好きな音楽のことについて語りたいと思います。

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James Taylor - Her Town Too

 前回は映画『波の数だけ抱きしめて』の挿入歌として使用されたラリー・リーの「Don't Talk」を取り上げました。今回も『波の数だけ抱きしめて』つながりで、JTことジェイムズ・テイラーの「Her Town Too」をお題とします。この曲は彼が1981年にリリースしたアルバム、『Dad Loves His Works』に収録されていました。

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(2014/06/25)
ジェイムス・テイラー

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 CBS移籍第3弾として発表された本作『Daddy Loves His Works』。おしどり夫婦と称されたカーリー・サイモンとの関係が破綻していく最中に制作されたことによるのか、当時の彼の心境が、収録された11曲の中であたかも短編小説のように織りなされていました。
 プロデューサーはお馴染みのピート・アッシャー。バックを受け持つのはワディ・ワクテル(ギター)、ダン・ダグモア(ギター)、リー・スクラー(ベース)、リック・マロッタ(ドラムス)、そして後に『Never Die Young』(1985年)、『New Moon Shine』(1991)、『LIve』(1993)の3作のプロデュースに携わることになるドン・グロルニック(キーボード)といった布陣。CBS移籍第1弾である『JT』(1977)では「Handy man」(オーティス・ブラックウェル、ジミー・ジョーンズ共作)、「Honey Don't Leave L.A.」(ダニー・コーチマー)、続く『Flag』(1979)では「Day Tripper」(ジョン・レノン&ポール・マッカートニー)、「Up On The Roof」(ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング)などのカヴァーが収められていましたが、本作『Dad Likes His Work』にはバンドのメンバーやJ.D.サウザーらとの共作あれども、すべてJT本人のペンによる作品が収録されていました。

 アルバムのオープニングを飾る「Hard Times」。夫婦であり続けることの難しさが描かれた曲です。


HARD TIMES
辛いときもあった、ああ本当に
ともに暮らして行くのは楽じゃない
男は怒り、女は飢え
お互いを苛立たせている
とても憂鬱で、落ち込んだ気分
他に何も言いようがない
彼女は街に出て、周囲に目を配りながら
別れ話をしている

そのまま行かせてしまってはいけない
もう一度チャンスに賭けなければ
ふたりとも努力しなければ
俺を愛しても意味をなさないよ
でも俺は君に夢中、これからも
だからもう一度、君に戻って来てほしいんだ
君にはふさわしくない俺かもしれないが
俺の気持ちは変わらない

だからふたりで努力しよう
努力してこの辛い時期を乗り越えなければ
努力して、努力して乗り越えなけらば
努力して、努力して乗り越えなけらば
そう、努力して、努力して乗り越えなけらば

辛い時期、辛い時期もあったさ
ともに暮らして行くのは楽じゃない
男は怒り、女は飢え
お互いを苛立たせている

このような辛い時期はふたりで努力してみようよ

 男が未練がましく「愛している。戻って来てほしい」と呟き、努力して苦境を乗り越えようとしても、女からは勝手な言い草とつれなくされている様子が窺えました。
 カーリー・サイモンは「もっと家庭を顧みてほしい」とJTに願ったと聞きます。JTにしてみれば「おまえかてミュージシャン活動を続けてるやないか。子供の教育はどないなっとんねん」といった言い分もあったことでしょう。芸能人同士の結婚はすれ違いが多いらしく、お互いの気持ちも次第に離れていくものかもしれません。もっとも、いくら愛し合っていても、四六時中顔を付き合わせていては飽き飽きするのも当然の流れでありましょう。相手の悪いところばかりが目につくようになったり、価値観の大きな違いに気付かされたりすることも。いずれにしても、ひとつ屋根の下の男女の関係は難しいものです。

 シングル・カットされて全米11位のヒットとなった「Her Town Too」。


HER TOWN TOO
彼女は外に出るのをずっとこわがっているのさ
ドアのノックの音にびくびくしている
いつもわずかな疑いを抱き
誰が訪ねて来るのか見当もつかない
たぶん友達の友達の友達
まったく誰だっていいような人
またとりとめもないほど何でもないことばかり

以前は彼女の街だった
以前は彼女だって自分の街だって言っていた
以前は彼女の街だったものさ
以前は彼女だって自分の街だって言っていたものさ

昔なじみの女友達さえも
彼女を罵倒しているらしい
何度も何度もあちこちに電話しまくり
彼女の名前を出して噂話をしている
ある人の、あることについてといった調子で
誰かが言ったかもしれない彼女にまつわるいろんなことを
彼女がいつも友達だと心の中で思っていた人たちは
彼女のことなどかまうことなく日々を過ごしているのだろう

