好きな音楽のことについて語りたいと思います。

The Beatles - You Like Me Too Much

 今回はジョージ・ハリスンがビートルズ在籍時代に発表した曲、「You Like Me Too Much」を取り上げることにしました。秋の夜長が感傷的な方向へ誘うのか、満を持して吹くかのような北風が肌を刺すせいなのか、妙に感傷的になり、心の中にしかいない人のことを思い浮かべてしまう今日この頃です。

ヘルプ!ヘルプ!
(2009/09/09)
ザ・ビートルズ

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1. Help! (2009 - Remaster)
2. The Night Before (2009 - Remaster)
3. You've Got To Hide Your Love Away (2009 - Remaster)
4. I Need You (2009 - Remaster)
5. Another Girl (2009 - Remaster)
6. You're Going To Lose That Girl (2009 - Remaster)
7. Ticket To Ride (2009 - Remaster)
8. Act Naturally (2009 - Remaster)
9. It's Only Love (2009 - Remaster)
10. You Like Me Too Much (2009 - Remaster)
11. Tell Me What You See (2009 - Remaster)
12. I've Just Seen A Face (2009 - Remaster)
13. Yesterday (2009 - Remaster)
14. Dizzy Miss Lizzy (2009 - Remaster)



YOU LIKE ME TOO MUCH
今朝、君はここを飛び出して行ったけれど
夜には戻って来るはずさ
「私を優しく扱ってくれないと
もうこれきりっよ」なんて言いながらね

君が俺を捨てるなんてありえない
そうだろう
君は俺のことをすごく好きだし
俺も君が好きだから

前にも俺のもとを去ろうとしたけど
君にそんな度胸はない
俺を淋しくさせようとぷいと出て行く
君のすることはせいぜいそのくらいさ
 
本当に君が好き
信じてくれたら嬉しいよ
置き去りにされたら俺は後を追う
本来いるべきところに君を連れ戻すよ
君とサヨナラするなんて耐えられない
俺が悪かったと認めるよ

君を手放しやしない
わかるだろう
君は俺のことをすごく好きだし
俺も君が好きだから

 1965年8月6日にリリースされたアルバム、『HELP!』はキー・ボードがこれまでにも増して導入され、サウンドに厚みが加えられています。従来通りギターの音色はビートルズ・サウンドを形成するにあたって重要な役割を果たしていますが、鍵盤楽器を随所に取り入れたことでの新鮮な響きが印象的。この「You Like Me Too Much」ではポール・マッカートニーとプロデューサーのジョージ・マーティンが1台のグランド・ピアノで別々の音階を弾くイントロに始まり、ジョン・レノンがエレクトリック・ピアノで終始伴奏のリズムを刻んでいました。 

 ジョージがパティ・ボイドにプロポーズしたのは1965年12月。時期的には彼女のことを歌っていると思われます。歌詞の内容から察するに相思相愛の信頼関係が窺えるものの、ジョージの本音としては心配でたまらなかったのかもしれません。1960年代後半に一世を風靡したツィッギーに影響を与えたと言われる美人モデルのパティ。ジョン・レノンやミック・ジャガーやエリック・クラプトンも彼女に惹かれて口説き落とそうとしていたらしく、ジョージにすれば友人であっても油断禁物といったところだったのでしょう。でも、結局はお互いの浮気が災いして1974年に離婚する運命を辿ります。

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Ry Cooder - Mutt Romney Blues

 アメリカ大統領選挙は民主党現職のバラク・オバマ大統領が、共和党のミット・ロムニー候補(元マサチューセッツ州知事)を振り切り、再選を果たしました。景気と雇用が選挙の最大の争点となる中、経済再生には富裕層増税や福祉充実など「公平な社会」を訴えたオバマ氏が信任された結果となったようです。
 そこで、今回はライ・クーダーがロムニー氏を揶揄した「Mutt Romney Blues」をお題にしました。ライが2012年に発表したアルバム、『ELECTION SPECIAL』のオープニングを飾る曲です。

