好きな音楽のことについて語りたいと思います。

The Lovin' Spoonful - HUMS OF THE LOVIN' SPOONFUL

暦の上では暑さが鎮まり、朝夕の冷気と涼風が感じ取れる処暑となりましたが、依然として猛暑の勢いは収まりません。すべてを投げ出してしまいたいところですが、怠りの心を持つと癖になるので気を引き締めて今回も記事を書くことにしました。暑苦しい文章ですが、最後までお付き合いのほど何卒宜しくお願い申し上げます。

Hums of the Lovin SpoonfulHums of the Lovin Spoonful
(2003/02/18)
Lovin' Spoonful

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1. Lovin' You
2. Bes' Friends
3. Voodoo In My Basement
4. Darlin' Companion
5. Henry Thomas
6. Full Measure
7. Rain On The Roof
8. Coconut Grove
9. Nashville Cats
10. 4 Eyes
11. Summer In The City
12. Darlin' Companion (John Sebastian Solo Demo)
13. Rain On The Roof (Instrumental Version)
14. 4 Eyes (Alternate Vocal/Extended Version)
15. Full Measure (Instrumental Version)
16. Voodoo In My Basement (Instrumental)
17. Darlin' Companion (Alternate Vocal/Alternate Mix)

今回の記事でご登場を願う方々はラヴィン・スプーンフルの皆さん。彼らが1966年に発表した『HUMS OF THE LOVIN' SPOONFUL』を取り上げます。

前作『Daydream』の成功で勢いに乗るラヴィン・スプーンフル。ウディ・アレン監督・主演の映画『What's Up Tiger, Lily?』(1966年公開)のサントラ担当に抜擢された後、早くも3作目のオリジナル・アルバム『Hums Of The Lovin' Spoonful』を発表することになります。
ラヴィン・スプーンフルはもともとブリティッシュ・インベイジョンの動きに迎合することなく、独自のアメリカン・ミュージックを作り出すことを目指したバンドでした。このサード・アルバムではフォーク、ブルース、カントリー、ジャグ・バンド・ミュージックなどの要素が増幅強調され、よりアメリカン・ルーツ・ミュージックの色合いが濃くなり、彼らならではの音楽性やグルーブ感を醸し出しています。収録曲はメンバーらとの共作を含めすべてジョン・セバスチャンのオリジナル作品で構成され、彼の書く詞にますます磨きがかかり、皮肉、風刺、心理描写などが巧みに表現されていました。

それではいつものようにYouTubeの音源・映像を使ってアルバムの収録曲を紹介します。まず、ジョン・セバスチャン作の「Bes' Friends(ベスト・フレンド)」。本作のジャケット写真を撮影した写真家のヘンリー・ディルツ(元MFQ)がクラリネットで参加。1920年代風のサウンド作りが試みられています。タイトルとは裏腹に「恋人同士が親友になれるなんて話は聴いたことがない」と人間関係に関する皮肉が込められていました。


1940年代から70年代に活躍したブルース・シンガー、ハウリン・ウルフへの共感を示したといわれるジョン・セバスチャン作のブルース・ナンバー「Voodoo In My Basement」。Voodooとはヴードゥー教のことで、カリブ海の島国ハイチやアメリカ南部で信仰されている民間信仰です。歌詞には猟奇的とまではいかないまでも少々怪しげな世界が描かれ、マリンバ、スティール・ギター、果てはゴミ箱までをも打楽器として使用し、不気味な雰囲気を漂わせていました。
http://www.youtube.com/watch?v=OSG1HN5huxo

打って変わって軽快なカントリー・ソング「Darlin' Companion」。ジョン・セバスチャンの作品です。


ジョニー・キャッシュ&ジューン・カーター・キャッシュ夫妻によるカヴァー。『At San Quentin』(1969)に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=X7aXTvJunAs&feature=related

ジョン・セバスチャン作の「Henry Thomas」。タイトルは1920年代に活躍したブルース・シンガー、ヘンリー・トーマスに因んでいますが、歌の内容はジョンの愛犬のことが歌われていました。ラヴィン・スプーンフルのデビュー・アルバム『Do You Believe In Magic』に収録されていた「Fishin' Blues」はヘンリー・トーマスが得意としていた曲で、彼へのオマージュから楽曲のタイトルにしたのでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=h_0oo29YPxo

ジョン・セバスチャンとスティーヴ・ブーンの共作、「Full Measure」。ドラムスのジョー・バトラーがリード・ヴォーカルを担当しています。
http://www.youtube.com/watch?v=Nace1xqUFDw

ジョン・セバスチャン作の「Rain On The Roof」。スティール・ギター、アイリッシュ・ハープがフィチャーされていますが、トラッドというより童謡的な味わいがあります。


TVショー出演時の映像のようです。
http://www.youtube.com/watch?v=cVdSLB1DsSE

ジョン・セバスチャンとザル・ヤノフスキー共作の「Coconut Grove」。冬になるとニューヨークからフロリダ州のココナッツ・グローヴに移り住むシンガー・ソング・ライターのフレッド・ニールに影響されて作ったものらしく、まるで「楽園」のような様子が歌詞の中に描かれていました。


1960年代に活躍したイギリスの女性シンガー、サンディ・ショウが『Reviewing the situation』(1969)で取り上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=7q-ybg3NSJs