そう、人々にはふたりが一緒にいるのは見慣れたことだった
でも今じゃ彼は姿を消し、歳月は過ぎ行く
ああ、永遠に続くことなどありえない
彼女に残されたものは家と庭
彼には気心知れた仲間たち
その中には彼の友達もいれば
彼女の友達もいる
そしてふたりのことをわかってくれる人もいる

こんな小さな街だから神様にはすべてお見通し
そう、破綻して行く成り行きは誰にも分かることだ
同情するつもりはないけれど
君に電話したくなっただけさ

以前は君の街だったじゃないか
昔は俺の街でもあったんだぜ
すべてが崩れ落ちてしまうまで
君には分からないだろうな
誰かが君を愛しているということを
君を愛している人がいるってことを

ダーリン、誰かが今でも君を愛している
俺は今でも憶えている

 イーグルスの「I Can't Tell You Why」あたりをどこか彷彿させるような切なく哀愁を帯びたメロディーの「Her Town Too」。傷心のJTを支えるかのようにデュエットの相手をしているのはこの曲の共作者でもあるJ.D.サウザーです。
 先ほどの「Hard Times」での別れ話を吹聴する女性とは打って変わり、おそらく離婚したことがきっかけで自宅に引きこもる彼女。彼女は家と庭を得て、彼は仲間の支援を手に入れたとありますが、原文では "He gets the boys in the band"と記され、「バンドの仲間を手に入れた」とも訳せ、すなわちミュージシャン仲間やバンドのメンバーが自分の側に付いてくれたという解釈も成り立つでしょう。カーリー・サイモンに財産を渡したが、俺には友人たちが付いてるのだとJTは言いたかったのかもしれません。そして「ダーリン、誰かが今でも君を愛している/俺は今でも憶えている」はJTの偽らざるカーリーへの想いでしょう。

 JDも登場するプロモーション映像です。


 アルバム発表直後と思しきライヴ音源とのこと。


 映画『波の数だけ抱きしめて』の1場面です。


 JTが妻子に向けて送った歌のように思われる「Hour That The Morning Comes」。


HOUR THAT THE MORNING COMES
ママはミュージシャン、いつも注目の的
金色の靴で一晩中踊り続ける
彼女は最高の気分で
踊り、踊り、舞い上がった
お天道様が昇る頃までは半分天国にいる気分さ

そしてパパは頭を抱えて呆然とさせられている
ママはパパが仮眠を取っていると思いたいのだ
彼は働き詰めだから
夜通し働いているから
お天道様が昇る頃でも半分地獄にいる気分なのさ

月の光に誘われて地獄から飛び出して来たコウモリのように
昨晩めちゃくちゃに破壊した絵の断片のように
きっとなんとかなるだろうよ
お天道様が昇る頃には、俺は半分重苦しい気分に包まれているのさ

おい、ランプシェードを被ったまぬけな奴を見なよ
楽しんでいるかって誰かに言われたみたいだけど
そりゃ間違いだぜ
そうじゃない、そうじゃない、そうじゃないんだ
天然の愚か者だったら
お天道様が昇れば目を開けるだろうよ

秘密諜報部員のあの男を見なよ
手を血に染めて教会からこっそり抜け出して来るぜ
奴は売り物
入札するなら今がチャンスだ
窮地に陥った時
奴は最新のニュースになり、進み続けるだろう

水をくれ
少しでいいからワインも
君たちの目の前にいる男は
お天道様の下にいるのが少しばかり長過ぎたようだ
ほんの少しな
だが俺はお天道様が昇るまでには家路に向かっているだろう

 冒頭の「ママはミュージシャン」とはもちろんカーリー・サイモンのこと。JT自身は夜中まで働いて地獄であると述べています。自虐的な要素を加えてユーモラスに表現したのでしょうが、これでは妻子の感情を逆撫でしかねません。パパは愚か者だから許してほしいと言われても、少々虫がよすぎるのではないでしょうか。

 夫婦の関係や親子の関係に向き合い、夫として、父としての自己の責任をのあり方を伝えることでカーリー・サイモンへの返答としたようなメッセージが込められたアルバム『Daddy Loves His Work』でしたが、結局1982年にふたりは離婚。関係修復を試みたJTの努力は実りませんでした。カーリーにしてみれば、「自分勝手な言い訳せんといて」といったところだったのかもしれません。男女の仲であれ、男同士の友情であれ、ビジネスにおいての信頼関係であれ、一度不信感を抱くと呆気なく崩れ去って行くのが世の常ということですね。


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James Taylor - October Road

来日間近ということで、今回は久々にジェームズ・テイラーに登場してもらうことにしました。取り上げるアルバムは2002年にリリースされた『October Road』です。季節外れのようで誠に申し訳ございません。