Election SpecialElection Special
(2012/08/27)
Ry Cooder

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1.Mutt Romney Blues
2.Brother Is Gone
3.The Wall Street Part Of Town
4.Guantanamo
5.Cold Cold Feeling
6.Going to Tampa
7.Kool-Aid
8.The 90 And The 9
9.Take Your Hands Off It


 
MUTT ROMNEY BLUES
ボスのミット・ロムニーはドライヴに出かけ
ハイウェイの傍らに車を止めると
屋根の上に俺を縛り付けた
ボスよ、俺はウー、ウー、ウーと喚き立てた
何かおかしくないかい、間違っているとしか思えないぜ
昼間はカンカン照りだし、夜は寒くてブルブル
この先どこに行くかなんて俺には分からねえ
哀れな飼い犬は怒りを抑えてついて行くだけさ

ボスは走って行くしかなかった、案の定
哀れな飼い犬の俺も乗って行くしかねえ
前でも後ろでもなく
綿袋のように屋根に積まれたまんま
不満をこらえよ、力を込めて
哀れな飼い犬は怒りを抑えてついて行くだけさ

狡猾なマサチューセッツのボスは俺を蔑ろにする
でもこの話を言いふらしたりしませんぜ
あなたの心の中には大きな計画や政策がおありなんでしょう
人々はこの飼い犬に行った酷いことなんて
信じようとしませんよ
俺は密告なんてしませんぜ
この屋根から降ろしてください
お願いしますよ、ボス、ウー、ウー、ウー

こんな旅の仕方は間違ってる、そうさ絶対に間違ってるさ
哀れな飼い犬は間違った旅の仕方をしてたんだ
前でも後ろでもなく
綿袋のように屋根に積まれたまんま
不満をこらえよ、力を込めて
哀れな飼い犬は怒りを抑えてついて行くだけさ

 この歌は1983年にロムニー家が休暇を過ごすため、マサチューセッツ州の自宅からカナダのオンタリオまで車で移動した際、ミット・ロムニー氏は愛犬シェイマスを車内でなく、ステーション・ワゴンに括り付けたケージの中に入れていたという逸話をもとに創作されたとのこと。ミット・ロムニーのミットをもじり、犬をマットと名付けていました。低所得者を相手にしないとの趣旨の発言をして物議を醸したロムニー氏ですが、彼に対して庶民の心情を理解できるのかといった疑問を呈したライ・クーダーによるロムニーへの人格攻撃の内容とも受け取れます。

 自国の選挙ではないのでニュースや報道・情報番組で扱われたものしか目にしていないのですが、雇用と景気が争点になったとはいえ、オバマー、ロムニー両候補とも政策論争よりも相手を攻撃しながら、「私は頑張ります」を連呼していたような雰囲気が感じ取れました。人の不幸は蜜の味なんて言葉がありますが、四六時中悪口ばかり垂れ流されていては嫌悪感のほうが強くなって行くでしょう。
 そんな世相を反映してか、買い物に行く途中でラジオからひっきりなしに流れて来た両候補の選挙用CMを耳にしたアビゲイルという女の子が、「ブロンコ・バマ(バラク・オバマ)とミット・ロムニーばかりでもう嫌!」と半泣きになる映像が話題になりました。



 オバマ大統領は再選のスピーチで、「アメリカの皆さん、これまでの成果をもとに私たちはさらに前進し、新しい仕事や新しいチャンスのため、中間層がより安心できる毎日のため、さらに戦い続けることができると、私はそう信じています。建国の約束を守ることができると。一生懸命働く気持ちがあるならば、何者だろうと構わない。どこから来たのでも、外見がどうだろう、どこを愛していようと構わない。黒人だろうが白人だろうが、ヒスパニックだろうがアジア系だろうがアメリカ先住民だろうが構わない。若くても年寄りでも金持ちでも貧乏でも、五体満足でも障害があっても、ゲイでもストレートでも。やる気さえあれば、ここアメリカではなんとかなる」(gooニュースより引用)と語りました。
 また、アメリカ大統領選挙と同時に38州で6日、各種の住民投票が実施され、コロラド、ワシントン両州では嗜好用の乾燥大麻(マリワナ)合法化案が過半数の賛成を得て成立の見通し。さらに、オバマ大統領が支持を明言した同性婚の解禁案もメイン、メリーランド両州で投票が行われ、ともに成立が確実な状況。既に合法化されたマサチューセッツ、コネチカット、アイオワ、バーモント、ニューハンプシャー、ニューヨークの6州と首都ワシントンD.C.に次ぎ、今後もリベラル色の濃い東部や中西部では同性婚を認める傾向が高いとされています。しかし、保守的な南部では否決どころか住民投票に発展する可能性も薄いでしょう。

