好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Al Stewart - Year Of The Cat

 私は犬が苦手です。幼少の頃に噛み付かれたり、追いかけ回されたり、はたまたその時期にヒーローと崇めた「オバケのQ太郎」様に感化されたわけでもありません。ただ、犬を見ると、「アイツ弱そうやからやっつけたろか」と今にも襲いかかってきそうな気がして恐怖感を抱くのです。たとえその犬がチワワであろうと、ポメラニアンであろうと、ヨークシャテリアであろうと、マルチーズであろうと。
 そうした恐怖心と嫌悪感ゆえか、人間にとって身近な動物として永遠のライバル関係にあるとされる猫には親近感を覚えます。でも、猫が干支に入っていないのは何故でしょう。
 干支は古代中国における家畜を主として12種の動物を割り当てたものです。猫が干支の中に入っていないのは、神様が十二支の動物を決めるために招集をかけた際、鼠(ネズミ)が嘘をついて猫に1日遅れの日程を教えたことが原因とのこと。集合時間に遅れて干支に加われなかった猫は鼠に抗議するも、「騙される奴が悪いんや」と冷たくあしらわれる始末。昔も今も、他人を陥れて自分を優位にしようとする輩はいるものです。ますます『トムとジェリー』のジェリーが憎たらしくなってきました。
 さて、すっかり冷遇された格好の猫ですが、所が変われば干支の面々も少々異なるようで、タイやヴェトナムでは「卯(うさぎ)」に代わって猫が、ブルガリアでは「寅(とら)」が猫になっていると聞きます。まさに捨てる神あれば拾う神ありといったところ。
 組織の陣容は時おりの変化がないと硬直化を招くと言われます。日本もそろそろ心機一転を図るためにメンバー・チェンジを行い、犬かネズミにお引き取りいただいて、「お猫様」に入団をお願いしたほうがよろしいのではないでしょうか。そんな勝手な妄想を膨らませていると、犬やハムスターと同居されている皆様、並びにミッキー・マウスとグーフィーからお叱りの言葉を頂戴することになるやもしれません。本題のほうに進ませていただきます。
 長々と猫と干支の関係について述べてまいりましたが、今回はそんな話にぴったりの曲を取り上げることにしましょう。お題は「Year Of The Cat」。アル・スチュワートが1976年に発表したアルバム、『Year Of The Cat』の表題曲です。

イヤー・オブ・ザ・キャットイヤー・オブ・ザ・キャット
(2014/11/12)
アル・スチュワート

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YEAR OF THE CAT
ハンフリー・ボガートの映画から出て来たようなある朝
時間が後戻りしたような国で
群衆の中をぶらぶら歩きながら
ピーター・ローレのように
君は犯罪を企てているのか
彼女は雨の中の水彩画のように流れる絹のドレスをまとって
煌めく太陽の中から現れる
説明を求めて困らせてはいけない
彼女はただ君に言うのさ
「猫の年に入った」ってね

彼女が自分の腕に君の腕をしっかりと絡み合わせたら
質問に時間なんて与えてくれない
君は方向感覚がすっかり消え失せてしまうまで
ついて行くしかないんだ
市場の屋台の近くにある青いタイルの壁のそばに
隠された扉があり、彼女はそこへ君を導く
「近ごろはねぇ」と彼女は言う
「自分の人生がまるで川のように流れて行く気がするの
この猫の年を通り過ぎていくように」

彼女はとても冷ややかに君を見つめる
その瞳は海に浮かんだ月のように輝いている
彼女はインセンスとパチョリの香りに包まれてやって来る
それで君は彼女を抱き寄せる
猫の年には何が待っているかを知るために

さて、朝を迎えても君はまだ彼女と一緒にいる
バスも旅行者たちもいなくなっている
君は選択肢を打ち捨て
チケットを失ってしまった
だからもうここに留まるしかない
だが新しく生まれた1日のリズムの中に
その夜のドラム・ビートの調子が残っている
いつか彼女とさよならをすることになると君は分かっているだろうけど
今のところここに留まるつもりなんだな
猫の年のうちは


