好きな音楽のことについて語りたいと思います。

Paul McCartney - Loveliest Thing

 前回はフィル・ラモーン氏のプロデュースによるポール・サイモンの「50 Ways To Leave Your Lover」を記事にしました。今回も引き続きラモーン氏が関わった楽曲を取り上げさせていただきますが、ポールはポールでもポール・マッカートニーにご登場を願います。お題は「Loveliest Thing」。1989年にリリースされたCDシングル「Figure Of Eight」に収録されていた曲で、後にアルバム『Flowers In The Dirt』にボーナス・トラックとして収められました。

フラワーズ・イン・ザ・ダートフラワーズ・イン・ザ・ダート
(1995/11/08)
ポール・マッカートニー

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LOVELIEST THING
この世で君は一番美しい人
俺から逃げようたって無理さ
そんなことはさせないぜ
今までどうしてこんなぐあいに
物事に対応できなかったんだろうか
でもそんなことも今日まで
こんな風になるべきだったんだ

今日は朝まで寝ずにいよう
君がこっそりと逃げないように
許可なく
怪しまれず
何の許可も得ることなく

君の笑顔は他の誰よりも素敵だ
ああ、君が一番さ
そう、俺はすべて見て来たんだ
君が想像できないくらいの
情熱的な言葉を言ってあげよう
もしここにいてくれるのなら
ああ、どうかここにいてくれよ

君は早起きだったよね
でも涙を流さずに去って行くなんて
考えもしなかった
ただ君を愛せれば良かったのに
願いをかけよう
思いがけなく君がここに戻って来てくれて喜ぶ俺を
ああ、やっと君が戻って来てくれて嬉しいってことになるように

 ポール・マッカートニーが得意とする少しメランコリックで哀愁を帯びたメロディ。悲しくも切ない失恋の歌ですが、主人公の男性は彼女を束縛し過ぎているのではないでしょうか。これでは彼女に見切りをつけられても当然かもしれません。また、ひょっとすれば最初から男性のたんなる片思いで、妄想の中の出来事だったとも受け取れます。いずれにしてもただ強引に歯の浮くような台詞や美辞麗句を並び立てても駄目で、相手を思いやる気持ちが大切なことは言うまでもありません。
 このようにシンプルながらもドロドロとした様相の窺える歌詞ですが、あまり情感を込めない淡々としたポールの歌唱のせいか、嫌みのない印象を受けました。ポールとフィル・ラモーンによる共同作業のたまものでしょうか。最後の溜息に何とも言えない男のペーソスを覚えます。

 フィル・ラモーンさんはポールのアルバム『Ram』(1971年発表)にエンジニアのひとりとして参画。1985年にはポールがリリースしたシングル「Spies Like Us」(ジョン・ランディス監督による同名映画の主題歌。ダン・エイクロイド、チャビー・チェイスらが出演)でポール、ヒュー・パジャムとともに共同プロデューサーとして名を連ねていました。その後もポールのアルバム制作のために何度かレコーディング・セッションを行うものの結局1枚の作品にまとめられることなく、録音された楽曲は1986年8月に録音されたこの「Loveliest Thing」同様、CDシングルの中の1曲として分散されて陽の目を見るという状況に至ります。
 
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Paul Simon - 50 Ways To Leave Your Lover

 2013年3月30日、音楽プロデューサーの重鎮であるフィル・ラモーンさんが心臓手術後の合併症のため、ニューヨークの病院で逝去されました。享年79歳。
 ラモーンさんは南アフリカ出身。3歳でヴァイオリンを始め、10歳の時にはエリザベス女王の御前で演奏する神童ぶりを発揮。1940年代の終わりにジュリアード音楽院へ入学するために渡米し、1959年にはニューヨークで「A&R」というレコーディング・スタジオを設立。革新的な技術を積極的に用いることでレコーディング・エンジニア、音楽プロデューサーとしての地位を確立して行きました。

