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Harry Nilsson - HARRY

前回ビートルズの「Mother Nature's Son」を扱った時にハリー・ニルソンのカヴァー・ヴァージョンも紹介しました。そこで今回はニルソンの歌う「Mother Nature's Son」が収録されたアルバム、『HARRY』を取り上げます。

ハリー・ニルソンの肖像ハリー・ニルソンの肖像
(2002/07/24)
ニルソン

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1. The Puppy Song
2. Nobody Cares About the Railroads Anymore
3. Open Your Window
4. Mother Nature's Son
5. Fairfax Rag
6. City Life
7. Mournin' Glory Story
8. Maybe
9. Marchin' Down Broadway
10. I Guess the Lord Must Be in New York City
11. Rainmaker
12. Mr. Bojangles
13. Simon Smith and the Amazing Dancing Bear
14. I Will Take You There [Alternate Mix]
15. I Will Take You There [Mono Single Version]
16. Waiting [Non-LP Single Version]
17. Rainmaker [Mono Single Version]
18. Wasting My Time

ハリー・ニルソンの『HARRY』がリリースされたのは1969年。メジャーからのファースト・アルバムである『Pandemonium Shadow Show』(1967)、セカンド・アルバム『Aerial Ballet』(1968)に続く三部作の締めくくりとして発表されました。
アルバムのテーマは回顧。ニルソン自身の半生を振り返り、同時にアメリカの歴史を顧みるといった意味が込められていました。60年代後半のアメリカは公民権運動、ヴェトナム反戦運動、ヒッピー・ムーブメントなど変革の波が渦巻いていた時代です。ミュージシャンに限らず様々な分野のアーティストがこうした運動に直接的、あるいは間接的に関わり社会や体制に対し異議を唱えていました。
その一方でアメリカの歴史、文化、伝統などを振り返り、その原点を見つめ直そうとする作業も活発に行われています。こうした「回顧」という動きは音楽界では「懐古」やノスタルジーにつながり、多くのアーティストがこの潮流に乗るかのような活動を始めました。ラヴィン・スプーンフルはジャグ・バンド・ミュージックやラグ・タイム・ミュージックを取り入れ、ハーパス・ビザールはアルバムの中で1920~40年代のポピュラー・ソングを積極的にカヴァーしていたのです。また、ザ・バンドのように多くのアメリカ人が忘れていた伝統や文化を精神性を含めて音楽の力で甦らせようとした人々もいました。

ニルソンの「Harry」も当時のアメリカの社会状況を捉えて反映した1枚と言えるでしょう。作品の多くにノスタルジックな装いが演出されていました。自身の子供の頃のポートレートをアルバム・ジャケットに使うあたりに「回顧」という意気込みが伝わってきます。

それではアルバムの中から何曲か紹介します。
まず、オープニング・ナンバーの「The Puppy Song」。もともとはポール・マッカートニーの依頼でメリー・ホプキンのために書いた曲です。ディキシー調の演奏をバックにユーモラスに歌われていました。


メアリー・ホプキンのヴァージョン。1969年2月にリリースされた彼女のファースト・アルバム、『POST CARD』に収録されていました。宜しければ下記のアドレスをクリックして聴き比べてみてください。

http://www.youtube.com/watch?v=eNvL7hoZPys

続いて、列車が飛行機に取って代わられたように、最先端だった文明の利器もやがて忘れ去られてしまう運命であると説く「Nobody Cares About the Railroads Anymore」。人間の欲望や物質文明に対する批判や揶揄が込められているようです。


ご存知ビートルズのカヴァー、「Mother Nature's Son」。60年代の後半は前述の原点回帰のみならず、後の環境保護運動に繋がる「自然への回帰」も謳われていました。ニルソンがこの曲は取り上げたのはそうした雰囲気に合致していると思ってのことだったのかもしれません。


ビル・マーティン作の「Fairfax Rag」。フェアファックス通りの日常を描いた曲です。


「Mournin' Glory Story」は見知らぬ他人の玄関先で目覚めたホームレスの女性の歌。ちょっぴり切なくなるような哀愁が漂っています。


軽快な「Marchin' Down Broadway」。第二次大戦で日本を破った兵士たちがブロード・ウェイを行進する様が描かれています。日本人としてはやや微妙な内容でした。


ヒット曲「EverybodY's talin' at Me」似た雰囲気を持つ、「 I Guess the Lord Must Be in New York City」。この曲は当初『Midnight Cowboy』のために用意されたものの監督がNGを出したために使われず、代わって前作「AERIAL BALLET」に収録されていフレッド・ニール作の「Everybody's Talkin'」が採用されました。


I GUESS THE LOAD MUST BE IN NEW YORK CITY
悲しみに別れを告げ
明日には旅に出る
主はニューヨークにいらっしゃるに違いない

