好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Wilson Brothers - ANOTHER NIGHT

早くも秋雨前線が南下し、猛暑を追いやってしまったようですが、京都では蒸し暑い日が続いております。涼しくなるのは結構なことですが、過ぎ行く夏に寂しさを覚えざるを得ません。そんな夏の終わりには少しばかり物悲しさが漂うアルバムで癒されたいと思います。今回はウィルソン・ブラザーズが1979年に唯一残した『Another Night』を取り上げることにしました。

アナザー・ナイトアナザー・ナイト
(2006/07/26)
ウィルソン・ブラザーズ

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1. Feeling Like We're Strangers Again
2. Another Night
3. Thanking Heaven
4. Shadows
5. Just Like A Lover Knows 
6. Lost And A Long Way From Home
7. Can We Still Be Friends
8. Ticket To My Heart
9. Take Me To Your Heaven
10. Like Yesterday

ミシガン州に生まれ、アーカンソー州で育ったウィルソン兄弟。兄のスティーヴは1941年、弟のケリーは1960年にこの世に生を受けました。二人の年の差は9歳。これだけ年の離れた兄弟デュオは稀な存在と言えるでしょう。
二人は早くからバンド活動を始め、1974年頃には曲作りも行うまでに成長。数々のバンドを渡り歩いた後、ナイトホークスというバンドに在籍していた時期にイングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーがウィルソン兄弟らのオリジナル曲、「If The World Ran Out Of Love Tonight」(1978年リリースの『Some Things Don't Come Easy』に収録)を取り上げました。この曲はカントリー・チャートでトップ10入り。ヒットがきっかけとなってプロデューサーのカイル・レーニングに見初められ、ウィルソン兄弟は晴れてレコード・デビューのチャンスを掴むことになります。
レコーディングはナッシュヴィルで行われ、エリアコード・615のケネス・バトリー(ドラムス)を始めとする腕利きミュージシャンがサポート。後にロサンゼルスでオーヴァー・ダビングが施され、表題曲となる「Another Might」以外はTOTOのスティーヴ・ルカサーがギターで参加し、情感を込めた演奏で場を盛り上げています。また、リー・リトナー&ジェントル・ソウツのサックス奏者、アーニー・ワッツも艶のある印象的な音色で花を添えてくれました。
アメリカ南部で育ったウィルソン兄弟。そのことが影響しているのか、洗練されたメロディアスなサウンドの中にもR&Bやカントリーの要素が隠し味のように配され、彼ら独特のAOR、ブルー・アイド・ソウル風の雰囲気を醸し出しています。兄弟自らアレンジをも手掛けた明るく爽やかながらも憂いのある音作りは音楽的な環境はもとより、持って生まれた才能と下積み時代の経験から培われたセンスが発揮された賜物と言えるでしょう。

それではアルバムの中から何曲か紹介します。表題曲はホリーズのナンバー、「Another Night 」。


ホリーズのオリジナル・ヴァージョンは1975発表の『Another Night』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=0cvxgxbxWW0

トッド・ラングレン作の名曲、「Can We Still Be Friends」。


トッドのヴァージョンは1978年発表のアルバム、『Hermit of Mink Hollow』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=NK1_7eKtkDg

ちょっぴりネッド・ドヒニーの曲調を連想させる、「Ticket To My Heart」。 恥ずかしいぐらいに恋する女性への想いが綴られた歌でした。ソウルフルなコーラスが火のついた心をさらに燃え上がらせているように聴こえます。


天使のような女性に恋する気持ちが描かれた、「Take Me To Your Heaven」。


こちらはスティーヴィー・ウッズのカヴァー・ヴァージョン。1981年の『Take Me To Your Heaven』に収録。彼はAOR/ブラック・コンテンポラリーのシンガーとして80年代に活躍した人です。
http://www.youtube.com/watch?v=T0xPZ2Y6_Ac

去って行った恋人と過ごした夏の日々を思い返す「Like Yesterday」。やはり、ひと夏の恋は成就しないほうが多いようですね。


LIKE YESTERDAY
あの夏を憶えているかい
夢中だった永遠の夏
海辺で過ごしたあの日々
なんて楽しかったんだろう
君は唯一の人
かけがえのない存在だった
でも二人が砂の中に残したものは
波に洗い流されてしまった
俺たちが過ごしたあの眩い時は
海の藻屑の如く消え失せてしまったようだ
昨日のように