ジョン・セバスチャンがサン・レコードのヒット曲やナッシュヴィルのギタリストに敬意を表して作った「Nashville Cats」。
http://www.youtube.com/watch?v=P4p7prURvIk

ジョン・セバスチャン作のハードなブルース・ナンバー「4 Eyes」。ザル・ヤノフスキーが弾くスライド・ギターが印象的。ジョンが少年時代に眼鏡を掛けた体験をもとにしたもので、自虐的な嘆きが歌われていました。
http://www.youtube.com/watch?v=vCeQ5W_9_1c

シングル・カットされて全米1位を獲得した「Summer In The City」。ジョン・セバスチャン、マーク・セバスチャン(ジョンの実弟)、スティーヴ・ブーンの共作です。


SUMMER IN THE CITY
ホットな街 都会の夏
首の後ろが汚れて砂っぽくなっている
ぐったりしちまうぜ がっかりだね
都会には日陰などありゃしない
辺りを見回せば 人々は半分死んだも同然
歩道を歩けば、マッチの先より熱い

でも夜になりゃそこは別世界
外に出て女をナンパするのさ
さあ 一晩中踊ろうぜ
暑くたって平気なもんさ

ベイビー、残念だよな
昼間も夜のようになりゃいいんだがな
夏、都会の夏
夏、都会の夏

クールな街 都会の夕方
粋に装い、綺麗に着飾り
クールなオス猫が可愛い子猫を求めて
街の隅々を探しまくる
バス停のように息を切らして
階段を駆け上り、屋上でおまえに会うのさ

でも夜になりゃそこは別世界
外に出て女をナンパするのさ
さあ 一晩中踊ろうぜ
暑くたって平気なもんさ

上記の対訳で意味不明の箇所があります。インターネットで検索した歌詞では"Till I'm wheezing like a bus stop"と記されているのですが、直訳すると「バス停のように息を切らすまで」としか訳せません。この "like" の意味は何でしょうか。エンジンが掛かったままバス停に止まっているバスなのかなとも考えてみたのですが、それでは訳し過ぎになる恐れもあります。この件について詳しい方のご教示があれば幸いです。

TVショー出演時の映像のようです。
http://www.youtube.com/watch?v=zWXcjYNZais

ジョー・コッカーによる熱唱カヴァーは1994年リリースの『Have A Little Face』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=s6UJPq2VfAI

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Claudine Longet - THE LOOK OF LOVE

京都は連日体温並みの気温の日々が続いております。こんな状況では暑苦しい音楽を聴くのをやめ、涼しげな歌声と音で癒されるのが一番でしょう。

恋の面影恋の面影
(2002/02/06)
クロディーヌ・ロンジェ

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1. The Look Of Love
2. Man In A Raincoat
3. Think Of Rain
4. How Insensitive
5. Manha de Carnaval
6. I Love How You Love Me
7. Creators Of Rain
8. When I'm Sixty-Four
9. Good Day Sunshine
10. The End Of The World

さて、ご登場を願う方はクロディーヌ・ロンジェ。彼女が1967年に発表した『THE LOOK OF LOVE』を今回のお題としました。暑い夏には彼女のウィスパリング・ヴォイスで涼を取るのが打ってつけです。

前回の記事で取り上げたクリス・モンテス同様、トミー・リプーマがプロデュース、ニック・デカロがアレンジを担当。クロディーヌ・ロンジェにとってA&Mからの3枚目となるこのアルバムもこれまでの2枚と同じく、フレンチ・ポップスとボサ・ノヴァが見事に融合されたA&M風ソフト・ロックを踏襲したアルバムでした。

それではYouTubeの画像・音源を使って全曲を紹介して行きましょう。映画『007カジノロワイヤル』(1967年公開)の主題歌としてお馴染みの「The Look Of Love(恋の面影)」。バート・バカラック、ハル・デイヴィッドの共作です。映画ではダスティ・スプリングフィールドが歌っていました。クロディーヌ・ロンジェのヴァージョンはストリングスのアレンジとブラシでリズムを刻むパーカッションの音色が印象的です。


当時の夫だったアンディ・ウィリアムスとの共演映像です。女優でもあるクロディーヌ・ロンジェの魅力が溢れる演出が窺えました。
http://www.youtube.com/watch?v=Ezd9nUACnLw

ダスティ・スプリングフィールドのヴァージョンです。1967年リリースのサントラ『Casino Royale』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=NNQUxxiwRvc

ワーウィック・ウェブスター作の「Man In A Raincoat」。控えめなブラス・セクションが効果的に使われています。


ファースト・レコーディングはプリシラ・ライトによるヴァージョンです。1955年に全米18位を記録。
http://www.youtube.com/watch?v=alyK8SgUTCc&feature=related

クロディーヌ・ロンジェのアンニュイな魅力が漂う「Think Of Rain」。


アントニオ・カルロス・ジョビン作曲のボサ・ノヴァ、「How Insensitive」。ストリングスとパーカッシヴなリズムが、流れるような雰囲気を醸し出していました。


この曲を取り上げているアーティストは枚挙に暇がありませんが、今回はジョビンとスティングの共演を宜しければお聴きください。1996年にリリースされた『Red Hot + Rio:Pure Listeng Pleasure』に収録。このアルバムはエイズ基金の創設者へのトリビュート・アルバムで、アストラッド・ジルベルト、ジョージ・マイケル、坂本龍一など錚々たるメンバーによるブラジリアン・ポップスのカヴァー集でした。
http://www.youtube.com/watch?v=wseEgn6PM8Q&feature=related