October RoadOctober Road
(2002/08/13)
James Taylor

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1. September Grass
2. October Road
3. On the Fourth of July
4. Whenever You're Ready
5. Belfast To Boston (God's Rifle)
6. Mean Old Man
7. My Traveling Star
8. Raised Up Family
9. Carry Me On My Way
10. Caroline I See You
11. Baby Buffalo
12. Have Yourself A Merry Little Christmas

いつものように心に響くギターの音色と穏やかな歌声。長年に渡り聴く者の心を癒すかのように歌い続けてきたジェームズ・テイラーですが、このアルバムでは円熟を超え、達観といったものを感じます。
繊細な性格ゆえに若い頃は精神治療施設へ入院した経歴があるジェームズ。人生の挫折を味わった経験も一度や二度ではありません。自分の体験を切り売りするようにして歌を紡ぎ、成功を獲得したことへの欺瞞や後悔の念に苛まされたこともあったでしょう。
しかし、ここにいるジェームズはうつろいやすい20代の若者ではなく、分別をわきまえた大人です。デビュー作から葛藤、悲哀、自己憐憫といった心情を吐露しながらも開放的な雰囲気を漂わせてきた人ですが、過剰なまでに意気込んだ様子も大袈裟な表現もなく、冷静に世の中や自分の周囲を見つめる姿がさりげなく醸し出されていました。

それではアルバムの中から何曲か紹介します。オープニング・ナンバーの「September Grass」は若い頃の恋の思い出を綴った歌。夏から秋へと移る感傷的な季節が物語の舞台です。誰もが経験するような他愛ない出来事にふと切なさを覚えました。


表題曲「October Road」。アルバムではライ・クーダーの控えめながらも胸に滲みるような味わい深いギターを堪能出来ますが、今回はディクシー・チックスと共演しているライヴ映像でお楽しみください。


アイリッシュ風の趣がある「Belfast To Boston (God's Rifle)」。


BELFAST TO BOSTON (GOD'S RIFLE)
田舎の土の中にライフルが何挺も埋められている
月が出る頃に埋められたライフル
錆び付いて土に還るまでには
どうか埋められたまま忘れ去られるように

誰がいにしえから続くこの憎しみをはらってくれるのか
この殺戮に終わりがあるのか
長く続く不当行為を消し去ってくれるのか
同胞のために悪魔を追い払ってくれ

いったい誰が言うのか
「もうこれまでだ、ああ、神よ
私が死ぬとしたら」

武器を送るのを止めよう
資金援助も止めよう
復讐の念で幾つもの海を越えるのは止めよう
ただ寛恕の祈りのみ
私の新たなる同胞と私のために

行方不明になった兄弟たち
犠牲となった人々
地中で黙して語れぬ子供たち
我々はもの言えぬ彼らの声を
聞くこと以外に何が出来ようか
「今こそ神のライフルを捨て去る時」と

世の不条理な現実を鑑みて描かれた歌のようですが、世界各地における紛争が示唆されています。「ベルファスト(アイルランドの首府)からボストンへ」というタイトルからも察せられるように北アイルランド問題への懸念、と同時にアルバムが発表された前年に勃発したアフガニスタン紛争にも思いが込められていると思われます。
人間にはプライドとアイデンティティーがあり、さらに国益や宗教が絡むと問題が複雑化して解決の糸口を見つけるのは困難であるかと思われます。国家間の争いならば和解の道を探ることも不可能ではありませんが、テロリストが相手となると話し合いは通じないでしょう。

スタンダード曲を思わせるような「Mean Old Man」。頑固で偏屈な老人が、ある人との出会いによってすっかり人柄が変化する様子が描かれていました。


娘であるサリー・テイラーがバック・ヴォーカルで参加した「 My Traveling Star」。家庭を顧みず、放浪に旅を繰り返す男の物語です。決して良い父親ではなかったと思われるジェームズ・テイラーの自戒の念が少なからず込められているようで興味深く受け取れました。


DVD『From The One Man Band』(2007)からの映像のようです。


本作の次に『The Best of James Taylor』を2003年に、そしてクリスマス・ソングを集めた企画盤『James Taylor at Christmas』を2006年に発表してジェームズ・テイラーはSONYを去りました。移籍先のHear Musicからは2007年にライブ・アルバム『One Man Band』、2008年にカヴァー集『Covers』、2009年に続編の『Covers 2』と毎年のように彼の歌声が届けられていますが、ここ数年スタジオ録音のオリジナル・アルバムのリリースがありません。ぜひ近いうちにJTの新しい歌と出会えることを待ち望む次第です。
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