 アラン・パーソンズをプロデューサーに迎えて1975年にリリースされた前作『Modern Times』は全米30位の記録を残したものの売れ行きに不満を感じたのか、デビュー以来の所属だったCBSはアル・スチュワートとの契約の更新を拒否しました。5作目の『Past,Present, and Future』以来、アルのアルバムが市場のニーズに合ってないことを理由として、米CBSはアメリカでの発売を見送り、マイナー・レーベルが肩代わりして来ましたが、少しばかり売れても本国のイギリスでセールスが伸びないことにはどうしようもなかったのかもしれません。ともあれ釈然としないリストラに、「ほな、もっとヒットするアルバムを作って見返したるわい。俺を手放したことを後悔するで」とばかりに奮起したアルはRCAとの契約に漕ぎ着け、再びアラン・パーソンズをプロデューサーに起用した『Cat Of The Years』を1976年に発表します。アルの持ち味であるイギリスの気品とストーリー性のある歌詞、それに芸術性と大衆性を巧みに融合させたアラン・パーソンズの手腕によって全米5位、シングル・カットされた表題曲は8位まで上昇するヒット作となりました。当時、AORが脚光を浴びており、アルのこのアルバムのメロディアスでポップな側面とうまく適合したことが、ヒットの要因のひとつとなったのかもしれません。
 
 冒頭からハンフリー・ボガートやピーター・ローレらの俳優の固有名詞を比喩として用い、あたかも映画『カサブランカ』の舞台となったモロッコでの情景を映し出したかのような「Cat Of The Year」。主役を演じたボガートと小悪人に扮したピーター・ローレを対比しながら、街のざわめきやいかがわしさを表現しているように受け取れました。猫は神秘的で影のある女性の隠喩でしょうか。青いタイルの壁からはモロッコ、チュニジア、アルジェリアなどの北アフリカ諸国、あるいはスペインやポルトガル、さらにはメキシコの風景を連想させます。また、前述したようにタイやヴェトナムでは猫が干支に入っていることで、バンコクやハノイあたりが舞台なのかとも思わせ、無国籍で異国情緒が歌の中から読み取れました。
 海に浮かんだ月のような瞳にイノセンスやパチョリの香りが官能的な雰囲気を醸し出していますが、ドラム・ビートの調子の余韻はその夜の情事、そして欲望にときめいた鼓動の動きを表していると言えるでしょう。アルはさらりと歌い上げておりますが、大人の男女の心理や情交が巧みに描写されています。行きずりの恋に端を発した関係なんでしょうけれど、どのみち猫のように気まぐれで自己中心的な女性に手を焼くことには変わりありませんがね。

カサブランカ(映画)
 1942年制作のアメリカ映画。ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン主演。監督はマイケル・カーティス。
 1940年、ナチス・ドイツの支配下であるフランス領モロッコのカサブランカで、リスボン経由でアメリカへ亡命しようとする人々がたむろするナイトクラブを経営するリック(ハンフリー・ボガート)。ある日、リックは闇商人のウガーテ(ピーター・ローレ)から高額で売れるという通行証を預かる。その通行証はウガーテがドイツの連絡員から盗んだものだった。やがて、リックの元へナチスの手から逃れたレジスタンスの指導者が現れる。しかし、その人物の妻イルザ(イングリッド・バーグマン)はかつてリックの恋人。亡命を希望する夫妻の目当てはリックが保管する通行証だった。愛憎、再燃する愛、再会と再び別れる運命などが第二次世界大戦という激動の時代を背景に描かれている。主題歌「As Time Goes By」と "Here's looking at you, kid" (君の瞳に乾杯)という台詞が印象的であることは言うまでもない。

ライヴ映像をご覧ください。


こちらはカサブランカのテーマ曲「As Time Goes By」から演奏が始まる1979年のライヴ映像です。


1982年のTVショー出演時のライヴ映像のようです。


 今日も近所の家の前で犬に吠えられてしまいました。賢い犬は自分たちを嫌っている人間には絶対になつこうとしないもの。いつまでたっても相性が悪いようです。
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Al Stewart - Orange

フェアポート・コンベンション、ストローブスとブリティッシュ・フォークの香りが漂うグループの記事を続けてしまい、英国ロックの深い森からなかなか抜けられそうにありません。というわけで、今回は英国王家の血を引くというアル・スチュアートに登場していただくことにしました。取り上げるアルバムは『Orange』。ストローブスに在籍したリック・ウェイクマンが参加しています。

OrangeOrange
(2007/06/22)
Al Stewart

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1. You Don't Even Know Me
2. Amsterdam
3. Songs Out Of Clay
4. The News From Spain
5. I Don't Believe You
6. Once an Orage, Always an Orange
7. I'm Falling
8. Night Of the 4th Of May
9. Soho (Needless To Say)
10. Elvaston Place
11. It Doesn't Matter Anymore

