好きな音楽のことについて語りたいと思います。

levon Helm - Violet Eyes

 今回はリヴォン・ヘルムの『American Sun』から2曲のラヴ・ソングを取り上げます。

American SonAmerican Son
(1997/06/24)
Levon Helm

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1. Watermelon Time In Georgia
2. Dance Me Down Easy
3. Violet Eyes
4. Stay With Me
5. America's Farm
6. Hurricane
7. China Girl
8. Nashville Wimmin
9. Blue House OF Broken Hearts
10. Sweet Peach Georgia Wine

 一般論ですが、アメリカ南部の人々は家族との関係、友人や仲間との連帯、親戚付き合いを大切にすると言われています。さらに、客人を温かく受け入れてもてなし、道行く人にも親切に接するといった気質も備わっているとのこと。これは"Southern hospitality"と呼ばれるもので、通りですれ違う人と目が合うと笑顔が返って来たり、"Haya doing?" と声を掛けられることも少なくありません。
 何かにつけ保守的と揶揄されるアメリカ南部。今でも勇敢に女性の身を守るのが南部男の習わしで、女性はおしとやかで夫を立てるべきという風土も残っていると聞きます。また、1939年にヴィヴィアン・リー主演で映画化されたマーガレット・ミッチェル作の小説『Gone With The Wind/風とともに去りぬ』に登場する主人公スカーレット・オハラの義妹であるメラニー・ウィルクスのような慎ましやかさ、優雅さ、気品を兼備したのが"Southern Bell"(南部美人)の条件とされていました。しかし、このメラニーは愛する者に危機が迫ると身を挺してまでも守り抜くといった勇気を発揮する一面もあり、頑強な意志を持ったスカーレット同様に南部人の気骨溢れた姿勢を示していたのです。
 情に厚く奥ゆかしいとされる南部女性。前回の記事で扱った「Watermelon Time In Georgia」や「Sweet Peach In Georgia」と合わせて、リヴォン・ヘルムが想いを寄せる南部の女性像を考察してみるのも興味深いことでしょう。

 トム・キメル作の「Violet Eyes」。愛しき片思いの人への素直な気持ちが表された曲です。リヴォン・ヘルムの歌声は無骨ながらも実に切なく、誠実さと優しさが伝わってきました。


VIOLET EYES
俺はここでひとり、おまえが心変わりするのを待っている
おまえが炎と氷の瞳を後ろに隠す場所へと続く道
愛がその行く手を照らしてくれば良いのだがなぁ

菫色の瞳、おまえに話しかけてるのが聞こえるかい
俺の言葉を拒まずに聞いてくれ
菫色の瞳、感じるんだよ
どうか通り過ぎるまで行かないでくれ

風に向かう鳥のように俺はずっと頑張ってきた
今でも俺は飛んでいるのさ、望みを捨てずにもう一度
カーテンの後ろを見るために
おまえの秘密の嘘が隠されているところを

愛が俺の心の中にある限り
与えられないものはない、与えられるだろうよ
頑張ってみるさ

 アメリカのルーツ・ミュージックと東洋的な響きを融合させた「China Girl」。こちらもリヴォン・ヘルムの素朴で誠実な人柄が滲み出るような曲です。


CHINA GIRL
チャイナ・ガール、砂浜で俺は君に出会った
冷たい手で君は俺に触れた
君の香水が風に漂う

チャイナ・ガール、君の父さんは白々しい嘘をつく
俺の青い瞳の誘惑から君を守るために
俺と知り合っても罪にならないのに

君を傷つけたりしない、チャイナ・ガール
君の世界に俺を連れて行ってくれるのなら
君に会えて幸運だよ、チャイナ・ガール、
ああ、チャイナ・ガール

盗まれた花は今朝が一番甘く香るのさ
東洋の朝が明けて行く
俺の肌に君の絹のような肌が触れる

チャイナ・ガール、ジャスミンの花が咲くところへ連れて行っておくれ
別世界の感覚で俺を慰めてくれ
俺と知り合うことは罪じゃない

 アメリカのテレビ番組、「Midnight Special」出演時のライヴ映像です。


 どちらの曲もひとりの女性への想いを綴る形式を取っています。しかし、その根底にはアメリカ南部に対するリヴォン・ヘルムの愛情が込められているのではないでしょうか。彼が生まれ育ったアメリカ南部は何物にも代え難く、こだわりのある土地。憧れの女性像の裏側にアメリカ南部への郷愁や慈愛が秘められているのかもしれません。