アントニア・マリア作詞、ルイス・ボンファ作曲の「Manha de Carnaval」。映画『Orpheu Negro(黒いオルフェ)』(1955)の挿入歌として知られる曲です。カーニヴァルを思わせる情熱的なオープニングと抑制されたクロディーヌの歌声との対比が興味深く、エンディングには再びエキサイティングな演出がなされていました。こうしたドラマティックな展開は女優でもある彼女にとって相応しいと思われます。


この曲も数多くのアーティストがレコーディングしていますが、以前アストラッド・ジルベルトのヴァージョンを紹介したことがあるので今回はジョーン・バエズのヴァージョンをアップしておきます。1963年リリースの『Joan Baez In Concert, Part 2』などに収録。
http://www.youtube.com/watch?v=Cd_1YLh0aFA

バリー・マン、ラリー・コルバー共作の「I Love How You Love Me」。クロディーヌの品の良い歌声とセリフが心に優しく響きます。


フィル・スペクターがプロデュースしたパリス・シスターズのヴァージョンが1961年に全米5位のヒットを記録していますが、今回はボビー・ヴィントンが68年にリリースしたヴァージョンと聴き比べてくだされば幸いです。
http://www.youtube.com/watch?v=-KgzoheDZ9Q

スモーキー作の「Creators Of Rain」。フォーク・テイストが漂うバラード曲です。


オリジナルはフォーク・デュオのスモーキー&ヒズ・シスター。1967年リリースの『Smokey And His Sister』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=RR7uJA8QZBo

ビートルズ・ナンバー「When I'm Sixty-Four」。ジョン・レノン、ポール・マッカートニー共作となっていますが、実際はポールが父親に敬意を払って作った曲とのこと。コミカルな原曲のイメージに忠実ながらもクロディーヌの持つしなやかさが表現されていました。アコーディオンの音色が印象的。彼女のような美しい人なら、64歳になっても大歓迎という御仁が多いのではないでしょうか。


ビートルズのオリジナル・ヴァージョンは1967年リリースの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=i3HAJ4DjMhY

再びビートルズ・ナンバー「Good Day Sunshine」。この曲もレノン=マッカートニー共作とクレジットされていますが、実際は殆どポールのアイデアによって作られた曲で、彼がソロになってもレコーディングしているお気に入りの一曲です。
クロディーヌ・ロンジェのヴァージョンはビートルズのオリジナルに忠実ながらもホーンの音色を始めとして全体的によりユーモラスな仕上がりになっていました。


ビートルズのオリジナル・ヴァージョンは1966年リリースの『Revolver』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=dHTPdbpogRE


シルヴァー・ディー作詞、アーサー・ケント作曲の「The End Of The World」。スキーター・デイヴィスが歌い、全米2位の大ヒットとなった曲です。切ないストーリーが描かれた作品ですが、クロディーヌ・ロンジェの歌唱はさらりとしながらも何か胸をえぐられるものがあります。


THE END OF THE WORLD
何故、太陽は輝き続けるの?
何故、波は岸に打ち寄せるの?
これがこの世の終わりだってことを誰も知らないのね?
あなたが私を愛してくれないから世界の終わりだってことを

何故、鳥は歌い続けるの?
何故、星は天上で光を放つの?
これがこの世の終わりだってことを誰も知らないのね?
あなたの愛を失った時に世界が終わったのよ

毎朝目覚めて、ふと思う
どうして何も変わらないのか
分からない 分からないのよ
どうしたらいつものような暮らしが続いて行くのか

何故、鼓動が私の胸を打ち続けるの?
何故、私の瞳から涙があふれるの?
これがこの世の終わりだってことを誰も知らないのね?
あなたから別れを告げられた時に世界は終わったのよ

スキーター・デイヴィスのヴァージョンは1963年発表の『The End Of The World」に収録。今回はライヴ映像でお楽しみください。
http://www.youtube.com/watch?v=Qgcy-V6YIuI

Chris Montez - TIME AFTER TIME

残暑厳しきおり、今回はボサ・ノヴァ風のサウンドで涼むことにしました。ご登場を願う方はクリス・モンテス。女性とさえ思わせてしまうような繊細なファルセット・ヴォイスで1960年代に活躍したシンガーです。
取り上げるお題は『TIME AFTER TIME』。彼が1966年にリリースしたアルバムです。

タイム・アフター・タイムタイム・アフター・タイム
(2002/02/06)
クリス・モンテス

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1. Time After Time
2. I Wish You Love
3. Sunny
4. Keep Talkin'
5. Our Day Will Come
6. Girl from Ipanema
7. Lil' Red Riding Hood
8. Goin' Out of My Head
9. What a Diff'rence a Day Made
10. Elena
11. Yesterday
12. Just Friends

