好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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Graham Nash & David Crosby - Southbound Train

 昨年(2013年)の12月6日に特定秘密保護法案が成立しました。多くのマスメディア、ジャーナリスト、市民団体、弁護士、作家、文化人、知識人、芸能人たちが、「報道・表現・言論の自由が制限される」、「軍靴の音が聞こえる」、「政府が都合の良い情報を隠す」、「一般の国民が処罰される」などといった理由で反対の大合唱。私の頭が悪いのか、読解力が不足しているのか、この法案のどこをどう読めばそのような解釈が出来るのかまったく分かりません。もし、その時の政府にとって都合が悪い情報が隠されると言うならば、現在の政権よりも「尖閣諸島は隣国様のもの」といった趣旨の発言をした "Loopy" 、SPEEDIの情報を握りつぶして大量の被災者を被曝させた「空き缶」、TPP交渉に際して「日本はポール・マッカートニーだ。ポールのいないビートルズはあり得ない。米国はジョン・レノンだ。この2人がきちっとハーモニーをしなければならない」と不的確かつ不適切な趣旨の発言をしたサモ・ハン・キンポーならぬ太ったドジョウらのような人々が、総理の座に就いた時のほうが恣意的運用がなされるのではないかと不安です。もっとも、民主党は尖閣諸島沖の漁船衝突事件のビデオ映像流出問題を受け、国の持つ秘密情報の漏洩に厳罰を科す秘密保全法を提案したことがありました。その時、特定秘密保護法に反対している人々が何か声をあげたでしょうか。そのような記憶がありません。日曜早朝の報道番組で、「映像を流出させた海上保安官を逮捕せよ」と叫んでおられた和服姿の大学教授も特定秘密保護法には異議を唱え、反意を示されています。

 さて、ビートルズの話題が出たので今回もFAB4のご登場と思われるかもしれませんが、然にあらず。グラハム・ナッシュ&デイヴィッド・クロスビーのご両人にご足労を願いました。お二人が1972年の4月5日に発表した『GRAHAM NASH/DAVID CROSBY』に収録されていた「Southbound Train」で、自由について少しばかり考えてみたいと思います。

グラハム・ナッシュ=デイヴィッド・クロスビー(紙ジャケット)グラハム・ナッシュ=デイヴィッド・クロスビー(紙ジャケット)
(2013/12/18)
グラハム・ナッシュ=デイヴィッド・クロスビー

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SOUTHBOUND TRAIN
笑いながら首を傾げる自由よ
あんたに死者を故郷に連れ帰る松明を掲げることができるのか?
あんたがその生き方を導いた父祖伝来の地に
この町の外れにある駅から
南に向かう列車に乗って

静かに拳と向き合う平等よ
あんたは怒り、疲弊し
狙いを外していないか?
奥の部屋に行って
電話を使っているギャンブラーたちの
リストを調べてくれないか?
南に向かう列車に乗りながらそんなことが脳裏をよぎった

流れる涙をこらえきれなくなっている友愛よ
あらゆる恐怖を打破するには永遠の時間が必要なのか?
既に道化師への支払いは済んでいると聞かされた
乗客はどうするのだろう
南に向かう列車に乗ってそんな思いを巡らす

