好きな音楽のことについて語りたいと思います。

Bob Dylan - Is Your Love In Vain?

来日公演が盛況のボブ・ディラン。今回は彼が1978年に発表したアルバム『STREET LEGAL』から「Is Your Love In Vain?」を取り上げます。

Street LegalStreet Legal
(2004/06/01)
Bob Dylan

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1. Changing of the Guards
2. New Pony
3. No Time to Think
4. Baby Stop Crying
5. Is Your Love in Vain?
6. Seor (Tales of Yankee Power)
7. True Love Tends to Forget
8. We Better Talk This Over
9. Where Are You Tonight? (Journey Through Dark Heat)

この曲が初めて人前で歌われたのは1978年2月28日の武道館。初来日公演での出来事でした。そして、その年の6月にリリースされたアルバム『Street Legal』の中の1曲として収められたのです。


IS YOUR LOVE IN VAIN?
愛してくれているのですか、
それともたんなる好意を差し伸べているだけ?
あなたが言葉で言う半分も私を必要としているのですか
それともやましさを感じているから?
私は前に身を焦がしたことがあるので
本質を知っている
だから愚痴をこぼしたりしない
あてにしていのでしょうか
それともむなしい恋なのですか?

あなたはとても放埒なので
私が孤独でいたいことがわからないのでしょう?
私が暗闇の中にいる時
なぜ入り込んで来るのですか?
私の世界を知っていますか
私がどういう種類の人間か分かっていますか?
それとも説明しなければなりませんか?
私を私のままでいさせてください
それともむなしい恋なのですか?

私は山に住んでいたこともあるし
風の中に住んでいたこともある
幸福だった時もあれば不幸なだった時もある
王様たちと食事をともにし
羽も提供された
それでもあまり感じたことはなかった

分かりました 賭けてみましょう 
あなたと恋に落ちましょう
私に思慮が欠けていたのならば
あなたには夜があるし朝がある
料理と裁縫ができますか
花は育てられますか
私の苦しみを理解できますか?
リスクを被ることもいとわぬ気持ちがありますか
それともむなしい恋なのですか?

ホーン・セクションとキー・ボードによる壮麗なイントロで始まり、美しいメロディを淡々と歌うボブ・ディラン。相変わらず皮肉な表現を交えているものの真摯な態度で臨む求愛のメッセージが綴られていました。
いい加減な恋をする気はないと述べるのは好感が持てますが、21世紀の社会において ”Can You cook and saw, make flowers grow(料理と裁縫ができますか/花は育てられますか)” といったようなくだりはフェミニストの方々からの抗議を受けかねません。また、男性からこんなに気難しい愛の告白をされるとなると辟易してしまう女性もおられることでしょう。

この「Is Your Love In Vain?」を含めてアルバムにはそこはかとなくゴスペル・フィーリングが漂っていました。そして、それは翌1979年に発表された『Slow Train Coming』からのいわゆる「キリスト教三部作」を予感させるものにも思えます。

来日公演の翌年である1979年にリリースされた『BOB DYLAN AT BUDOKAN』のヴァージョンです。イントロがなく全体的にシンプルでリラックスしたような雰囲気の演奏の中で歌われています。


At BudokanAt Budokan
(1996/06/03)
Bob Dylan

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モット・ザ・フープルのイアン・ハンターによるライヴ・パフォーマンス。モットのメンバーはなかなかのディラン・フリークが集まっていたようで、リード・ギターを担当していたミック・ロンソンは『Rolling Thunder Revue』(1975 - 1976)に加わり、日本公演にも帯同するのではないかと囁かれていました。


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Bob Dylan - License To Kill

さて、今回も前回に引き続きボブ・ディランのアルバム『INFIDELS』から1曲、「License To Kill」を紹介します。

インフィデルインフィデル
(2005/09/21)
ボブ・ディラン

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1. Jokerman
2. Sweetheart Like You
3. Neighborhood Bully
4. License to Kill
5. Man of Peace
6. Union Sundown
7. I and I
8. Don't Fall Apart on Me Tonight