クリス・モンテスは1944年(43年、46年説もあり)1月7日にカリフォルニア州ロサンゼルスで誕生しました。兄や姉の影響で早くから音楽に興味を持ち始め、ロックン・ロールやR&Bがお気に入りだったとのこと。
高校在学中に地元のマイナー・レーベルでレコーディングを行うほどの実力を身につけていたクリス・モンテス。卒業後は自身もヒット曲を持つソング・ライター/プロデューサーのジミー・リーの目に留まり、彼が興したモノグラム・レコードと契約に至ります。
1962年、クリス・モンテスは「All You Had To Do (Was Tell Me)」でデビュー。続くセカンド・シングル「Let's Dance」は全米が4位まで上昇するヒットとなります。しかし、その後は鳴かず飛ばず。翌63年にはファースト・アルバム『Let's Dance』もリリースされましたが、芳しい売り上げを残せませんでした。
64年になるとジミー・リーが本業のアーティスト活動に専念するためモノグラム・レコードを閉鎖。クリスはレコードを発表する機会を失います。



捨てる神あれば拾う神あり。ステージを中心として腐らず地道に歌っていたおかげで、クリスはティファナ・ブラスのリーダーでA&Mレコードの設立者の一人でもあるハーブ・アルパートに見初められて契約。ロック/ポップス・シーンが多様化し始めようとしていた時代、アルパートの勧めでロックン・ロール・シンガーから独特のファルセット・ヴォイスを生かした都会的で洗練された歌手へと変貌を遂げて行きました。

今回紹介する『TIME AFTER TIME』はクリス・モンテスの通算3枚目。A&Mでは移籍第一弾の『The More I See You』(1966)に続く2枚目にあたるアルバムです。プロデュースはトミー・リプーマ。アレンジはニック・デカロ。A&M流のソフト・ロック・サウンドを作り上げたコンビによって制作されました。

アルバムのオープニング・ナンバーは「Time After Time」。もともとはフランク・シナトラ主演の映画『It Happened In Brooklyn』(1947年公開)のためにサミー・カーンとジュール・スタインによって書き下ろされた曲です。クリス・モンテスのヴァージョンはシングル・カットされて全米36位を記録しました。


こちらがフランク・シナトラのヴァージョン。クリスの明るく軽快な歌声も良いのですが、御大ならではのしっとりとした雰囲気は格別のものです。
http://www.youtube.com/watch?v=hP0jDMffWLg

1966年、ボビー・ヘブによって全米2位のヒットとなった「Sunny」。クリス・モンテスは彼のオリジナルを踏襲しながらも自分の持ち味を発揮していました。


SUNNY
サニー 昨日までの私の人生は土砂降りの雨の中
サニー 君は私に微笑みかけて痛みを癒してくれた
暗闇の日々に光が射し 希望の日々が訪れる
サニー 純真で輝ける人
サニー 誠実な人 愛している

サニー 太陽のブーケをありがとう
サニー 私の行く道を導いてくれて感謝する
君はすべてを与えてくれた
私は今、10フィート(約3メートル)も成長したような気がする
サニー 誠実な人 愛している

サニー 君の微笑みに感謝する
サニー 優雅に差し込むほのかな光をありがとう
君は炎のきらめき
君はすべての望みの喜び
サニー 誠実な人 愛している

こちらはボビー・ヘブのオリジナル・ヴァージョン。本来は強盗に襲われてこの世を去った兄に捧げられた曲だそうです。そうなると歌詞のニュアンスも多少異なった解釈をしなければなりませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=IbUl_E-R91Q

なお、ボビー・ヘブのオリジナルからクリス・モンテスのヴァージョンではこの Verse がカットされていました。
サニー この世の真実を理解させてくれてありがとう
サニー 物事の始めから終わりまでを教えてくれてありがとう
私の人生は引き裂かれ 風に吹かれた砂粒のようだった
君の手を握りしめた時、ゆるぎない岩となった

ボサ・ノヴァのスタンダードとしてあまりにも有名な「Girl from Ipanema」。今回はライヴ映像でご覧ください。


アントニオ・カルロス・ジョビン(ピアノ)、スタン・ゲッツ(テナー・サックス)、ジョアン・ジルベルト(ギター、ヴォーカル)、アストラッド・ジルベルト(ヴォーカル)らの共演によるヴァージョンです。アルバム『Getz/Gilberto』(1963)に収録。今回はアストラッド・ジルベルトをフィーチャーしたライヴ映像でお楽しみください。
http://www.youtube.com/watch?v=UJkxFhFRFDA

リトル・アンソニー&ザ・インペリアルズで1964年に全米6位のヒットなった。「Goin' Out of My Head」。クリス・モンテスの歌唱は彼らの雰囲気を壊さず忠実に歌うように心掛けているようです。


こちらがインペリアルズのヴァージョン。
http://www.youtube.com/watch?v=bjRnw9pjvCQ

このアルバムの中でクリス・モンテス唯一のオリジナル「Elena」。A&Mではカヴァーが中心となりましたが、元来は作詞作曲の能力を持った人です。


何の説明もいらないビートルズのナンバー「Yesterday」。飾り気のないオーソドックスな歌唱ながらも全体的にバロック音楽を連想させるようなクラシカルで上品な雰囲気が漂います。


ビートルズのオリジナル・ヴァージョンと聴き比べてもらうのは野暮なので、若き日のマリアンヌ・フェイスフルのライヴ映像を宜しければご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=kOGWOsr33Ak