あてのない旅にはもう飽きた
祈りがかなえられないことにも気づいた
主はニューヨークにいらっしゃるに違いない

主よ 私はここにいます あなたのドアをノックしています
憧れの地にいることはなんて素敵なことなんでしょうか
初めてのニューヨークで
私は自由の息を吸っている


ニルソンとビル・マーティンの共作、「Rainmaker」。依頼されたのに代金が支払われず、怒った雨乞い師が永遠に雨を降らせ続けるいった内容が描かれていました。ブラック・ユーモアに満ちた寓話風の歌です。


ジェリー・ジェフ・ウォーカー作の「Mr.Bojangles」。サミー・ディヴィス・Jr.の師匠に当たる実在の黒人タップ・ダンサー、ビル・ロビンソンをモデルにして書かれた歌であるかのように囁かれていましたが、作者であるジェリー・ジェフは全くの別人であると否定。彼が酔っぱらって留置場に放り込まれた際に知り合ったヴォードヴィリアンの話をもとにして作れれたそうです。


この曲は多くのアーティストにカヴァーされています。今でもよくCMに使われるニッティ・グリッティ・ダート・バンドのヴァージョン。1970年発表の『Uncle Charlie & his Dog Teddy 』に収録されています。
http://www.youtube.com/watch?v=6MQYn-GvGOM

ニーナ・シモンのヴァージョンは1971年リリースの『Here Comes the Sun』に収録。この曲はジャズ・シンガーにも好まれているようで、ナンシー・ウィルソン(1971年発表の『Kaleidoscope』)、アルト・サックスのソニー・スティット(1973年発表の『Mr. Bojangles』)らの録音もありました。
http://www.youtube.com/watch?v=ONBT1nnH-HU

パフォーマンスが楽しいサミー・ディヴィス・Jr.のヴァージョンは彼のベスト盤やライヴ盤に収録されているようですが、詳細が分かりませんでした。
http://www.youtube.com/watch?v=5voM2HExV_Q
お詫びにもう少し若い頃のステージの映像をどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=5voM2HExV_Q

こちらがオリジナルのジェリー・ジェフ・ウォーカーのヴァージョン。1968年にリリースされた『Mr. Bojangles』に収録されています。


この他にもニール・ダイアモンド『Touching You, Touching Me』 (1969年発表)、 ジョン・デンバー『Whose Garden Was This』 (1970年発表)、ルル 『New Routes』 (1970年発表)、デヴィッド・ブロンバーグ『Demon in Disguise』 (1972年発表) 、ボブ・ディラン『Dylan』(1973年発表)中川五郎『ぼくが死んでこの世を去る日』(2004年発表)と枚挙に暇がありません。

中川五郎さんの日本語ヴァージョンも宜しければどうぞ。

http://www.youtube.com/watch?v=bMHgIcLk2cI

ランディ・ニューマン作の『Simon Smith and the Amazing Dancing Bear』。彼のセルフ・カヴァーは1972年発表の『Sail Away』に収録。アラン・プライス・セット(1967年発表)、ハーパス・ビザール『Feelin' Groovy』(1967年発表)、矢野顕子『オーエス オーエス』(1984年発表)、マティルダ・サンティン『Texas Girl & Pretty Boy 』(1993年発表) と興味深く秀逸なカヴァーが多い曲です。
ランディ・ニューマンがデビューしたのは1968年。彼もまた古き良きアメリカを偲ばせるようなサウンドを背景に、アメリカの現在と過去の負の部分をユーモアとアイロニーを歌詞の中に織り交ぜながら浮かび上がらせた一人でした。


こちらがランディ・ニューマンのヴァージョン。


一番早く取り上げたのはアラン・プライス・セットの方々です。


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Harry Nilsson - AERIAL BALLET

前回は久しぶりにビートルズを記事にしました。今回はビートルズと関連が深いアーティスト、ハリー・ニルソンが1968年にリリースした2ndアルバム、『AERIAL BALLET(空中バレー)』を取り上げます。本作ではビートルズのカヴァーは収録されておりませんが、ほのかにビートルズの影響が漂っていました。

空中バレー(紙ジャケット仕様)空中バレー(紙ジャケット仕様)
(2007/08/22)
ニルソン

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1. Daddy's Song
2. Good Old Desk
3. Don't Leave Me
4. Mr. Richland's Favorite Song
5. Little Cowboy
6. Together
7. Everybody's Talkin'
8. I Said Goodbye to Me
9. Little Cowboy
10. Mr. Tinker
11. One
12. The Wailing on the Willow
13. Bath
14. Sister Marie (Bonus Track)
15. Miss Butter's Lament(Bonus Track)
16. Girlfriend(Bonus Track)