恋に落ちるなんて不思議なことだと思わないか
気がついて振り返っても
すべてが終わってしまっていたのさ
嘆いてみても無駄なこと
否定することは出来ないけれど
君が俺にとって大切な人だと切に思っていた

もう君は遠い人
季節が巡っても
思い出だけは留まっている
それらはiいつか消えてしまうのだろうか
昨日のように

ベッドに横たわって君の顔を思い浮かべる
どうしてこんな風に終わってしまったのだろうか
君を取り戻すためなら
どんなことでもする

カイル・レーニングの人脈が功を奏し、ウィルソン・ブラザーズは新人アーティストとして恵まれたデビューを果たしましたが、セールス的には芳しい成果を上げることができませんでした。しかし、ジャズやソウルの要素を含む都会的でお洒落なテイストの音楽が好まれた1070年代末から1980年代初頭の日本。ご多分に漏れずウィルソン・ブラザーズも人気を博し、来日公演も行われました。
その頃まだ大学生だった私もウィルソン・ブラザーズをよく聴いていたものです。当時は綺羅星の如く次から次へとAOR系のアーティストが登場しましたが、その多くがシャンパンの泡のように消えてしまいました。と同時に、私自身の眩い時期が消滅していたことも悟ったのです。
時の経過とともにCDがレコードに取って代わり、ウィルソン・ブラザーズ唯一のアルバムもしまい込んだままの状態が続き、再びプレイヤーに盤をのせる機会がありませんでした。1999年に待望のCD化がなされ、懐かしさのあまり購入したもののあの時の輝きが感じられずじまい。思い出は色褪せたものと落胆しました。ところが幾つかの夏を重ね、CDの整理をしていた時にふと目に留まった『Another Night』。人生の光と影の中で、うなだれた様子で思い悩むような若者の姿が映し出されたアルバム・ジャケットを眺めていると昔の記憶が一瞬走馬灯のように駆け巡ったのです。
久々に聴いたウィルソン・ブラザーズ。そこからは新鮮な響きが伝わり、思い出が昨日のことのように甦ってきました。新たな感動といえば聞こえが良いのですが、人間の気分というものはその時々で変化し、どうしようもないものです。

男の兄弟は大人になると、口をきかないほど仲が悪くなるのが常だとよく言われます。確かにビージーズやエヴァリー・ブラザーズのように一時期関係が破綻した例が少なくありません。ウィルソン・ブラザーズがたった一枚の作品を残してシーンから消えて行ったのも、そんな事情があったのでしょうか。それともたんに売り上げ不振でレコード会社から解雇を告げられたことが原因なのでしょうか。
その後のウィルソン・ブラザーズの動向はつかめず、存在すら忘却の彼方。数年前にスティーヴの訃報を耳にしましたが、詳細は未確認。どなたか詳しい方がございましたら、お知らせいただけると幸いです。
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Robin Ward - Wonderful Summer

お盆を迎えて暑い日が続きます。そんな猛暑は可憐な歌声で癒されるのが一番。今回はロビン・ワードが1963年にリリースした「Wonderful Summer」で涼を取りたいと思います。

ワンダフル・サマーワンダフル・サマー
(1990/05/25)
ロビン・ワード

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1. WONDERFUL SUMMER
2. MOON RIVER
3. I COULD HAVE DANCED ALL NIGHT-
4. DREAM BOY
5. JOHNNY COME AND GET ME
6. WHY DON`T YOU BELIEVE ME
7. WINTER`S HERE
8. I WILL LOVE YOU
9. MY FOOLISH HEART
10. TEACH ME TONIGHT
11. FOR ALL WE KNOW
12. TODAY I FELL IN LOVE
13. WHERE THE BLUE OF THE NIGHT (Meets The Gold Of The Day)
14. BOBBY

ロビン・ワードことジャッキー・ワードは1941年に海軍に所属していた父親の勤務地ハワイに生まれ、ネブラスカで育ちました。彼女は8歳頃より姉妹とともに教会で歌い始め、"Horace Heidt & His Musical Knight" のバンド・リーダーとして知られるホレス・ハイト主宰のタレント・コンテストで優勝したのを機にロサンゼルスへ移住します。その週のヒット曲をレギュラー・シンガーが歌うという趣向のテレビの歌番組「Your Hit Parade」に13歳で出演。以降4年間レギュラーを務めました。番組降板後はセッション・シンガーに転じ、楽曲のデモ録音、女優の吹き替え、バック・アップ・ヴォーカルなどを生業とし、パット・ブーンの「Speedy Gonzales」(1962)やデイル・ワードの「A Letter From Sherry」を始め、ロネッツやダーレン・ラヴのレコーディングにもコーラスで参加。1965年に制作されたトニー・カーティス、ジャック・レモン主演のコメディ『The Great Race』の中でナタリー・ウッドが歌う主題歌「The Sweetheart Tree」(ヘンリー・マンシーニ作)はジャッキー・ワードの吹き替えでした。