1970年代に入るとクリス・モンテスはパラマウント、CBSと渡り歩いたもののヒットに恵まれず、次第にシーンから遠ざかって行きました。アルバムも1983年にAYMレコードからリリースした『Chris Montez Cartas De Amor』以降は途絶えています。しかし、彼は今も現役続行中。マイペースで活動を続け、ステージに上がって歌っているようです。
1992年のライヴ・パフォーマンスです。宜しければご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=lHXrVmA6n6k

このアルバムには収録されていませんが、日本独自で1969年にヒットした「Nothing To Hide (愛の聖書)」を宜しければお聴きください。クリス・モンテス自身の作詞作曲で、『Watch What Happens』(1968)に収録。


最近では娘さんのほうがご活躍といった印象が強い辺見マリさんのこの歌と酷似しておりました。当時の私は小学生だったので「経験」がありませんが、世の男性方は彼女に悩殺されたとのことです。
http://www.youtube.com/watch?v=Htu_NMkRycc

Karla Bonoff - New World

依然として暑い夏が続いておりますので、今回も爽やかな女性の歌声で涼を取ることにしました。ご登場いただくのはカーラ・ボノフ。彼女が1988年に発表した『New World』をお題とします。

New WorldNew World
(2000/09/12)
Karla Bonoff

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1. How Long
2. New World
3. Tell Me Why
4. All My Life
5. Goodbye My Friend
6. Way Of The Heart
7. The Best Part Of You
8. Oh Mary
9. All Walk Alone
10. Still Be Getting Over You
11. Standing Right Next To Me

前作『Wild Heart Of The Young』で妖艶な大人の女性への転身を図ったカーラ・ボノフ。シングル・カットされた「Personally」は全米19位まで上昇するヒットとなりましたが、アルバム本体は49位と振るわず、CBSを満足させる結果を得られませんでした。その後は映画『Footloose』(1984)のサウンドトラック盤に「Somebody's Eyes」を提供したのみで、新作アルバムをリリースする機会に恵まれずCBSとの契約が打ち切られます。
SOMEBODY'S EYES


1988年、カーラはゴールド・キャッスル・レコードに移籍。6年ぶりのアルバムを制作するチャンスが回ってきました。ゴールド・キャッスルはマイナー・レーベルながらもジョーン・バエズ、ジュディ・コリンズ、ピーター、ポール&マリーらのベテランが所属。メジャーを離れてマイペースで活動するアーティストが集うといった風情を醸し出していたレーベルです。商業的に成功する楽曲を作ることを強いられるメジャーとは違い、カーラにとってこのレーベルの傾向は歓迎するところだったことでしょう。
プロデューサーにはマーク・ゴールデンバーグを起用。彼は元クリトーンズのギタリストで、リンダ・ロンシュタットの『Mad Love』(1980)では演奏での参加のみならず楽曲をも提供したことで注目されました。その後はポインター・シスターズ「Automatic」(1983)、シカゴの「Along Comes A Woman」(1984)、オリヴィア・ニュートン・ジョンの「Soul Kiss」(1984)などのヒット曲も手掛け、現在はジャクソン・ブラウンの腹心として活躍しているアーティストです。
マーク・ゴールデンバーグのキャリアを考慮すると、少し斬新な人事かと思われるかもしれません。しかし、彼はカーラのかつての僚友であるウェンディ・ウォルドマンのバックを務めた経験もあり、むしろ自然な流れの中での起用と言えるでしょう。
このアルバムを初めて耳にしたとき、シンセサイザーやコンピューターが導入された音作りが耳に障る印象を受けたものです。しかし、これまでと変わらぬカーラのたおやかで清楚な雰囲気が滲み出た歌唱やシンプルな演奏が次第に馴染むようになり、却って新鮮な感触さえ伝わってきました。このことはマーク・ゴールデンバーグの手腕によってカーラに新たな息吹が吹き込まれ、彼女の魅力が十二分に引き出された結果と言えるのかもしれません。

それではアルバムの中から何曲か紹介します。オープニング・ナンバーはA. Williams & D. Williams作の「How Long」。前作同様、他人の作品を冒頭に持って来ていました。「いったいどれほどの間、見ていられるかしら/二人がここで一緒に居られるか」と恋人との心の溝が歌われ、カーラに良く似合った曲ではあります。


別れた男への恨みが漂うような「Tell Me Why」。


リンダ・ロンシュタットがバック・ヴォーカルで参加した映像。緊張感からか冒頭で歌詞をとちり、いかにもリンダとはやりにくそうな雰囲気が表されています。
http://www.youtube.com/watch?v=sGHZro2e16g

けなげな想いが込められた「All My Life」。でも、こんな具合に女性から言い寄られると、逃げ出してしまう男がいるかもしれません。


この曲は煙草のCMに使用されました。宜しければそのCM映像ご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=8I0g-F8PjiA&feature=related

ALL MY LIFE
私は本当にあなたの腕の中にいるの?
だって夢を見ているようだから
まるで時間が凍りついた感じ
私に見えるのはあなただけ
ねぇ
私はあなたのために自分の人生を過ごしてきたの
そして今あなたはここにいる
だから
私は残りの人生をあなたとともに過ごすわ
人生のすべてを

どうやって愛するのかなんて知らなかった
なんとかして分かるだろうと望んでいただけ
ああ 私にはほんの少しの天の助けが必要
天使を送り込んでほしいのよ

ねぇ
私はあなたのために自分の人生を過ごしてきたの
そして今あなたはここにいる
だから
私は残りの人生をあなたとともに過ごすわ
人生のすべてを

こんなに優しく愛を感じるなんて思わなかった
こんなに自分の気持ちを表せるなんて思わなかった
だけど今 私は心の内を素直にさらけだせるようになっている
そしてこの愛は終わらない
私には分かるの

