好きな音楽のことについて語りたいと思います。

LOVE - She Comes In Colors

前回はザ・ローリング・ストーンズの「She's A Rainbow」を記事にしましたが、今回はこの曲に影響を与えたと思われる曲を取り上げることにします。その曲は「She Comes In Colors」。まさにタイトルは「She's A Rainbow」の冒頭の歌詞と酷似。LOVEのほうがストーンズよりも先に発表されており、盗作疑惑にまつわる論争が巻き起こったと聞きました。

Da Capo (Exed)Da Capo (Exed)
(2002/07/15)
Love、Arthur Lee 他

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1. Stephanie Knows Who
2. Orange Skies
3. Que Vida!
4. Seven and Seven Is
5. The Castle
6. She Comes In Colors
7. Revelation
8. Stephanie Knows Who
9. Orange Skies
10. Que Vida!
11. Seven and Seven Is
12. The Castle
13. She Comes In Colors
14. Revelation
15. Seven and Seven Is

LOVEは1965年にアーサー・リーを中心としてロサンゼルスで結成されました。アーサー・リーは1945年3月7日、テネシー州の生まれの黒人。彼が5歳の時に一家はロサンゼルスに移住し、その地で音楽に目覚めてギター、ハーモニカ、ピアノ、ドラムスなどあらゆる楽器を独学で身に付けたとのことです。
R&Bやジャズに影響を受けたアーサー・リーはハイ・スクール入学後、バンドを組んで本格的な音楽活動に乗り出し始めました。やがてレコードをリリースする機会に恵まれ、1963年にブッカー・T&MG's風のインストゥルメンタルを演奏するアーサー・リー&The LAG'sでシングル、翌64年にもロックン・ロール・バンド、ジ・アメリカンフォーを結成してシングルを発表するもののどちらも鳴かず飛ばず。どうすれば起死回生が出来るかと考えあぐねたアーサー・リーはやがてビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・キンクスなどのブリティッシュ・インベイジョンの波の衝撃性を感じながらも、それらに対抗するかのように登場した地元ロサンゼルスで人気を博しつつあったザ・バーズのフォーク・ロック・スタイルにも感銘を受け、オリジナリティの重要性を痛感していたのです。
1965年、アーサー・リーは新たにバンドを結成。彼のもとにハイスクール時代の同級生であるジョン・エコールズ(g)、ザ・バーズのローディを務めた経験のあるブライアン・マクリーン(g, vo)、ジョニー・フレッケンスタイン(b)、ドン・コンカ(ds)などが集結しました。
バンド名をグラス・ルーツと名付けた彼らはライヴ活動を開始。ABC-TVの番組『Shiveree』の制作担当者であるジェリー・ホプキンがマネージャーに付き、同年夏にエレクトラ・レコード初のロック・バンドとして契約に至ります。レコーディングの途中でベーシストがケン・フォーシィーに、ドラマーがアルバン・”スヌーピー”・ピステラに交替し、バンド名もダンヒル・レコードが売り出し中の同名のバンドが先に登録商標を取っていたために変更を余儀なくされるなどのアクシデントもありましたが、1966年3月にデビュー・アルバム『LOVE』をリリース。全米57位まで上昇し、シングル・カットされた「My Little Red Book」も52位を記録しました。

バート・バカラック/ハル・デヴィッド共作の「My Little Book」。ライヴ映像でご覧ください。


この曲は映画『What's New, Pussycat?』(1965年公開)の挿入歌でもありました。そちらのほうはマンフレッド・マンのヴァージョンが使われています。


幸先よいスタートを切ったLOVE。フォーク・ロックを基調としながらも独特の音楽性はむしろガレージ・サウンドを彷彿させ、個性派の登場を印象づけました。翌67年1月には今回紹介する「She Comes In Colors」が収録されたセカンド・アルバム『Da Capo』をリリース。新たにマイケル・スチュワート(ds)、ティジェイ・キャントレリィ(horns)を補充し、アルバン・”スヌーピー”・ピステラがキーボードに配置転換され7人組のラインナップとなっています。プロデューサーにドアーズを手掛けたポール・ロス・チャイルドが起用されたことによるものか、サウンドが洗練されて表現力も増し、フォーク・ロックのみならずラテン、ジャズ、クラシックなど様々な要素が垣間見えました。また、ローリング・ストーンズ風の音作りも試みられたようで、ポール・ロス・チャイルドはLOVEの面々にストーンズのレコーディング風景を見学させて参考にさせていたとのことです。
フルート、チェンバロ、サックスなどの楽器を導入して全体的にソフト・ロック的な雰囲気が漂っていますが、冒頭で言及したようにローリング・ストーンズの「She's A Rainbow」が収録された『Their Satanic Majesties Request』に共通するサイケデリックな要素も窺われました。これもフラワー・ムーブメント華やかなりし時代の傾向の賜物でしょうか。