パット・ブーンの「Speedy Gonzales」。


デイル・ワードの「A Letter From Sherry」。


「The Sweetheart Tree」。


そんな裏方の活動の中、作曲家でアレンジャーでもあるペリー・ボトキンJr.の要請で「Wonderful summer」のデモ録音を行ったところ、あまりにも出来が良かったのでジャッキー・ワード本人のソロとしてドット・レコードから発売する方向で話が進みます。1963年、ジャッキーは娘の名前を借りてロビン・ワードとしてソロ・デビュー。改名の理由はジャッキーよりロビンのほうがティーン・エイジャーには親しみやすく思われたからだとか。渡りに舟といっては失礼かもしれませんが、シングル「wonderful Summer」は全米14位のヒットを記録しました。



WONDERFUL SUMMER
私の生涯でいちばん素晴らしい夏を
過ごさせてくれてどうもありがとう
天国に昇る心地
あなたはこの世のすべて
私が恋に落ちていることは誰にも分かる

私の生涯でいちばん素晴らしい夏を
過ごさせてくれてどうもありがとう
私は決して忘れない
二人が出会ったあの夏の日のことを
あなたは恥ずかしがりやさんだったのに
私のハートを盗んでいった

手をつないで
砂浜をそぞろ歩き
それからあなたは私に口づけをした
私には分かった
生涯あなたのことを愛し続けるだろうと

私の生涯でいちばん素晴らしい夏を
過ごさせてくれてどうもありがとう
二人が別れなければならなくなった日は
心が引かされるほど辛かったけど
私の生涯でいちばん素晴らしい夏を
過ごさせてくれたことにいつまでも感謝するだろう

哀願するかのような愛くるしいロビン・ワードの歌声。赤い糸を感じつつも成就しなかった恋物語が、若き日の夏の体験に想いを馳せたり、何か素敵な出来事があったかのような束の間の錯覚に陥らせてくれます。歌に描かれたいじらしい女性像に思春期の少年たちは、「こんなガールフレンドがいればよいのに」、「こんな恋がしてみたい」と淡い理想を抱いたことでしょう。

ジャッキー・ワードがロビン・ワードとして活動していたのはほんの一年。別のキャラクターを演じたひと夏の思い出の如く彼女は再びセッション・シンガーに戻り、ジャッキー・ワードの名前でビリー・ヴォーン楽団、レイ・コニフ・シンガーズ、パーシー・フェイス・オーケストラなどのレコーディングやステージで活躍しました。ビリー・ヴォーン楽団在籍時は何度も来日していたとのことです。ジャッキー・ワードがロビン・ワードがであることが判明するのには暫しの時間がかかったようで、音楽評論家でプロデューサーでもある長門芳郎先生も二人が同一人物であることを確認できたのは1985年の来日時と国内盤LP/CDの解説に記されておりました。

私はリアルタイムでこの曲を聴いたわけではありません。1980年代の半ばに、「幻の名盤」としてコレクターズ・アイテムだった『Wonderful Summer』 が復刻されるという情報を耳にして、何となく興味が引かれたのが最初の出会いです。しかし、実際に本盤を手に入れたのは1990年のCD化の頃。そろそろ甘酸っぱい夢や感情とはおさらばしなければならない時期でした。

こちらもシングル・カットされましたが、ヒットとには至らなかった「Johnny Come And Get Me 」。ジョニー・ソマーズの「Johnny Get Angry」を連想させるタイトルです。


ビーチ・ボーイズの「In My Room」のアンサー・ソングとして有名な「In His Gar」(アルバム未収録)。1964年のリリースです。


最後にアルバムからもう一曲。オードリー・ヘプバーン主演の映画『Breakfast at Tiffany's』(1961年公開)の挿入歌としてお馴染みの「Moon River」で今回はお開きにします。画像はアルバム・ジャケットから。