 アルバム『GRAHAM NASH/DAVID CROSBY』のオープニングを飾るグラハム・ナッシュ作の「Southbound train」。フランス革命で掲げられた3つのスローガンである「自由」、「平等」、「友愛」を引用し、政治や社会に対する批判が織りなされています。
 この歌が世に出た1972年頃のアメリカはヴェトナム戦争の戦況が悪化し、社会全体に重苦しさや閉塞感が漂っていました。北ヴェトナムが攻勢に出て、アメリカは対抗して北爆を強化。泥沼の様相を呈し、国内外では反政府デモや反米デモが激化。しかし、いくら反戦を叫んでいても、当時のアメリカの若者たちは自分の国が負けてしまうのではないかという結果には何かやりきれぬ違和感や喪失感、そして、手放しでは喜べぬ感情を覚えていたのかもしれません。
 東西冷戦を背景とし、ヴェトナム統一による共産主義の拡大を防ぎ、自由と民主主義を守ることを謳って参戦したアメリカ。結果、莫大な資金と大量の兵器をつぎ込んで社会全体が疲弊し、膨大な数の戦死者を出してしまいました。帰還兵も戦闘時の恐怖がトラウマとなり、精神に異常を来す人も多かったと聞きます。自由に向かって問いかける最初のヴァースは、ヴェトナム戦争で戦死した兵士たちのことを歌っているのでしょうか。ちなみに、自由を象徴する建造物として名高い自由の女神像はアメリカ合衆国の独立100周年を記念し、独立を支援したフランス人の募金を基にして、1886年に完成したものです。
 自由と民主主義を標榜した国家である以上、競争原理が働き、国民に収入の格差が生じることは仕方のないことかもしれません。しかしながら、まっとうな商売をして稼いだ金ならともかく、「死の商人」の如く戦争で儲けることに釈然としないのは当然です。次のヴァースに出て来るギャンブラーたちとは政治家および軍需関連産業とその経営陣や大株主を指すのでしょう。ナッシュの怒りが窺えました。なお、21世紀のアメリカ社会でも貧富の格差が広がっていることは言うまでもありません。
 最後のヴァースではあらゆる恐怖を打破しようとする友愛に問いかけています。本来の友愛とは家族、兄弟、隣人、同胞などへの深い愛情のこと。ここでの恐怖とはいったい何なのでしょうか。戦争の恐怖でしょうか。国家権力の暴走でしょうか。追いつめられた貧困層が暴徒化することでしょうか。それとも闇の勢力の跋扈でしょうか。そのように考えると、道化師への支払いとは権力側に協力した人々が得た対価や兵士が授かった勲章のことを揶揄しているのかもしれません。また、乗客とはアメリカ国民のことを見立てていると受け取れ、国家への信用や信頼が崩壊したことを物語っているかのようです。友愛の情も消え失せたといったところでしょうか。

 お互いを信じ合うことは大切ですが、人間にプライドとアイデンティティがある限り、相容れない矛盾や疑問が生じます。他者との違いを認めて尊重することは大事ですが、決して迎合、追従せず、時には毅然とした態度で臨むことも必要だと個人的には思えました。余談になりますが、昨今の日本では "Loopy" 元総理のおかげで、「友愛」がまったく違った意味(「口封じ」、「粛正」など)を持ってしまったようで残念です。

 21世紀になっても利害や主義・主張がぶつかり合い、信仰も絡んで世の中は混沌とした状態におかれています。紛争や内戦が絶えず、テロ活動も頻発。自由、平等、友愛は民主主義の基本理念ですが、欲望が優先され、秩序や常識の薄れた社会に向かっているのが現実なのかもしれません。
 「Southbound Train」は政治への批判が色濃く描かれていました。でも、決して大上段に構えず、優しく諭すように歌うグラハム・ナッシュ。この歌を聴いてみると、政治批判や社会への異議申し立てといったこととは別に、ふと立ち止まって自分の周囲を見回し、何か思いを巡らすことがあるのではないでしょうか。生き方の指針を示してくれているような興味深い作品です。

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Neil Young - Only Love Can Break Your Heart

 8月にリリースされたリッキー・リー・ジョーンズの新譜、『The Devil You Know』はカヴァー集です。彼女は既に何枚かのカヴァー・アルバムを出しているのですが、今作も興味深い選曲がなされていました。その中でひときわ目を引いたのはニール・ヤング作の「Only Love Can Break Your Heart」。彼が1970年8月に発表したアルバム『After The Gold Rush』に収録されていた曲です。今回はリッキー・リー・ジョーンズといきたいところですが、ニール・ヤングのオリジナル・ヴァージョンをお題とさせていただくことにしました。

After the Gold RushAfter the Gold Rush
(2009/07/20)
Neil Young

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1. Tell Me Why
2. After the Gold Rush
3. Only Love Can Break Your Heart
4. Southern Man
5. Till the Morning Comes
6. Oh, Lonesome Me
7. Don't Let It Bring You Down
8. Birds
9. When You Dance You Can Really Love
10. I Believe in You
11. Cripple Creek Ferry