アル・スチュアートは1945年9月5日、スコットランドのグラスゴーで誕生。生後間もなくグリーノックに移り、幼少期から思春期の頃まではボーンマスで過ごしました。
17歳で学校を退学。幾つかのバンドを転々とした後、19歳でロンドンに出てフォーク・クラブでボブ・ディランのナンバーや自作の曲を歌って注目されるようになります。
1966年、シングル「The Elf」でデビュー。翌67年、CBSと契約してアルバム『Bedsiitter Images』を発表します。69年にはリチャード・トンプソンやアシュリー・ハッチングスらフェアポート・コンベンションのメンバー、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが参加したセカンド・アルバム『Love Chronicles』をリリース。メロディ・メイカー紙の "Folk Album Of The Year" に選ばれ高い評価を得ました。タイトル曲では自身の恋の遍歴が18分に渡って延々と歌われ、生々しい描写と衝撃的な言葉が波紋を呼びます。表現の自由とはいえ、この歌の直接的な描写はあからさま過ぎてこれ以上とても説明できません。当然ながら、当時の本国イギリスで放送禁止となりました。続く1970年のサード・アルバム『Zero She Files』ではロック色を強め、恋愛だけではなく戦争をテーマに取り上げるなど変化の兆しが訪れます。

1972年、『Orange』では再びリアルなラヴ・ソングを中心とした内省的な歌に戻り、アル・スチュアートによる私小説的な世界が繰り広げられていました。自分自身の実体験をもとに、その想いを赤裸々にさらけだす作風が痛々しくも魅力的で心を打ちます。恋愛とは濃淡や程度の差こそあれ、誰もが経験し想い悩むこと。アル・スチュアートの描く歌はそうした男性と女性の価値観の違いや考え方の変化を的確に捉え、リスナーの共感を呼ぶ所以となっているのでしょう。

主な参加ミュージシャンはTim Rebeick(ギター)率いるイギリスのフォーク・ロック・グループQuiverの面々、既にイエスに移籍していたリック・ウェイクマン(キーボード)、Brinsley Schwarzからブリンズリー・シュウォーツ(12弦ギター)、ボブ・アンドリュース(オルガン)など。ジミー・ペイジのような大物の名は見当たりませんが、腕達者な人々が駆けつけていました。

それではアルバムの仲から何曲か紹介します。オランダのアムステルダムへの想いと愛する女性への恋慕の情を重ね合わせたポップな曲、「Amsterdam」。


叙情を激しくかきたてるような「The News From Spain」。恋人マンディとの別れが描かれた曲です。アルは彼女との関係が破綻した後の十ヵ月間は何も手がつけられず、歌も歌えない状態だったとのこと。過ぎ去った出来事を振り返りながら、ドラマティックな演奏をバックに切々と歌う様はようやく吹っ切れて現実を直視出来るようになったあらわれでしょう。


THE NEWS FROM SPAIN
スペインからの知らせを耳にした
まだ知りたいことがたくさんあるし
そして戻りたいのかどうかも分からないと君は言う
物事すべてがうまく行くかどうかにかかっている
カルヴァハルでどうにか出来ればの話さ

スペインからの知らせを耳にした
君は君を束縛しない誰かさんを見つけたんだってね
その人は君の涙を拭き、それから君の傍らに横たわった
時の流れというシンプルなワインが
俺たちをカルヴァハルで引き離した

タクシーに乗り込み空港へ
俺は着の身着のままで立っていた
走り書きした住所、歯ブラシ、パスポート
俺たちがビスケットの缶に貯めていた金
不安に駆られながら見知らぬスペインの街へと急ぐ
砂浜や海岸線を捜し求めて

スペインからの知らせを耳にした
冬の風が南の地を占有し
海はマントのように砂浜を包む
人ごみは去り
俺は歌を残して来た
カルヴァハルで
孤独に苛まれて息絶えるように

悲しいけれど、恋をする相手を
人は思うがままに選べるものではない

ボブ・ディランのナンバー、「I Don't Believe You」。アル・スチュアートは当時、「ディランはもう卒業したよ」と嘯いていたという逸話が残っています。情事の後によそよそしい態度を取った恋人への不信が描かれたこの曲を取り上げたことは、パーソナルで内省的なラヴ・ソングと訣別しようとするアルの決意の表れだったのかしれません。


ボブ・ディランのヴァージョンは『Another Side Of Bob Dylan』(1964)に収録。
http://www.youtube.com/watch?v=oNj6n6BJjIg

こちらは『Live 1966』(1998)に収録されていたヴァージョン。
http://www.youtube.com/watch?v=B_HPYuDC8Ks&feature=related

恋人と愛を交わす描写が鮮やかに表現された「I'm Falling」。


アルバム『Orange』発表後、アル・スチュアートは「私の歌は愛の歌だ。だが私は愛の歌を書き続けようと思わない」とコメントしたとされています。その言葉の通り、1974年には「ノストラダムスの大予言」を扱った『Past Present And Future』をリリース。個人的な愛の歌は影を潜め、戦争、歴史などに目を向けて物事を客観視する姿勢を窺わせました。言わば叙情詩人から叙事詩人へと転向したと理解してもいいのでしょう。
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