ねぇ
私はあなたのために自分の人生を過ごしてきたの
そして今あなたはここにいる
だから
私は残りの人生をあなたとともに過ごすわ
人生のすべてを

亡くなった友への惜別の歌とも、別れた恋人への捨て台詞とも受け取れる「Goodbye My Friend」。


2009年のライヴ映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=Qn1qLvV_dUc

宜しければリンダ・ロンシュタットのヴァージョンもお聴きください。
http://www.youtube.com/watch?v=Gn1zpAWbC6Q

歌詞の内容が少々なまめかしい「Still Be Getting Over You」。


移籍第一弾となった「New World」ですが、売り上げは芳しくなく、結局ゴールド・キャッスルにはこれ一枚しか残せませんでした。次にカーラ・ボノフが新作をリリース出来たのは2007年のこと。自主制作のライヴ盤でした。
なお、Amazonなどで現在発売されているこのアルバムの2000年再発盤には 「Standing Right Next To Me」がボーナス・トラックとして収録されている模様。この曲は映画『The 8 Seconds』(1994年公開)のサウンドトラックに収められていた曲です。

STANDING RIGHT NEXT TO ME


Linda Ronstadt - HASTEN DOWN THE WIND

京都は猛暑の日々が続いております。せめてジャケットだけでも納涼感のあるものをと思い、今回はリンダ・ロンシュタットが1976年に発表した『HASTEN DOWN THE WIND』を取り上げることにしました。憂いの表情を浮かべて海辺に佇むリンダ。遠くを見つめる眼差しの先には誰がいるのでしょうか。

風にさらわれた恋(紙ジャケット)風にさらわれた恋(紙ジャケット)
(2010/07/07)
リンダ・ロンシュタット

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1. Lose Again
2. The Tattler
3. If He's Ever Near
4. That'll Be The Day
5. Lo Siento Mi Vida
6. Hasten Down The Wind
7. Rivers Of Babylon
8. Give One Heart
9. Try Me Again
10. Crazy
11. Down So Low
12. Someone To Lay Down Beside Me

このアルバムにはJ.D.サウザーの作品は一曲も収録されていません。前作『Prisoner In Disguise』のエンディングを飾った「Silver Blue」の歌詞を鑑みると、既に二人の関係に終止符が打たれていたと思われます。それ故、このアルバムにおけるリンダの歌いっぷりには悲しみを乗り越えた強さが窺われ、失った恋への傷心を歌い上げる様が聴く者の耳へリアルに響き渡りました。

ピート・アッシャーがプロデュースを担当し始めてからリンダの持ち味だったカントリー・ロックのテイストが影を潜めた印象があります。彼女の歌唱力や表現力を生かすには幅広いジャンルの音楽を取り入れるほうが良いとの判断だったのでしょう。アルバム『Heart Like A Wheel』で全米1位を獲得したことにより、アメリカを代表する女性シンガーとしてさらなる上のステージへ上り詰めるには必然だったとも言えます。

演奏面ではストーン・ポニーズ時代の僚友であるケニー・エドワーズのサポートが大きく、彼の人脈でアンドリュー・ゴールド、カーラ・ボノフ、ウェンディ・ウォルドマンらがレコーディングに参加。ことにカーラはバック・コーラスのみならず3曲もの楽曲を提供していました。この3曲はカーラのファースト・アルバム『KARLA BONOFF』に収録され、拙ブログでも以前に扱ったことがありますので参照していただければ幸いです。

リンダ・ロンシュタットは他のアーティストが書いた作品の良さを理解し、その魅力を十二分に引き出すことの出来るシンガーとして定評がありました。その巧さを妬まれるかのように、歌心はあっても創作能力のない単なる歌い手に過ぎないと陰口を叩かれることもあったでしょう。ところがこのアルバムで注目されることのひとつに、リンダ自身が曲作りに参加している点が上げられます。「Lo Siento Mi Vida」は彼女の父親ギルバートとケニー・エドワーズの共作曲。「Try Me Again」はアンドリュー・ゴールドとともに作った曲でした。こうした試みは、いつまでも失った恋に捕われることのないリンダの前向きな意欲が窺えました。

それではアルバムの中からYouTubeの画像・映像を使って何曲か紹介します。まず、オープニング・ナンバーの「Lose Again」。カーラ・ボノフの作品です。


LOSE AGAIN
私を助けて
私を自由にして
この辛く苦しい想いから
列車は行ってしまった
この線路の彼方まで
私をひとり残したままで

でも束縛された私を
救ってくれるものなどありはしない
私は心に決めた
今日こそお別れすることに
でもあなたは私の生き甲斐
正気の沙汰じゃないわよね
あなたを愛し、またひとりぼっちになる私

心の奥底に募る想いに
理性もなすがまま
あなたは私よりも分かっているのね
もう一日だけ絶えきれれば
ああ、もしかしたら
彼は真実の愛に気がついてくれるかも

別の時期のライヴ映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=lstDLoYeoG0

ライ・クーダー作の「The Tattler」。


ライ・クーダー本人のヴァージョンは1974年発表の「Paradise And Lunch」に収録。今回は1977年のライヴ映像をご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=Yyw9Mi1BSI4

