でも、ルイーズのような女はすぐに立ち直り
うまくやっていくものよ

自分の部屋にいるルイーズを見つけたとき
どこの誰もが悲しい気分になった
人々は彼女のことをいつも見下していたけれど
彼女が亡くなった今日の午後、
泣く者さえいたのよ

郵便列車に乗せられて故郷に帰って行ったルイーズ
南部のどこかだって聞いたことがあるわ
こんな酷い終わり方ってとても気の毒ね
こんな風に逝ってしまうなんてとても残念なことよ

ああ、今夜は冷たい風が吹く
さようなら、ルイーズ、さようなら

 この曲も根強い人気があるようで興味深いカヴァー・ヴァージョンが幾つかあります。
 フェアポート・コンベンションで活躍し、マシューズ・サザン・コンフォートを率いてジョニ・ミッチェル作の「Woodstock」を全英チャート1位に送り込んだイアン・マシューズが、アンディ・ロバーツらと組んだプレイン・ソングのアルバム『In Search of Amelia Earhart』(1972)で歌っておりました。


 12弦ギターの使い手であるレオ・コッケのヴァージョンは1972年の『Greenhouse』に収録。


 ボニー・レイットのヴァージョンは1977年の『Sweet Forgiveness』に収録。


 作者であるポール・シーベルのヴァージョンで締めくくりましょう。1970年の『Woodsmoke and Oranges』に収録。人生の機微に通じたような味わい深い歌声です。


 なお、本作『Silk Purse』には前回で紹介した「Long Long Time」や今回紹介した作品の他にも、ハンク・ウィリアムスの「Lovesick Blues」、 キャロル・キングとジェリー・ゴフィンによる「Will You Love Me Tomorrow」、ディラード&クラークの「He Dark The Sun」など興味深い曲が収録されていました。プロデューサーのエリオット・メイザーがリンダと相談しながら適切な選曲をしたのでしょう。そして彼は気心の知れたエリア・コード615の面々をリンダのバックにあてがい、どのような歌い方をすれば良いかをアドバイスして彼女の魅力を引き出して行ったと思われます。
 また、本作の成功はそのようにプロデューサーのエリオット・メイザーの手腕によるところが大きかったと言えますが、同様にゲイリー・ホワイトの助力抜きではなしえなかったのかもしれません。しかし、影の功労者として多大な働きをしたホワイトはソロ・アーティストとしてのデビューは叶わず、次第にシーンから姿を消して行きました。1978年に発表されたポール・シーベルのライブ盤『Live at McCabes』にデヴィッド・ブロンバーグとともに参加していましたが、その後の消息は知れず。今頃どうしているのか気になるところです。

Linda Ronstadt - Long long Time

 前回のウェンディ・ウォルドマンの記事の中で、リンダ・ロンシュタットに少しばかり触れましたので、今回は久々に彼女のことについて少しばかり述べさせていただくことにしました。お題は「Long Long Time」。リンダが、1970年にリリースしたアルバム『Silk Purse』に収録され、シングル・カットされて全米25位まで上昇した曲です。

シルク・パース(紙ジャケット仕様)シルク・パース(紙ジャケット仕様)
(2014/08/27)
リンダ・ロンシュタット

商品詳細を見る


 キャピトル・レコード時代の全作品を網羅し、ボーナス・トラックを加えたお得盤。

Best of the Capitol YearsBest of the Capitol Years
(2005/12/07)
Linda Ronstadt

商品詳細を見る

 ストーン・ポニーズ解散後もリンダ・ロンシュタットは引き続きキャピトル・レコードと契約。1969年にアルバム『Hand Sown... Home Grown』をリリースし、ソロ・シンガーとして再出発することになりました。
 言わば「ウエスト・コースト・ロックの歌姫」に成長させようとのキャピトル側のリンダへの期待は大きかったのですが、このソロ第1弾は思うような結果を得られず、当然ながら次作での捲土重来が求められることになります。リンダは親交のあったジャニス・ジョプリンを通してプロデューサーのエリオット・メイザーと知り合い、彼に2作目のソロ・アルバムのプロデュースを依頼。エリオット・メイザーはイアン&シルヴィアの『Full Circle』(1968)、ゴードン・ライトフットの『Back Here On Earth』(1968)、『Sunday Concert』(1969)、マイケル・ブルームフィールドの『Live at Bill Graham's Fillmore West』(1969)、ジェリー・ジェフ・ウォーカーの『Five Years Gone』(1969)、エリア・コード615の『Area Code 615』(1969)など多彩なアーティストの作品のプロデューサーとして知られ、ジョン・サイモンがプロデュースを担当したたジャニス・ジョプリンの『Cheap Thrills』 (1968)ではミキシングとアシスタント・プロデューサーを務めた人物でもあります。なお、彼は後にニール・ヤングの『Harvest』(1972)、『Time Fade Away』(1973)、『Tonight's the Tonight』(1975)、『American Stars 'N Bars』(1977)、『Hawks & Doves』(1980)、フランキー・ミラーの『Rock』(1975)、エミルー・ハリスの『Duets』(1990)、ロリー・ギャラガーの『Notes From San Francisco』(2011)などを手掛け、ザ・バンドの『Last Waltz』(1978)にもエンジニアとして関わっていました。
 ニューヨークを拠点としながら今日はナッシュヴィル、明日はサンフランシスコといった具合に各地を飛び回り、精力的に仕事をこなすエリオット・メイザー。リンダは「きっと、この人やったらロックとカントリーを融合させたポップなアルバムを作ってくれはるわ」と確信したのでしょう。
 アルバムはナッシュヴィルでレコーディング。クレジットはありませんが、エリオット・メイザーの指揮の下、エリア・コード615の面々が馳せ参じていたと思われます。
 こうしてリンダにとって2作目のソロ・アルバムとなる『Silk Purse』は1970年の3月にリリース。シングル・カットされた「Long Long Time」は全米25位を記録するヒットとなりました。