レコーディング・セッション時の映像のようです。


1984年にテレビ・ショーに出演した際のライヴ映像のようです。


LICENSE TO KILL
人間は地球を支配しているので
何でも好き勝手に出来ると思っている
もし物事がすぐに変わらなければ
自分で変えてしまうだろう
ああ 人間は自らの破滅を作り出した
最初の一歩は月に着陸したことだった

私の町内に一人の女性がいる
彼女はただ座っている 夜のしじまの中で
彼女は言う 誰が人間から殺人許可証を取り上げるのかと

人々はその人を連れて行き 教え込む
人生を乗り切るための教育を施すのだ
そして最後には病に伏せる運命を歩ませる
人々は勲章とともにその人を埋葬し
中古車を売るようにその人の死体を売る

私の町内に一人の女性がいる
彼女はただ座っている 夜のしじまの中で
彼女は言う 誰が人間から殺人許可証を取り上げるのかと

その人はがむしゃらに破壊する
怖れ、混乱し
頭の中はうまい具合に歪曲されている
自分の目だけを信じ
だがその目は真実を語らない

私の町内に一人の女性がいる
彼女はただ座っている 夜のしじまの中で
彼女は言う 誰が人間から殺人許可証を取り上げるのかと

君はうるさい人、元気づける人
つれない人 面倒な人かもしれない
あらゆる手段を尽くすのかもしれない
もしかすると劇の筋書きの中の俳優かもしれない
俳優を演じているのかもしれない
自分の過ちにはっきりと気がつくまでは

その人はよどんだ水たまりの祭壇で礼拝し
水面に映った自分の姿を見て満足する
おお 人間には公正さなんてありゃしない
全てを欲し、自分のやり方で欲するのだ

私の町内に一人の女性がいる
彼女はただ座っている 夜のしじまの中で
彼女は言う 誰が人間から殺人許可証を取り上げるのかと

このアルバムに付けられた対訳において、三浦久先生は "Man" を人間と訳されていました。しかし、この曲が収録されたライヴ盤『Real Live』(1984年発表)では中川五郎さんが対訳を担当されており、そこでは "man" を男と解釈して訳されています。
アルバム『INFIDELS』がリリースされたのは1983年。フェミニズムの台頭や女性の社会進出が注目されていたとはいえ "Man" は男と理解するほうが適切かと思われます。もし、中川さんのように「人間」を「男」と捉えると、ニュアンスがかなり変わってしまうでしょう。もっとも、後に続く「彼女は言う 誰が人間から殺人許可証を取り上げるのかと("She say who gonna take away his license to kill")」という箇所と対比すると男と訳したほうが相応しいとも言えます。
確かに戦争の陰で泣くのは母や妻といった女性たちという構図があり、「殺人許可証」を男たちから取り上げることが出来るのは彼女たちをおいて他にいないのかもしれません。でも現代の世の中では女性兵士や女性工作員も珍しい存在ではなく、戦争で殺戮を行うのは男性だけとは限らないのです。
そう考えていると、この歌の本当のメッセージが分かりづらくなりました。ボブ・ディランに真意を問う機会があったとしても、「そんなもんダブル・ミーニングに決まってるやん。おまえ長いことワシのファンやってんのに気がつかへんかったんか。あほやなぁ」と嘲笑されるだけでしょう。

Real Live [In Europe, 1984]Real Live [In Europe, 1984]
(1988/06/24)
Bob Dylan

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1998年のライヴ音源です。少々ルーズな雰囲気で演奏されています。


1969年の「ウッドストック・フェスティヴァル」でオープニング・アクトを務めたことで知られるリッチー・ヘヴンスのカヴァー・ヴァージョン。1987年にリリースしたアルバム『Sings Beatles & Dylan』に収録されていました。


カウボーイ・ジャンキーズのカヴァー・ヴァージョン。2005年にリリースされたアルバム『Early 21st Century Blues』に収録されていました。女性がリード・ヴォーカルを担当しているので、この場合は主語を「男」としたほうが説得力があるかもしれませんね。
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