バディ・ホリーのナンバー、「That'll Be The Day」。オールディーズを取り上げることがすっかり恒例となりました。


1976年のドイツ公演の映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=eGldbF8T7Ns

バディ・ホリー自身のヴァージョンは1957年リリースの『The Chirping Crickets』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=e3WDCHF1vDE

前述したリンダ・ロンシュタットと彼女の父親ギルバート、そしてケニー・エドワーズの共作曲「Lo Siento Mi Vida」。スペイン語で歌われていました。ギルバートはドイツ系メキシコ人であり、リンダは幼き頃よりメキシコの音楽を聴いて育ったといいます。
別れた恋人への思慕や未練が歌われ、その想いはJ.D.の姿とも重なりました。


表題曲の「Hasten Down The Wind」。気まぐれな女の恋心が歌われたウォーレン・ジヴォンの作品です。彼は1969年に『Wanted Dead Or Alive』でデビューしましたが、鳴かず飛ばず。1976年に親友ジャクソン・ブラウンがプロデュースした『Warren Zevon』でアサイラムから再デビューを果たしています。


ウォーレン・ジヴォンのヴァージョンです。
http://www.youtube.com/watch?v=6kWeaIOJ8FU

これは珍しい。ジャクソン・ブラウンが1975年のライヴ音源です。
http://www.youtube.com/watch?v=oTzNfjk3jBg

レゲエ調のリズムが心地よい「Give One Heart」。ジョン&ジョアンナ・ホールの共作曲です。ジョン・ホール率いるオーリアンズのヴァージョンは1975年リリースの『Let There Be Music』に収録されていました。
http://www.youtube.com/watch?v=j5K4pThiUKo

ウィリー・ネルソン作の「Crazy」。ファースト・リリースは1961年のパッツィ・クライン。ウィリー・ネルソンのヴァージョンは1962年発表の『...And Then I Wrote』に収録。この曲をレコーディングするアーティストは枚挙に暇がなく、ノラ・ジョーンズも2003年にシングル盤で取り上げていました。


ほぼ同時期のライヴかと思われますが、スタンダードを思わせる上記のパフォーマンスに比べてこちらのほうがカントリー・フレーヴァーが強いようです。
http://www.youtube.com/watch?v=ks6bjnX8c0k

宜しければパッツィ・クラインのヴァージョンもご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=Zzq5X-p2C0Y&feature=fvw

1960年代後半にマザー・アースを率い、ソウルフルな歌唱で好評を博したトレーシー・ネルソン作の「Down So Low」。去って行った男への未練が溢れた歌です。


トレーシー・ネルソンのヴァージョンは1974年発表の『Tracy Nelson』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=ThhOewiZWu8

アルバムを締めくくる曲はカーラ・ボノフ作の「Someone To Lay Down Beside Me」。オープニングとエンディングを同じ作者の楽曲で構成するとはよほどリンダはカーラの楽曲を気に入っていたと思われます。


こちらは1977年のライヴ映像です。たった1年で女性の持つ雰囲気は変わるものですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Yu-WBQdMMXM

ジャズ・ヴォーカル、ゴスペル、ラテンといった要素。ヴァラエティに富んだ内容はリンダのその後の方向性を示すものと言える。あるとき「衣服や車を買い替えるように男性を取り替えてもいいんじゃないの」と公言して物議を醸したことがありましたが、そうした自信の表れもこのアルバムあたりから培われて行ったのかもしれません。なお、アルバムは全米3位まで上昇しました。

Art Garfunkel - WATERMARK

あまりにも暑いので、楽曲にもジャケットにも清涼感が漂う1枚を念頭に選ばせてもらうことにしました。という安易な決め方でご登場をいただく方はアート・ガーファンクル。彼が1978年に発表したアルバム『WATERMARK』が今回のお題となります。

ウォーターマークウォーターマーク
(2004/02/25)
Art Garfunkelアート・ガーファンクル

商品詳細を見る

1. Crying In My Sleep
2. Marionette
3. Shine It On Me
4. Watermark
5. Saturday Suit
6. All My Love's Laughter
7. (What A) Wonderful World
8. Mr. Shuck 'N' Jive
9. Paper Chase
10. She Moved Through The Fair
11. Someone Else (1958)
12. Wooden Planes

水色の空、白い波頭が輝く碧い海を背景にし、陽光を浴びながらくつろぎの表情を見せるアート・ガーファンクル。当時恋人だったローリー・バードによってジャケット写真が撮られたためか柔和な雰囲気に包まれています。
アルバムに収録された12曲のうち10曲がジミー・ウェッブの作品。"Art Sings Jimmy Webb" と称してもよさそうなアルバムです。アートが最も気に入っているひとりのソング・ライターの楽曲にこだわることで、歌手アート・ガーファンクルというより、あたかもシンガー・ソング・ライター的な味わいが打ち出されているようにさえ感じ取れました。
とかく甘ったるいと揶揄されることのあるアート・ガーファンクルの歌声ですが、プロデューサーにバリー・べケットを起用し、ギタリストのピート・カーを始めとするマッスル・ショールズの腕利きミュージシャンたちがバックを受け持ったことで全体的にひきしまった印象を受けます。こうした布陣を敷いたことは、アルバム『There Goes Rhymin' Simon』(1973)でマッスル・ショールズのスタジオ・ミュージシャンと仕事をして大きな満足感を得ていたポール・サイモンからの助言がありました。
アートの優しい歌声にアーシーながらもクリアなマッスル・ショールズのリズム・セクションが融合し、洗練されたジミー・ウェッブの楽曲の持ち味と相まって、さらなる透明感が醸し出されています。哀愁を帯びながらも明るい音の響きが、まるで水彩画を鑑賞するかのように思えました。