曲調は「She's A Rainbow」よりも「Lady Jane」や「Ruby Tuesday」に似た優美な旋律を奏でる「She comes In Colors」。無難で好意的に解釈すれば、英米のロック・グループが音楽的に刺激し合って融合された成果と言えるのかもしれません。


SHE COMES IN COLORS
何かしようと心の中で思った
表情はすべてを物語る
俺にはおまえが考えていることが分かるんだ

ああ 俺の愛する人
彼女は華やかな色に包まれてやって来る
来ている服から
誰もが彼女とわかるはず

目に見えなかったら
俺に光はいらない
本当の俺が見えるとおまえは言う
俺のことを素晴らしいと思ったかい

俺がイギリスの街にいた時
雨がまっすぐに降ってきた
俺はあちこちとおまえを探し回った
俺の存在がなくなるまで

フルートの音色がフィーチャーされたラヴ・ソング、「Orange Skies」。


ラテン風味の「iQue Vida!」。


アルバムに先駆けて発売され、全米33位とまずまずのヒットを記録した「Seven And Seven Is」。アリス.クーパーがアルバム『Special forces』(1981年)、ザ・ラモーンズが『Acid Eaters』(1993年)で、Rushが『Feedback』(2004年)でそれぞれカヴァー・ヴァージョンを収録していました。


Rushのヴァージョンです。


アルバムは全米80位と前作と比べてやや後退しましたが、シングル「Seven And Seven Is」のヒットした余勢を駆って、1967年に『Forever Changes』を発表。しかし、評価は高かったものの全米154位止まりと商業的な成功を収められませんでした。アーサー・リーはメンバーがドラッグに溺れて活動に支障を来していたことを理由として、「おまえらたるんでるぞ」とばかりに全員を解雇。それ以降のラブはメンバー・チェンジを繰り返し、アーサー・リーのソロ・プロジェクトと化して行ったのです。また、1970年発表の『False Start』にゲスト参加したジミ・ヘンドリックスとバンドを組む話も囁かれたものの実現には至りませんでした。
その後のアーサー・リーは体調を崩したり、奇行に走るなどしてシーンから遠ざかっていた時期もありましたが、何度かオリジナル・メンバーを含むLOVEを再結成して活動を続けます。2003年にはイギリスのロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ盤、『The Forever Changes Concert』を発表。しかし、2006年8月3日、アーサー・リーは白血病でこの世を去りました。ちなみにオリジナル・メンバーでマリア・マッキーの異母兄であるブライアン・マクリーンとケン・フォーシィも2006年に他界しています。
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The Rolling Stones - She's A Rainbow

アップル社の共同創業者で会長のスティーブ・ジョブズさんが10月5日に逝去されました。パーソナル・コンピューターが自分にとって身近な存在になろうとしていた頃、斬新なデザインのiMacに衝撃を受け、かじりかけのリンゴのマークに親しみを覚えたものです。そこで、今回は以前iMacのコマーシャルに使われていたザ・ローリング・ストーンズの「She's A Rainbow 」を取り上げることにしました。

サタニック・マジェスティーズサタニック・マジェスティーズ
(2011/10/12)
ザ・ローリング・ストーンズ

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1. Sing This All Together
2. Citadel
3. In Another Land
4. 2000 Man
5. Sing This All Together (See What Happens)
6. She's A Rainbow
7. The Lantern
8. Gomper
9. 2000 Light Years From Home
10. On With The Show