 今回の選挙はオバマ大統領が激戦と言われた州を次々と制して圧勝したとの報道がなされていますが、得票数では拮抗しており、アメリカ国民の思いを分断した結果と受け取って良いでしょう。大統領選挙のために両陣営とも巨額の資金を使ってネガティヴ・キャンペーンに励んだ間、アメリカは内政も外交も停滞ぎみの状況でした。
 オバマ大統領は「一生懸命働く気持ちがあるならば、何者だろうと構わない」と主張していますが、今回の選挙でリベラル対保守といったわかりやすい図式だけでなく、富裕層と貧しい人、あるいは中間層との格差、比較的若い層がオバマ支持で比較的中高年以上がロムニー支持といった世代間ギャップがあらためて浮き彫りになったような印象を受けます。様々な面で二極対立が深化する中、「Change」から「Move Forward」へキー・ワードを変えたオバマ大統領ですが、辛い道のりを前進しながら国家をリードして行くことがかなり困難なことになるのは間違いないでしょう。

 勝利の美酒に酔う間もなく、オバマ大統領には「財政の崖」(2000年代に始まり2012年末に失効する所得税などに対する大型減税と2011年にアメリカの債務上限が問題になったことによる2013年1月からの強制的な予算削減)や対中政策といった問題が待ち構えています。アメリカ経済の動向は他国への影響が強いのは言うまでもありませんが、中国の軍拡や南シナ海および尖閣諸島を「核心的利益」海洋進出は周辺のアジア諸国にとっての脅威であり、ことに日本との安全保障にも関係する事案。米中間の経済の結びつきは強く、中国はアメリカ国債の最大の保有国。外交・安保の重点をアジア・太平洋に集中する戦略に舵を切ったとされるオバマ大統領はどこまで中国に責任ある行動を迫り、どれだけ暴走を抑止することが出来るかが大きな課題でしょう。他にもイランの核問題、アフガニスタン撤退、シリア内戦、中東和平など問題が山積しています。また、議会も上院は民主党が多数を確保していていますが、下院は共和党が多数を占めていることで「ねじれ」が生じ、決められない政治が続くという見方があるとのこと。2期目のオバマ政権にとってはなんとも悩ましい状況が続くようです。

 さて、支持する政党が民主党であれ共和党であれ、ロック・ミュージシャンたちは祖国の分断についてどのように思っているのでしょうか。アメリカを取り巻く多くの問題に関してどのような見解や認識を持っているのでしょうか。言論・表現の自由が保障された民主主義国家では対立する相手を批判する権利も認められるもの。しかし、その場を盛り上げる中傷合戦や応援しているものへの支持を表すためのパフォーマンスで終わるとすれば味気なく、覚悟が感じ取れません。ライ・クーダーが音楽の力で現実の問題を指摘することに敬意を表しますが、その先にどれだけ視点が向けられているのかは少々疑問に思います。

Art Garfunkel - Hang On In

 近年の日本は秋の訪れが曖昧になっているような気がします。地球温暖化の影響でしょうか。それともたんなる気のせいでしょうか。夏の次が晩秋、そんな極端なことはありませんが、それでもこの季節になると哀愁を帯びた曲が似合います。そこで今回はアート・ガーファンクルの「Hang On In(北風のラストレター)」を取り上げることにしました。

シザーズ・カット~北風のラストレター(紙ジャケット仕様)シザーズ・カット~北風のラストレター(紙ジャケット仕様)
(2012/10/10)
アート・ガーファンクル