 エンジニアとして参加した『Getz/Gilberto』(1964年発表)で1965年のグラミー賞最優秀録音賞を獲得したのを皮切りに、グラミー賞にはこれまで33回ノミネートされ、14回授賞。プロデューサーとしてはポール・サイモンの『Still Crazy After All These Years』(1975年)で、1976年の最優秀アルバム、ビリー・ジョエルの「Just The Way You Are」(1977)が1979年の最優秀レコード、『52nd Street』(1978)が1980年の最優秀アルバム、レイ・チャールズの『Genius Loves Company』(2004)が2004年の最優秀アルバムに輝くなどの実績を残しています。

 今回はグラミー賞授賞作であるポール・サイモンの『Still Crazy After These Years』から「50 Ways To Leave Your Lover」を取り上げます。

時の流れに時の流れに
(2013/03/06)
ポール・サイモン

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50 WAYS TO LEAVE YOUR LOVER
あんたを悩ませているものはその頭の中にあるのよ、と彼女は言った
論理的に捉えるのなら答えは簡単
解放されたいともがいてるあんたに手を貸したいわ
恋人と別れる方法なんて50通りもあるんだから

本当はおせっかいなんて私のガラじゃない
そのうえ、私の助言であんたが迷ったり誤解したら困るのよ
でもねぇ、もう一度言うわよ、乱暴な言い方を承知でね
恋人と別れる方法なんて50通りもあるんだから
50通りもね

背後からそっと抜け出しゃいいのよ、ジャック
新たな段取りを立てなさい、スタン
遠慮なんてしなくていいの、ロイ
あんた自身が自由になりなさいよ
バスに飛び乗んなさい、ガス
くどくど話し合う必要なんてないの
部屋の鍵なんて捨てちまいなさい、リー
そうすれば、自由になれるのよ

彼女は言った、私はとても悲しいの
そんなに痛みを抱えたあんたを見るのが
もう一度あんたが微笑んでくれるように
私に何か出来ることがあればと望んでいるのよ
俺は言った、君の気持ちに感謝するよ、だから説明してくれないか
その50通りの方法やらについて

彼女が言うには、今夜ふたりで寝ながら考えるなんてどうかしら
そして朝になれば明るい光が見え始めると確信してるのよ、なんてね
それから彼女は俺にキスをし、たぶん彼女の言っていることは正しいのだと悟った
恋人と別れる方法なんて50通りもあるんだ
50通りもね

 シングル・カットされて全米1位を獲得した「50 Ways To Leave Your Lover」(邦題:恋人と別れる50の方法)。タイトルの妙とさりげないメロディーに感傷的になってしまいます。印象的なドラムはスティーヴ・ガッド。ギターはジョン・トロピアと先日(3月28日)に亡くなったヒュー・マクラッケンが担当し、ブルージーな雰囲気の醸成に一役買っていました。フィービー・スノウやパティ・オースティンが参加したコーラス部分は息子のハーバーが4歳の頃に一緒に遊んだ同韻語のゲームに由来しているとか。まさか息子にこのままの内容で教え込んだわけではないでしょうが、ポール・サイモン一流の韻を踏んだユーモアのある歌詞へとまとめあげています。

 1970年代後半、「〜する**通りの方法」、「〜する方法は何通りもある」といった感じのキャッチフレーズが書かれた広告をよく目にしたものです。それぐらいインパクトがあり、刺激的な響きのある言葉なのでしょう。しかし、歌の中に50通りも方法が示されているわけではありません。帰するところこの女友達は二人でベッドをともにして考えようと提案。主人公の男性もすんなり受け入れてしまいます。女もドライで人生の酸いも甘いも知り尽くした雰囲気を醸し出していますが、こうやって次から次へと付き合う女を替えていく男心も浅はかそのもの。こんな男の毒牙に掛かって傷つく女性が一番不幸なのかもしれませんね。

 スティーヴ・ガッドらスタッフの面々をバックに配した1980年のフィラデルフィア公演の映像のようです。


 2000年のライヴ映像です。 


 こちらは2011年7月1日にロンドンで行われた ”iTunes Festival ” の映像のようです。年代を追ってポール・サイモンのライヴ・パフォーマンスを観ていると、まさに「時の流れに」を感じてしまいました。