1960年代の後半、世の中はカウンター・カルチャーが台頭し、フラワー・ムーブメントが一世を風靡、サイケデリック・ブームが巻き起こっていました。1967年6月にビートルズがサイケデリックな雰囲気に満ちたアルバム、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を発表。その衝撃が覚めやらぬうちにザ・ローリング・ストーンズもサイケデリックなムードを全面的に打ち出したアルバム『Their Satanic Majesties Request』を67年12月にリリースしたのです。
その『Their Satanic Majesties Request』からシングル・カットされて全米22位まで上昇した「She's A Rainbow」。ミック・ジャガーとキース・リチャーズの共作で、ピアノにニッキー・ホプキンスを迎え、後にベーシストとしてレッド・ツェペリンのメンバーとなるジョン・ポール・ジョーンズがストリングス・アレンジを担当していました。

一説によるとこの曲は当時ミックと恋人関係にあったマリアンヌ・フェイスフルのことを歌ったものとされています。恋は盲目と言いますが、マリアンヌ・フェイスフルの艶やかな魅力に包まれて彼女以外のものは何も目に入らないような様子が歌詞から伝わってきました。この時期のミックとマリアンヌは仲の良さをアピールするかの如く、ビートルズが出演した衛星放送による世界初の同時生中継番組「アワ・ワールド」(1967年6月25日放送)に二人揃って友情参加しています。



SHE'S A RAINBOW
彼女はどこにいても華やか
彼女が髪をとかす
その姿は虹のよう
どこにいても華やかに現れる
彼女は華やかな人

葵服を着ている彼女を見たことがあるかい?
目の前の青空のようさ
そして彼女の顔は帆のよう
とても綺麗で薄い白く小さな点
彼女ほどきれいな女性を見たことがあるかい?
彼女はどこにいても華やか
彼女が髪をとかす
その姿は虹のよう
どこにいても華やかに現れる
彼女は華やかな人

金色の服を前身に纏った彼女を見たことがあるかい?
いにしえの王女様みたい
彼女は周囲に色を放つ
洛陽のように
彼女ほどきれいな女性を見たことがあるかい?
彼女はどこにいても華やか
彼女が髪をとかす
その姿は虹のよう
どこにいても華やかに現れる
彼女は華やかな人


前述したように全米22位と大ヒットに至りませんでしたが、ローリング・ストーンズを代表する楽曲であることに疑問の余地はありません。ちなみにアルバムのほうはイギリスで第3位、アメリカでは2位を記録し、ゴールド・ディスクを獲得しています。

私がまだ子供だった頃、兄の部屋からこの「She's A Rainbow」が毎日のように聴こえてきたものです。オルゴールのような美しい音色のピアノ、一度耳にすると四六時中頭の中を駆け巡るような摩訶不思議な旋律、力強くも陰があり少々ミステリアスな歌唱。おそらくポップス/ロックでは初めてと思われる3Dジャケットも目を引きました。メンバーの前にあしらわれたお花畑の中にビートルズの4人の顔が写っているのを知ったのはもう少し先のこと。かの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のジャケットに "Welcome The Rolling Stones" と縫ったジャンパーを着用した人形が置かれていたことに対するお礼だとのことです。

1998年のアルゼンチンにおけるライヴ映像です。


スティーブ・ジョブズさんは「芸術と技術の交差点」となる製品を作ることを哲学としてiMac、iPod、iPhone、iPadと次々に革新的な新商品を開発し、家電やデジタルメディア業界を一変させました。また、ピクサー・アニメーション・スタジオを立ち上げ、CGアニメの普及にも一役買っています。また、彼は名言を幾つも残しており、スタンフォード大学の卒業式におけるスピーチの中の "Stay Hungry. Stay Foolish." (「常にハングリーであれ。常に愚かであれ」) という言葉に心を打たれた人も多いことでしょう。この言葉はビートルズやローリング・ストーンズを始めとしたロック・ミュージシャンの生き方や精神と重なるものがあると思われます。
スティーブ・ジョブズさんの訃報に際し、ミック・ジャガーは自身のTwitterアカウントで、 "RIP Steve Jobs" とジョブズさんへの敬意を表していました。なお、"RIP" とは "rest in peace" (安らかに眠れ)の意味です。