なお、本来はロビン・ウォードと発音するのが正しいようですが、日本ではロビン・ワードという表記が一般的であるため「ワード」で統一しました。

Dave Mason - SPLIT COCONUT

台風が過ぎ去った後、少しばかりしのぎやすい日々が続いておりましたが、ここに来てようやく従来の夏が戻ってきたようです。そこで、今回は暑い夏にぴったりのジャケットが描かれたアルバムを取り上げることにしました。

スプリット・ココナッツ(紙ジャケット仕様)スプリット・ココナッツ(紙ジャケット仕様)
(2010/04/14)
デイヴ・メイスン

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1. Split Coconut
2. Crying, Waiting, Hoping
3. You Can Lose It
4. She's A Friend
5. Save Your Love
6. Give Me A Reason Why
7. Two Guitar Lovers
8. Sweet Music
9. Long Lost Friend

デイヴ・メイスンの『Split coconut』はCBS移籍第3弾として1975年にリリースされました。椰子の木の下でアロハ・シャツを着たメイスン。ギターを弾きながらくつろぐといった風情ですが、トロピカルな雰囲気が醸し出されたアルバム・ジャケットとは裏腹に情念の炎が燃やされ、傷つきやすい繊細さが演出されていました。

オープニングを飾るのはほぼインストゥルメンタルのファンキーなナンバー、「Split Coconut」。今回はライヴ・ヴァージョンをお聴きください。


デヴィッド・クロスビー&グラハム・ナッシュがコーラスで参加した「She's A Friend」。ウエスト・コースト・サウンド風の爽やかな曲調に仕上げられています。


ジム・クリューガーにギター・ソロを任せてヴォーカルに専念した「Give Me A Reason Why」。むせび泣くようなギターの音色に切ない歌声。子供から問いかけられた疑問に落ち着いて答える様子がよく表されています。


GIVE ME A REASON WHY
与える理由を教えて
奪う理由を教えて
愛する理由を教えて
ダディ、憎む理由を教えてよ
笑う理由を教えて
泣く理由を教えて
生きる理由を教えて
ダディ、どうしてなのか教えてほしい
お願いだから どうしてなのか理由を教えてよ

大きな青い瞳で私を見つめながら
説明に窮することを尋ねて来る
ダディ、神様って誰なの、何を考えてるの
いい質問だねって私は答えるだけ
お話ししてよ、でなければ歌を歌って
あまり短くしないように
長すぎるのも駄目だよ
正しいことと間違ったことはどう違うのか教えて
やがて、みんなわかるようになるさ
そのうち、すべてわかるようになる

銀色の鳥のように空を羽ばたき
破られた約束に涙を流しながらも
自分の夢を追い続ける
新しい世代の礎を築きながら
いつか現実となろう素晴らしいことを考える

子供から父親への質問と行った体裁を取っていますが、誰もが心に思う疑問や矛盾が示されているのは間違いないでしょう。他人に施しを与えたり、奪い取ったり。人を愛したり、憎んだり。人間は何のために生きているのかを考えると漠然とし、納得する答えを見出すのは容易いことではありません。正しいことと間違ったことは立場によって異なるものであり、人はごまかしながら生きているのが実情。人を殺めること、金品を強奪することは論外としても、欲望のままに他人の迷惑を顧みない行為などを自己の利益のために正当化するする人々も少なくないのです。しかし、そんな不条理で理不尽な現実社会の中で懸命に生き抜くのが、人間に課せられた宿命といえるかもしれません。

ブレイク前のマンハッタン・トランスファーがヴォーカル・サポートで参加している「Long Lost Friend」。アルバムを締めくくるように、デイヴ・メイスンの情感がこもったギター・ソロも堪能出来ます。


ほのぼのとしたアコースティックなナンバーとリズムを強調した楽曲が適宜に配され、充実したバンド・サウンドが表現されています。アルバム・ジャケットに似つかわしいレゲエのリズムをバックにトロピカルなムードを漂わせた「 Crying, Waiting, Hoping 」(バディ・ホリー作)やソウル色の濃い「Sweet Music」といった曲も収められ、ヴァラエティに富んだ印象も受け取れました。
ウエスト・コーストの乾いた風とイギリスの湿った大気がほどよく融合されたようなデイヴ・メイスンが織りなすサウンド。ギターのテクニックはもちろんのこと、魂のこもった味のあるヴォーカル、巧みな曲作りといった類い稀な才能でリスナーを決して飽きさせない魅力が溢れた一枚でした。
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