<参考文献>
『アメリカ南部』(ジェームズ・M・バーダマン著、森本豊富訳、講談社現代新書 1995年)

アメリカ南部 (講談社現代新書)アメリカ南部 (講談社現代新書)
(1995/06/16)
ジェ−ムス.M・バ−ダマン

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Levon Helm - AMERICAN SON

 2012年4月19日、ザ・バンドのリヴォン・ヘルムさんが逝去されました。今回は彼が1980年にリリースしたアルバム『AMERICAN SON』を取り上げ、故人の功績を偲びたいと思います。

American SonAmerican Son
(1997/06/24)
Levon Helm

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1. Watermelon Time In Georgia
2. Dance Me Down Easy
3. Violet Eyes
4. Stay With Me
5. America's Farm
6. Hurricane
7. China Girl
8. Nashville Wimmin
9. Blue House OF Broken Hearts
10. Sweet Peach Georgia Wine

 ザ・バンド解散後のリヴォン・ヘルムはソロに転じ、ドクター・ジョン、ポール・バターフィールド、スティーヴ・クロッパーらを従え、1977年に『Levon Helm & the RCO All-Stars』をリリース。翌79年には2枚目のソロ・アルバム『Levon Helm』を発表して順調に活動を行っていました。
 ミュージシャンとしてザ・バンド時代と変わらぬいぶし銀の魅力を発散していたリヴォン。この時期は俳優としての才能も開花させています。1979年、居住していウッドストックの隣人を介してトミー・リー・ジョーンズと知り合い意気投合。彼の勧めでロレッタ・リンの半生を描いた映画『Coal Miner's Daughter/歌え! ロレッタ愛のために』のスクリーン・テストを受け、ロレッタの父親役に抜擢されました。

トミー・リー・ジョーンズ
 日本では缶コーヒーのCMにおける「宇宙人ジョーンズ」役ですっかり有名になったアメリカの俳優。1970年公開の『Love Story/ある愛の詩』にて主役のライアン・オニール扮するオリバーのルームメイト役でデビュー。1980年公開の『Coal Miner's Daughter』ではシシー・スペイセク扮するロレッタの夫役を演じた。1991年公開のオリヴァー・ストーン監督作品『JFK』、1993年にハリソン・フォード主演で公開された『The Fugitive/逃亡者』への出演などで注目を浴びる。近年ではウィル・スミスと共演している『Men In Black』のシリーズが好評。

 撮影が進む中、栄光を築いたミュージシャンを脇役だけで放っておくのはもったいないと監督以下スタッフが思ったのか、サントラで歌声を披露してほしいと依頼。レヴォンはケイト・ブラザーズを伴ってナッシュヴィルでレコーディングに臨みます。

 旧知のフレッド・カーター・ジュニアを迎え、ナッシュヴィルの腕利きミュージシャンを集めて録音された、「Blue Moon Of Kentucky」。エルヴィス・プレスリーを始め、アル・クーパー、ポール・マッカートニー、トム・ペティ&ザ・ハートブレーカーズなど多数のアーティストに取り上げられているビル・モンローの名曲です。


 強者ミュージシャンとのセッションはリヴォン・ヘルムにとって新鮮な体験だったことでしょう。物のついでというわけではありませんが、気を良くしたリヴォン・ヘルムはアルバム制作を視野にいれてさらに20曲をレコーディング。そして、その中から厳選された10曲が『American Son』の収録曲として世に送り出されることになったのです。