実質的な1stアルバムである前作『Pandemonium Shadow Show』ではカヴァー曲が約半数を占めていましたが、本作はフレッド・ニール作の「Everybody's Talkin'」を除くすべてが共作を含むニルソンのオリジナルで構成されています。前作のセールスが芳しい成績を収められなかったので制作費削減の憂き目に合っても当然であるにもかかわらず、ラリー・ネクテル(キー・ボード)、ジム・ゴードン(ドラムス)、ジム・ホーン(フルート)などの豪華なセッション・プレイヤーが参加していました。

アルバムのオープニングを飾る「Daddy's Song」はモンキーズが主演映画『HEAD』(1968)のサントラにおいてカヴァーしています。 ニルソンの本作とモンキーズの『HEAD』の発売時期が重なったために競合して共倒れになるという事態を恐れたRCA側は、本作のセカンド・プレスからこの「Daddy's Song」を外すという措置を取りました。
まるで数人で歌っているかのように聴こえますが、ニルソン本人のみが多重録音を駆使してレコーディングしています。ピアノとタップ・ダンスのイントロが印象的で、ラグ・タイム風の演奏も味わい深く受け取れました。
なお、この曲はニルソンの父親をモデルにして作られたと言われています。


こちらはなんとなくビートルズを思わすコーラスが耳に残る「Good Old Desk」。お気に入りの机のことを歌ったそうです。


そこはかとなく気品が窺える「Together」。


この「Everybody's Talkin'(うわさの男)」という曲はニルソンがフレッド・ニールのオリジナル・ヴァージョンを聴いたのではなく、音楽出版社のデモ・テープの中から見つけ出し、気に入って録音した曲だと言われています。アルバムに先行してシングル・カットするほどの熱の入れようでしたが、当初はヒットどころか話題にも上りませんでした。ところが、ジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンが主演した1969年公開の映画『Midnight Cowboy(真夜中のカーボーイ)』の主題歌に抜擢されると全米6位のヒットを記録したのです。
もともとこの映画の主題歌を探していたジョン・シュレンジャー監督からのオファーを受けたニルソンは「I Guess the Lord Must Be in New York City(孤独のニューヨーク)」(1969年発表の『Harry』に収録)を提供したのですが、その前に『AERIAL BALLET』を監督に聴かせていました。監督はその中に収録されていたこの「Everybody's Talkin'」をいたく気に入りこちらを主題歌に決めたのです。このプレゼンテーションにはニルソン以外にもジョニ・ミッチェル、ランディ・ニューマン、ボブ・ディランら錚々たるアーティストにオファーが出されておりましたが、素早く積極的に動いたニルソンが勝利を得る結果となりました。
自作が採用されず、皮肉にも他人の曲で大仕事を獲得した格好ですが、この大ヒットによりニルソンはグラミー賞を獲得し、その名は広く世間に知れ渡りようになります。ちなみにフレッド・ニールのオリジナル・ヴァージョンは1967年発表の『Fred Neil』に収録されていました。


EVERYBODY'S TALKIN'
みんなが俺のことを噂にしている
おれにはあいつらが何を言っているかなんて
関心がないけれどね
俺には心のこだまがあるだけさ
人々は立ち止まり、じっと見ているけれど
俺にはあいつらの顔が見えない
ただあいつらの目の影が見えるだけ

俺は太陽が輝き続けるところへ行くつもりだ
降りそそぐ雨をくぐり抜けて
気候が俺の服によく似合うところへ行くのさ
北東の風を受けながら
夏の風に乗って走って行くんだ
嵐のように海原を越えて行くんだ

みんなが俺のことを噂にしている
おれにはあいつらが何を言っているかなんて
関心がないけれどね
俺には心のこだまがあるだけさ
俺はあいつらをおいて行かない
俺はあいつらが好きなんだ


いやいや おいて行ったりなんかしないよ
俺の好意をおきざりになんかしないよ

拍子の変化が興味深い「I Said Goodbye To Me」。


スリー・ドッグ・ナイトのカヴァー・ヴァージョンが全米5位のヒットを記録した「One」。ハープシコードの響きとウッド・ベースの演奏が印象的です。ハリーのオリジナル・ヴァージョンは孤独感が滲み出るような仕上げになっています。ちなみにスリー・ドッグ・ナイトのヴァージョンは1968年発表の『Three Dog Night』に収録。他にもアル・クーパーが1969年リリースの『I Stand Alone』で取り上げていました。


こちらはスリー・ドッグ・ナイトのヴァージョン。


オーケストラをバックに歌うスリー・ドッグ・ナイト。時間があればこちらもどうぞ。


ニルソンといえば「Everybody's Talkin'」や「Without You」が有名ですが、彼のオリジナルの中にもこの「One」のように素晴らしい曲が幾つもあります。ノスタルジックな音楽を基盤としながら斬新なアレンジが施された楽曲。哀愁のこもった甘く多彩な歌声。希有な才能が彼の作り出す作品の中に発散されていました。この世に彼がいない今、残念ながら忘れ去られがちのアーティストのひとりになってしまいましたが、もっとその魅力が正当に評価されてもよいと思われます。

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