それではYouTubeの映像・音源を使ってアルバムの中から何曲か紹介します。オープニング・ナンバーは夢の中でかつての恋人に出会って感傷的な気分に陥る様子が描かれた「Crying In My Sleep」。


ライヴ映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=hYH9ecryxCE

ジミー・ウェッブのヴァージョンは1974年リリースの『Land's End』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=lWqkcB7Byq0

色褪せた操り人形への想いを愛する人への気持ちに重ね合わせた「Marionette」。ジミー・ウェッブのヴァージョンは『And So On』(1971)に収録。


MARIONETTE
マリオネット ドレスがびしょ濡れじゃないか
雨の中で誰かに置き去りにされたのかい
それとも君の頬につたう小さな涙は心が痛んでいるからなのか
屋根の雨漏りによるものなのか?
マリオネット どうして君は忘れてしまったんだ?
つやつやと輝く上塗りも剥がれてしまうと君に言ったはずだよ
鮮やかな頬紅が色褪せ
ほとんどひび割れた微笑みを浮かべた顔で
古巣に向かうのはどんな気持ちがするのだろうか?

ブランデンブルグ・ゲートの側にあるおもちゃ屋に戻ってきた
まだ間に合えばよいが
初めて君の瞳に命を吹き込んだ頃よりも
私の腕は落ちているのだ

マリオネット 君はまだ終わっていないんだよ
僕が君を新しく生まれかわらせてあげよう
君の瞳を青く塗り
かつての私のように若返らせてあげよう
そして棚の上に座らせてあげよう
操り人形師が再びやって来て
君を連れて行くまで

ピアノをバックに歌われる「Shine It On Me」。"You might as well smile/Ain't tears gonna drown the rain"「泣きながら雨の中でずぶ濡れになるよりも笑っているほうがましだよ」というさりげない歌詞に暖かみが感じ取れます。グレン・キャンベルが「You Might As Well Smile」のタイトルで1974年にレコーディングしていました。


繊細で透かし模様のような女性像が描かれた表題曲「Watermark」。


リチャード・ハリスが1969年に発表したアルバム『The Yard Went On The Forever』に収められたヴァージョンがファースト・リリースのようです。
http://www.youtube.com/watch?v=YJMZAWwC6V8

土曜日の気分で憂さを晴らそうと歌う「Saturday Suit」。もともとはジミー・ウェッブが人類学者デスモンド・モリスの原作を映画化した『The Naked Ape(裸の猿)』(1973年公開)のために書いた曲です。


キャス・エリオットが『The Road Is No Place For A Lady』(1972)で取り上げていました。
http://www.youtube.com/watch?v=FyyshYxkERY

殆どジミー・ウェッブの作品で纏められたためか、アルバムの中では少々異質な色彩を放っているサム・クックのナンバー、「 (What A) Wonderful World」。ポール・サイモンとジェイムズ・テイラーが友情参加していました。


サム・クックのヴァージョンは1960年リリースの『The Wonderful Of Sam Cooke』に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=VF6JMotbHYM

アイルランドに古くから伝わるバラッド「She Moved Through The Fair」。アレンジはジミー・ウェッブとパディ・モロニー(チーフタンズ)が担当していました。この歌は伝承歌であるため内容の異なる幾つかのヴァージョンが存在するようです。アート・ガーファンクルのヴァージョンは歌詞が一部省略されていますが、両親に結婚を反対された娘が湖に身を投げた後で恋人の枕元に現れて変わらぬ愛の想いを告げるという悲恋物語が歌われています。


この曲は多数のアーティストによって歌い継がれています。今回はそのうちの幾つかを紹介しましょう。まず、メアリー・ブラックのヴァージョン。アルバム『Collected』(1984)に収録されていました。
http://www.youtube.com/watch?v=wBpuikqf9tA

愛くるしい歌声が魅力のアイルランドのシンガー、カーラ・ディロンはアルバム『Hill Of Thieves』(2009)で歌っていました。今回はライヴ映像でご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=RdrqkMvCx3I&feature=related

お時間があればペンタングルのギタリスト、バート・ヤンシュの演奏をお聴きください。ソロ・アルバム『Toy Ballon』(1998)に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=KKAIQjkAiDU

愛する人は他の男のものであることが分かっていても、その相手を憎むことは出来ないという複雑で微妙な心理が描かれた「Someone Else (1958)」。タイトルに1958と付けられているのはジミー・ウェッブがこの曲を作った年が表されているとのことです。つまり12歳頃の作品。ジミーの感性には感服する次第です。


幸せな時間は長く続かず、1979年6月にローリー・バードが自らの命を絶ちます。アート・ガーファンクルにとっての1980年代は悲しみに打ちひしがれた期間だったと言えるでしょう。1981年に発表された『Scissors Cut』は彼女に捧げられたアルバムでした。