Rita Coolidge - The Lady's Not For Sale

拙ブログとリンクしていただいているPurple_Hazeさんが、リタ・クーリッジの『Fall Into Spring』を記事にされていました。今回は安易な選択ながらリタのサード・アルバム『The Lady's Not For Sale』を取り上げることにします。

ザ・レディース・ノット・フォー・セール(紙ジャケット仕様)ザ・レディース・ノット・フォー・セール(紙ジャケット仕様)
(2010/04/01)
リタ・クーリッジ

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1. MY CREW
2. FEVER
3. BIRD ON THE WIRE
4. I'LL BE YOUR BABY TONIGHT
5. A WOMAN LEFT LONELY
6. WHISKEY WHISKEY
7. EVERYBODY LOVES A WINNER
8. DONUT MAN
9. INSIDE OF ME
10. THE LADY'S NOT FOR SALE

お得な3in1。

Lady's Not for Sale/Fall Into SpriLady's Not for Sale/Fall Into Spri
(2010/04/06)
Rita Coolidge

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1972年にリリースされた『The Lady's Not For Sale』。翌年結婚することになるクリス・クリストファーソンの影響からか、前2作で窺われたスワンプ/ルーツ色に加えてカントリー風味がほどよく漂っています。
これまでのアルバムにも豪華なメンバーがリタのもとへ駆けつけていましたが、本作にはブッカー・T・ジョーンズ、マーク・ベノ、ジェリー・マッギー、カール・レイドル、リー・スクラー、ラス・カンケル、スニーキー・ピート、ジョン・セバスチャン、アル・クーパーなど強者が集結。気心の知れた仲間に囲まれて、時にゆったりと穏やかに、時に力強く情感を込めて選び抜かれた珠玉のナンバーを個性豊かに歌い上げていました。ジョー・コッカーのマッド・ドッグス&イングリッシュメンに参加し、エモーショナルな歌声で注目を集めたリタ・クーリッジですが、のびやかで優しく艶のある歌唱はさらに洗練され包容力と深みが増しています。

オープニング・ナンバーはブッカー・T&プリシラ・ジョーンズ夫妻の共作、「My Crew」。別れても再会する機会があることを信じる切ない想いが伝わってきます。
http://www.youtube.com/watch?v=kigc9vMpDps

リタの実姉であるプリシラ・ジョーンズのヴァージョンは1979年の『Flying』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=x4YdBfZScr0

シングル・カットされた「FEVER」。恋人に夢中になる様子を描いた歌ですが、クリス・クリストファーソンへの想いと重ね合わせて歌っているかのようです。


この曲はジョン・ダベンポート&エディ・クーリーの作で、リトル・ウィリー・ジョンがファースト・レコーディング(1956年の『Fever』に収録)のようですが、ペギー・リーの歌唱(1958年リリース)が有名。なお、ジョン・ダベンポートとはエルヴィス・プレスリーの「Don't Be Cruel」(1956年)、ジェリー・リー・ルイスの「Great Ball Fire」(1957年)、ジミー・ジョーンズの「Handy Man」(1959年リリースで、ジェームズ・テイラーやデル・シャノンのカヴァーでもお馴染み)などの作者であるオーティス・ブラックウェルの変名です。


レナード・コーエン作の「BIRD ON THE WIRE」。片思いに苦しむ孤独な男の心情を歌ったとされる歌ですが、女性を主人公にしてもその悲しさがありありと滲み出ています。コーエンの歌は女性シンガーがカヴァーしたほうが似合うのかもしれません。以前にレナード・コーエンの記事でこの「Bird On The Wire」を取り上げたことがあるので参照していただければ幸いです。


リンダ・ロンシュタットもアルバム、『Hand Sown...』(1969)で取り上げていたボブ・ディランのナンバー、「I'LL BE YOUR BABY TONIGHT」。一度でいいからリタのような美人に、「私が今夜あなたの恋人になってあげるわ」と言われたいものです。


ボブ・ディランのヴァージョンは1967年の『John Wesley Harding』に収録されていますが、YouTubeに彼の映像・音源がないので、今回はロバート・パーマーのヴァージョンを紹介します。1990年の『Don't Explain』に収録。


