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好きな音楽のことについて語りたいと思います。

Home - Karla Bonoff

 新型コロナ感染拡大防止のため、不要不急の外出を控え、旅行や帰省の自粛が呼びかけられています。今年のゴールデンウィークはやむなく予定をキャンセルされた方も多かったことでしょう。私は旅行好きでもなく、生まれて以来京都で育ってきたので、帰省にも無縁です。しかし、たまの旅行や出張から京都に戻ってくると、達成感や安堵感で心が満たされたものでした。そんな感覚はコンサートやイベントを鑑賞するために出向いた大阪からの帰路でも覚えることがあり、今でも京阪電車の窓から京都タワーが見えると、なぜかホッとした気分が込み上げてくるのです。

 さて、今回はカーラ・ボノフが1977年にリリースしたファースト・アルバム『Karla Bonoff』から「Home」を取り上げます。この歌には人生の中で、関わった人々の顔を思い浮かべる望郷の念が語られていました。仕事に追われ、心身が消耗する都会での生活。成果を出そうと努力しながら切磋琢磨していると、他人への競争心が芽生え、やがて嫉妬心に変わって行くことも。そして次第に人間関係が悪化。耐えられなくなり、癒しを求めて故郷へ戻りたくなるものなんでしょうね。
 コロナ後は人々の価値観が変わり、働き方も大きく変化することが予想されます。Uターン・Iターン転職や企業の地方への本社移転が注目されて久しいのですが、今後はそのような動きが活発になるのかもしれません。もちろん職種や業態によって、そのようなことは不可能な場合も多々あるでしょう。それでも都会の過密を避け、自然に恵まれたゆったりとした環境の中で働く方が、ゆとりや豊かさが生まれ、却って効率的であるといった考え方があります。一極集中や経済効率優先の仕組みを見直し、過密でも過疎でもない、適切な「疎」の状態が推奨され、現実化される時代となっていくのでしょうか。それとも徐々に以前の日常に戻っていくのでしょうか。そして、そのような働き方は専門家会議が提言した「新しい生活様式」と通ずるものがあるのでしょうか。それは個人や企業の価値観や活動の変化であるとともに、社会と政治に求めらる課題でもあると思います。





HOME
夜の旅はヘッドライトが眩しい
何度も目を覚ましたわ
そして私の脳裏をよぎったのは
故郷の我が家と暖炉の炎

故郷が優しく歌いかけてくれる
じっとしていても
いつしか翼をつけ
山を越えていた

列車で行ったり来たりする
都会の疲れ切った暮らしの間で
今までに出会った人々の
顔が見え隠れする
心の奥ではわかっているでしょ
奮闘努力が、やがて対抗心になるってことを

故郷が優しく歌いかけてくれる
じっとしていても
いつしか翼をつけ
山を越えていた

夜の旅はヘッドライトが眩しい
まもなく朝陽が木々の間から顔を出す
次の曲がり角あたりでは
花々が故郷の甘い香りを
そよ風に乗せて届けてくれる

 2005年の東京公演の映像です。マンドリンを弾いているのはブリンドル時代の同僚、ケニー・エドワーズ。ストーン・ポニーズを始め、リンダ・ロンシュタットの協力者としても有名な人でした。


 ボニー・レイットのカヴァー・ヴァージョン。1977年リリースの『Sweet Forgiveness』に収録。彼女のソング・ライター発掘力には定評があり、カーラ・ボノフと同様、ジャクソン・ブラウンやエリック・カズの楽曲を自らのアルバムでいち早く取り上げ、世に知らしめた功績は看過できないものがあります。


 アイルランドを代表する人気シンガー、メアリー・ブラックのヴァージョン。1983年の『Mary Black』に収録。優しく温かみのある歌声が心に残ります。


 最後は再びボニー・レイット。2020年4月7日、新型コロナによる合併症によって帰らぬ人となったジョン・プラインを偲んで歌っています。


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The Beach Boys - In My Room

 相変わらずの新型コロナ報道。メディアでは医師や専門家の先生による「今のニューヨークの状況が、2週間後の東京」、「日本国民全員に毎週のPCR検査を実施せよ」といった趣旨の解説や意見が賑わっており、国家や医療を崩壊させたいのかと勘ぐってみたくなるような印象を受けております。