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1. Scissors Cut (Jimmy Webb)
2. A Heart In New York (Barnard Gallagher, Graham Lyle)
3. Up In The World (Clifford T. Ward)
4. Hang On In (Norman Sallitt)
5. So Easy To Begin (Jules Shear)
6. Can't Turn My Heart Away (John Jarvis/Eric Kaz)
7. French Waltz (Adam Mitchell)
8. The Romance (Eric Kaz)
9. In Cars (Jimmy Webb)
10. That's All I've Got To Say (Jimmy Webb)



HANG ON IN
君の周囲は土砂降りの雨模様
それで君は眠りに落ちるまで泣き続ける
気持ちがはっきりしない時
愛が人を傷つけるのだ

君は寂しく空しさを感じている
君が自分の心をどこかに追いやってしまったからさ
でも、泣くのは恥ずかしいことじゃない
大丈夫だよ

だけど頑張らなきゃ
ベイビー、強い気持ちを持てよ
愛はいつも道を開くものさ
駄目だよ、諦めちゃ
前を見続けるんだ
明日はもっと素晴らしい日になるだろう
しっかりしろよ

君は理由を探し続けている
人気のない廊下を歩きながら
電話がかかって来るのを待っている
でも、彼からのベルは鳴らないぜ
硝子のように割れてしまった心を
癒してくれるのは時間だけ
愛もまた、風のように通り過ぎていくものだから

だけど頑張らなきゃ
ベイビー、強い気持ちを持てよ
愛はいつも道を開くものさ
駄目だよ、諦めちゃ
前を見続けるんだ
明日はもっと素晴らしい日になるだろう
しっかりしろよ

君が彼を見る度に
辛い思いをするだろう
そしていつなのか、どこなのか分からないけれど
再び恋をすることもあるだろう

頑張れよ
ベイビー、強い気持ちで生きろ
愛はいつも道を開くものさ
駄目だよ、諦めちゃ
前に向かうんだ
明日はもっと素晴らしい日になるだろう
しっかりしろよ

 1981年にリリースされたアートのアルバム、『Scissors Cut』に収められていた「Hang On In」。珠玉のバラードが居並ぶ中、軽快なアップテンポのこの曲は異彩を放っていました。女友達を励ますような内容の歌ですが、アート自身に向けられているようにも受け取れます。というのはこのアルバムが、自ら命を絶ったアートの当時の恋人であったローリー・バードに捧げられており、収録された楽曲の一曲一曲が愛する人への想いを綴ったような印象がそこはかとなく伝わって来たように感じ取れたからでした。
 よく見なければわからないと思いますが、アルバム・ジャケットに写るアートの首元にバンド・エイドが貼られています。彼はファースト・ソロ・アルバムである『Angel Clear』(1973)でも「服装に無頓着な飾らない人柄」を演出したのか、肩の辺りが綻んだシャツを着た写真をジャケットに使用し、さらに『Fate For Breakfast』(1979)では6種類のアルバム・ジャケットを施して、「遊び感覚の表現」をしたのかと思わせる一面がありました。しかし、前述したようにこのアルバムはローリー・バードに捧げられたものであり、もう少しシリアスな意味合いが示されていると解釈できるでしょう。バンドエイドはアート自身の心の傷を象徴したものかもしれません。
 ちなみにローリー・バードは、ジェームズ・テイラー、デニス・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)、ウォーレン・オーツらが出演し、モンテ・ヘルマンが監督した映画、『Two-Line Black Two(断絶)』(1971年公開)にヒロイン役として起用された女優で、ウディ・アレン監督・主演の『Annie Hall』(1977年公開)にもアートの相方ポール・サイモンとともに顔を出していました。また、彼女は写真家としても活動しており、自身が出演したモンテ・ヘルマン監督作品、『Cockfighter』(1974年公開)のスティール写真の撮影、アートの『Watermark』(1977)やJ.D.サウザーの『You're Only Lonely』(1979)のアルバム・ジャケットなどを手掛けています。