シングル・カットされた「 WHISKEY WHISKEY」。オリジナルはトム・ガントで、1971年の彼のアルバム『Yankee's Rebel Son』に収録されていました。クリス・クリストファーソンも1979年の『Shake Hands With The Devil』でレコーディング。また、1992年にリリースされたライヴ盤、『Live At The Philharmonic』(1974年録音)ではリタとクリスのデュエットが聴けます。





WHISKEY, WHISKEY
彼は雨が降る直前の陽光のよう
冷たい風が吹くこの静かな夜のよう

彼にはちょっぴり女のようなところがあり
いつになったら変わってくれるのか分からない
彼は私の一筋の希望であり
そして膨大な苦痛でもある

だからウイスキー、ウイスキー
私の旧友
またあんたの厄介になりにきたのさ
慈悲の癒し
どうか優しくしておくれ
私の心から
このやるせない気分を振り払ってほしいんだ

彼の微笑みでなんとか一日が始められるのよ
お天道様の光に照らされますように

やっと分かったの
冷たい冬の風で目が見えなくなっていたんだと
彼は目の奥に本音を隠していた
気がつかなかった私はなんてお馬鹿さんだったのかしら


マーク・ベノ作の「DONUT MAN」。人のために尽くした男の物語です。


クリス・クリストファーソンとキャロル・ビューが共作した表題曲、「The Lady's Not For Sale」。


THE LADY'S NOT FOR SALE
彼女は幼き頃より
レディーになることに憧れていた
でも緑青きところを
彼女は分かっていながら傷つけてしまった

彼女は羽を広げようとしながらも
決して大地を飛び立つことはなかった
16の時に彼女はおかれた境遇がとてもいやになって
覚醒して都会に出た

でも彼女は自分のやり方で
家に戻ろうとした
失敗する度に懸命に努力した
だから彼女に家庭を与えてあげて
さもなくばひとりにしておいてあげてよ
彼女は売り物じゃないんだから

彼女は自分の魂を見せることを恥ずかしがらないわ
歌ひとつのために魂を売ってしまうだろう
でもその奔放さは彼女がふしだらな女であることを意味しない
道を外しても大丈夫よ

ああ、だから彼女を放っておいてあげて
彼女はある男に会いたがっているの
素敵な人に巡り会わせてあげて
彼女は優しい家庭がほしいのよ

ああ、だから彼女に家庭を与えてあげて
さもなくばひとりにしておいてあげてよ
彼女は売り物じゃないんだから

クリス・クリストファーソンのヴァージョンはデビュー作、『Kristofferson』(1970年)がCD化された際にボーナス・トラックとして収録されました。


リタ・クーリッジとクリス・クリストファーソンはボブ・ディランも出演したサム・ペキンパー監督の映画、『Pat Garrett & Billy the Kid』(1973年)で共演し、結婚後はソロ活動と並行して『Full Moon』(1973年)、『Breakaway』(1974年)、『Natural Act』(1979年)といったデュエット・アルバムを発表。仲睦まじいところを見せてくれていました。「デルタ・レディ」と呼ばれ、情感溢れるヴォーカルとアーシーなサウンドを展開していたリタ・クーリッジですが、徐々にAOR路線に転じ、1977年には「Higher And Highe」(全米2位)、「We're All Alone」(全米7位)などのヒットを連発させました。一方クリスは俳優として個性豊かな渋みのある演技で脚光を浴び、マーティン・スコセッシ監督の『Alice Doesn't Live Here Anymore 』(1974年)、バーブラ・ストライザンドと共演した『A Star Is Born』 (1976年)、三島由紀夫原作の『The Sailor Who Fell from Grace with the Sea』 (1976年)、サム・ペキンパー監督のアクション映画『Convoy』 (1978年)、マイケル・チミノ監督の問題作『Heaven's Gate』 (1980年)などに次々と主演級で出演して行きます。しかし、成功の代償が大きかったのか、1980年頃にクリスとリタは離婚。クリスのアルコール依存症が原因とされていますが、突然舞い込んだ栄光のおかげで日々の生活が急変し、二人の関係にすきま風が吹き始めたことは想像に難くありません。
この『The Lady's Not For Sale』からは当時の私生活の充実が反映されているのか、おおらかでリラックスした印象が伝わってきます。ともあれリタとクリスの共同作業の原点が示されているように思われ、興味深い一枚でした。