LONG LONG TIME
愛は留まるだろうから、多少のことには動じないようにしなさい
素晴らしいアドバイスのようだけど
私の傍らには誰もいないわ 
目に見えない恋の痛手は時がきれいに洗い流してくれる
誰かが教えてくれたことだけど
私にはその意味が分からない

だって私はあなたを独り占めするために
あれこれ手を尽くしてきたのだから
だからこれからもあなたのことを愛しているでしょう
ずっとずっといつまでも

不安に苛まれ
まばたきして涙をこらえる
私を寄せ付けないあなたを
責めることはできない
あなたがたくさんの女の子たちと
いちゃいちゃしている間もずっと
私はあなたからの答えを引き出せなかった

だって私はあなたを独り占めするために
あれこれ手を尽くしてきたのだから
だからこのことが私を傷つけ続けると思うの
これからもずっとずっと

あなたが去って行くその日を待つわ
警告された支払うべき代償を
自分でも分かっているから
人生なんて欠陥だらけ
原因なんて誰にも分からないものよね?
存在しなかった愛の想い出に
私は生きるの

だって私はあなたの気持ちを変えようと
あれこれ手を尽くしたのだから
だからあなたのことを恋しく思うでしょう
ずっとずっと、これからも

だって私はあなたを独り占めするために
あれこれ手を尽くしてきたのだから
だからこれからもあなたのことを愛しているでしょう
ずっとずっといつまでも

 愛する男に振り向いてもらいたくて、あれこれ手を尽くす女心。それでも報われることなく永遠に愛し続けるというのは未練なのか、それとも恨み節なのか。しっとりと歌い始め、徐々に情感を込めて熱唱するリンダの歌声に、その切なさがよく表されていました。
 リンダ・ロンシュタットのような女性から心を寄せられたら他の女には目もくれない、と言いたいところですが、きっと現実は違うのでしょうね。男というものは仕方のない生き物なので、ひとりの人を愛する気持ちと行き先々でちやほやされたい欲望が交錯しているようです。

 この曲の作者であるゲイリー・ホワイトはテキサス州の出身で、1960年代後半に「Mr.Bojangles」の作者として知られることになるジェリー・ジェフ・ウォーカーらとサーカス・マキシマスというサイケデリック風のフォーク・ロック・バンドを組み、ベースを担当していました。サーカス・マキシマスは67年にファースト・アルバム『Circus Maximus』、68年にセカンド・アルバム『Neverland Revisited』を発表しますが、同年に解散。ジェリー・ジェフ・ウォーカーはソロに転向し、ゲイリー・ホワイトもまたシンガー・ソング・ライターとして活動することを夢見ていたのです。
 前述したように、エリオット・メイザーはジェリー・ジェフ・ウォーカーのアルバムのプロデュースを行っていたことから彼を通じてゲイリー・ホワイトの存在を知り、ソング・ライターとしての才能を見いだしたのでしょう。その結果、リンダへの楽曲の提供が実現したものと思われます。

 初々しいリンダの姿を。1969年に出演したTVショーの映像のようです。

 
 1970年にグレン・キャンベルのTVショーに出演した際の映像のようです。


 ボビー・ダーリンとの共演映像もよろしければご覧ください。


 この曲は数多くのアーティストによってカヴァーされています。
 ウィスパリング・ヴォイスが男心をくすぐるクロディーヌ・ロンジェのヴァージョンは、1971年リリースの『We've Only Just Begun』に収録。


 クロディーヌ・ロンジェの元夫、アンディ・ウィリアムスも歌っていました。1971年発表のコンピレーション・アルバム『The Impossible Dream』に収録。


 作家で詩人で作曲家。しわがれ声で、ひとつひとつの言葉を噛み締めるように朴訥と人間の悲哀を歌うロッド・マッケンのヴァージョンは1971年の『Pastorale』に収録。


 クリフ・リチャードのヴァージョンは1974年の『The 31st of February Street』に収録。


 枯れたようなハスキー・ヴォイスが涙を誘うメラニーのヴァージョンは1993年の『Silver Anniversary Unplugged』に収録。


 他にもハリー・ベラフォンテ(1973年の『Play Me』)キム・カーンズ(1977年の『Heroes』に収録)など取り上げるアーティストは枚挙に暇がありません。

 不振に終わったファースト・アルバムからの巻き返しを図ったリンダ・ロンシュタットの意気込みが功を奏したのか、シングル「Long Long Time」のヒットによって彼女は再び脚光を浴び、アルバム『Silk Purse』も全米103位まで上昇しました。本作はリンダが「歌姫」とスターダムへと駆け上がって行く第1歩を示したと言って良いでしょう。