ONLY LOVE CAN BREAK YOUR HEART
まだ若くて自分の力で何とかしていた時
ひとりぼっちでいるってどんな気分だった?
俺はいつも自分がやってたゲームのことを考えていたよ
自分の人生で最高の瞬間にしようと一生懸命に

でもねぇ、愛って奴だけは人の心を引き裂けるんだよな
最初からまっ正直に事にあたらなきゃね
そうさ、愛って奴だけは人の心を引き裂けるんだよ
自分の世界が粉々になるとしたらどうなる?

俺には一度も会ったことのない友がいる
奴は俺の夢の中に頭を隠してるのさ
誰か奴を呼び出してくれよ
そして奴がちゃんと出て来れるかどうか確かめてくれ
奴は一皮むけるようにならなくちゃね

でもねぇ、愛って奴だけは人の心を引き裂けるんだよな
最初からまっ正直に事にあたらなきゃね
そうさ、愛って奴だけは人の心を引き裂けるんだよ
自分の世界が粉々になるとしたらどうなる?

俺には一度も会ったことのない友がいる
奴は俺の夢の中に頭を隠してるのさ

そうさ、人の心を引き裂けるのは愛だけなんだ

 この曲はグラハム・ナッシュとジョニ・ミッチェルの関係が終わったことを描いたとされています。すなわち夢の中の友とはナッシュを指し、失恋した彼に現実を受け入れよと諭しながら慰めていたと解釈できますが、本来はニール・ヤング自身の経験に基づいて創作されたとも言えるでしょう。周囲を顧みることなく自信過剰のままに誰かを愛しても苦しみや痛みが待ち構えていると説き、億劫なもうひとりの自分に対しては自立心を促すかのようなメッセージが受け取れます。少しセンチメンンタルなメロディーに乗せ、こんな風に説教がましくなく人生や愛をシンプルに語れるあたりがニール・ヤングの魅力であり、リスナーの心をとらえて離さない所以なのかもしれません。

 カーラ・ボノフでお馴染みのナンバー、「Walking The Room」の作者であるジャッキー・デシャノンのカヴァー・ヴァージョンです。1972年のアルバム、『Jackie』に収録されていました。
 ジャッキー・デシャノンはフォーク・ロックの元祖と言える存在なのですが、日本ではその名があまり知られておりません。決して美声でなく少し癖のある歌い方が美貌とミス・マッチしている印象さえ窺えますが、優れたソング・ライターでもあり、キム・カーンズに取り上げられた「Bette Davis Eyes」は1981年に全米で9週連続1位の記録的な大ヒットを打ち立てました。


 1995年にデビューしたアイルランド出身の兄妹からなるザ・コアーズのヴァージョン。2002年の『Live in Dublin』 に収録されています。 伝統的なケルト音楽と現代的なポップスが融合されたサウンドには定評があり、2000年のアルバム『In Blue』、シングル・カットされた「Breathless」は全英チャート1位を獲得しました。2006年より活動が休止されている状況が残念です。


 リッキー・リー・ジョーンズのヴァージョン。けだるい歌声が独特の雰囲気を醸し出しています。



Devil You KnowDevil You Know
(2012/09/13)
Rickie Lee Jones

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 画像が悪いのですが、ニール・ヤングとポール・マッカートニーが共演したライヴ映像がありました。宜しければご覧ください。


 この他にもロンドン出身のグループ、セント・エティエンヌが1991年にダンス・ミュージックにアレンジされたヴァージョン(1991年リリース)を発表し、『After The Gold Rush』のレコーディングに参加し、ニール・ヤングのツアーにも同行した経験のある二ルス・ロフグレン(ブルース・スプリングスティーンの片腕としても活躍)も2008年のソロ・アルバム『The Loner - Nils Sings Neil 』で取り上げるなど多数のカヴァー・ヴァージョンが存在しています。

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