 バック・オーウェンズに多大なる影響を与えたとされるソング・ライター、ハーラン・ハワード作の「Watermelon Time In Georgia」。愛しの彼女に会うために故郷へ戻るといった設定ですが、同時に自らのルーツである南部の音楽を辿るという意味合いも含まれているのでしょう。


WATERMELON TIME IN GEORGIA
ありがとうよ、デトロイト、よくしてくれたよ
でもなぁ、俺はここに長居をし過ぎてしまったようだぜ
金を散々使って遊んだが、行っちまった彼女が恋しいんだ
忘れられないことと言ったら、ジョージアのスイカの季節さ

田舎者をがっかりさせるよ
体は北に向かっているのに心は南に向いているんだ
戻ってくるよ、だから今日急いで出かけたほうが良いみたいだな
ああ、そろそろ行かなきゃ、ジョージアのスイカの季節だから

親父は日なたぼっこで、ガキどもは釣りをして楽しむ
年老いた猟犬が走りたがっている
もうすぐ俺の可愛いジョージアの彼女に会えるんだ
忘れられないことと言ったら、ジョージアのスイカの季節さ

あばよ、デトロイト、元気でな、友よ
メイコンに行くんだったら立ち寄ったほうがいい
俺の可愛い彼女に会えるぜ
俺は今日にも出て行くよ、ジョージアのスイカの季節だからさ

 1980年にテレビ番組、「Midnight Special」に出演した際のライヴ映像です。


 アルバムのラスト・ナンバーもジョージアを題材にした、ロニー・レイノルズ作の「Sweet Peach In Georgia」。オープニングの「Watermelon Time In Georgia」と内容が関連しており、あたかも対になっているかの印象を受けました。


SWEET PEACH IN GEORGIA WINE
ダルトンからの帰り道、俺はアトランタに向かっていた
残して来た彼女のことを考えながら
その時、窓から優しく甘い声が囁くのが聞こえた
ジョージアの甘いピーチ・ワインを試してみない?

彼女は俺に裏口を教えてくれた
それが何のためにあるのか話してくれたのだ
いつでも会いに戻って来てもいいのよってね
俺が行こうとした途端
年老いた保安官がいきなりドアから飛び込んで来た
お若いの、あんた俺のジョージアの甘いピーチ・ワインに
ちょっかいを出してくれたんだよな

彼女が保安官の娘だなんて知らなかったよ
まだ16歳にしちゃ大人びて見えたもんだ
勉強になったぜ、ほんとにもう
さて、10時から21時までお勤めさ
ジョージアの甘いピーチ・ワインを試したために

監獄から出れれば、のんびりとしていられねぇ
ジョージアの境界線に辿り着くまでは
だけど、メイコンにはちょっとばかり立ち寄るかもしれないけどな
お味見しないで出て行くなんて嫌だね
もう一度ジョージアの甘いピーチ・ワインを試してみたいのさ

 1981年にテレビ番組に出演した際の映像のようです。


 リヴォン・ヘルムは1940年5月26日、アーカンソー州マーヴェルに生まれました。生粋の南部人ですが、ジョージアの出身ではありません。しかし、より南部を象徴する意味からジョージアをこのアルバムのキーワードのひとつとして選んだのでしょう。

 アメリカ南部音楽への回帰が試みられた『American Son』。リヴォン・ヘルムのペンによるオリジナル作品はなく、収録曲はすべてカヴァーで纏められていました。ザ・バンドはロック・ミュージックにカントリー、ブルース、R&Bなどルーツ・ミュージックの要素を融合させ、音楽を通してアメリカ人が忘れていた文化や伝統や歴史をカナダ人の手で甦らせた人々です。その中で唯一のアメリカ人であり南部出身者でもあるリヴォン・ヘルムによって再びなされたルーツ・ミュージックを辿る取り組みには説得力があり、無理せず内側から自然に湧き出る想いが汲み取れました。
プロフィール

Author:Backstreets c/w 裏通り
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