 そんな暗く沈んだようになる気分を吹き飛ばしてくれるような1曲はないものかと思いを巡らせていると、5月の爽やかな涼風と眩い陽光の下、ふとザ・ビーチ・ボーイズのCDが目に止まりました。そこで、今回は彼らが1963年9月16日にリリースしたアルバム『Surfer Girl』に収録されていた「In My Room」を取り上げます。作者はブライアン3兄弟の長兄であるブライアン・ウィルソンとゲイリー・アッシャー。ゲイリー・アッシャーは後にザ・バーズのアルバム(『Yonger Than Yesterday』、『The Notroious Byrd Brothers』、『Sweetheart of The Rodeo』 など)のプロデューサーとして名をあげました。なお、ゲーリー・アッシャーはウィルソン家とご近所さんだったことから親交を深め、ブライアン・ウィルソンと楽曲を共作する仲になったとのこと。バンドやソロでレコードをリリースした経験があり、大学生の時に学費と生活費を捻出するために銀行で働いた経歴もあるというゲイリー・アッシャー。音楽にもビジネスにも才能がありそうな男が、ブライアンに近づく状況を父親のマリーは快く思わなかったのか、やがてゲイリーを出入り禁止に。それでもブライアンとゲイリーの友情は続いていったのです。

 



IN MY ROOM
自分の秘密を打ち明けられる世界がある
そこがこの部屋
俺の部屋なのさ
閉じこもって心配や恐れを締め出す世界
そこがこの部屋
俺の部屋なのさ

夢を見て 計画を練り
横になって祈る
涙を流し ため息をつき
過去を笑い飛ばす

闇の中でひとりきりでも
俺は怖れない
この部屋にいれさえすれば
俺の部屋にいれさえすれば

この部屋に
俺の部屋に

 この曲はブライアンの父であるマリー・ウィルソンとの確執がテーマとなっていると思われます。ソングライターであり、ビーチ・ボーイズのマネージャーを務めたマリー・ウィルソンは自己顕示欲が強く、しばしば家庭内暴力で子供達を屈服させていたとか。前述のゲイリー・アッシャーに関する逸話を鑑みると、自己独占欲や嫉妬心も強かったのでしょう。そんな彼が、マネージャーとしてバンドの行動全てに口を出すのは当たり前。ブライアン3兄弟のみならず他のメンバーも「おっさん、ええ加減にせいよ」と嫌悪感を抱いたとしても無理もないところです。それでブライアンらはマリーを解雇するのですが、マリーは報復行為のようにサンレイズというあたかもビーチ・ボーイズのフォロワーのようなバンドを1964年にデビューさせたり、1960年代後半には勝手にビーチ・ボーイズの版権を売却して大金を手に入れるような行動に出ました。そうした出来事が、ブライアンに精神的重圧をかけることになっていったのです。

 TVショーの映像のようです。ブライアンの切なさがよりいっそう込み上げてくるかのようなストリングスが、効果的に挿入されていました。


 それではこの曲のカヴァー・ヴァージョンを幾つか紹介しておきましょう。まずはカントリー・シンガーのジョディ・ミラーのヴァージョンです。この曲をカヴァーしたアーティストはおそらく彼女が初めてでしょう。淡々としたビーチ・ボーイスのヴァージョンとは対照的に情感込めて歌い上げています。1965年リリースのアルバム『Home Of The Brave』に収録。
 


 お次は1960年代後半に結成されたソフト・ロック・バンド、サジタリアスのヴァージョンです。サジタリアスは、この曲の共作者で、ブライアン・ウィルソンの盟友であるゲーリー・アッシャーとザ・ミレニアムのカート・ベッチャーを中心としたプロジェクト。演奏はミレニアムとスタジオ・ミュージシャンによるもので、正規のバンドではありません。彼らのセカンド・アルバム『The Blue Marble』(1969)に収録されていました。


 リンダ・ロンシュタットのヴァージョンは『Dedicated to the One I Love』(1996)に収録。囁くようなリンダの歌声はもとよりハープの音色が琴線に触れます。


 ブライアン・ウィルソン参加のタミー・ワイネットのヴァージョンです。『Tammy Wynette』(1998)に収録。タミー・ワイネットはカントリー・ミュージックのファースト・レディと呼ばれるほどの絶対的な存在でした。


 カーリー・サイモン、ディヴイッド・クロスビー、ジミー・ウェッブの嬉しい揃い踏み。ブライアン・ウィルソン・トリビュート・コンサートからの映像です。ビデオ『An All-Star Tribute to Brian Wilson』(2001)に収録。


 娘さんたちのヴァージョンも紹介しておきましょうね。ブライアン・ウィルソンを父に持つカーニー、ウェンディ姉妹とママス&パパスのジョン・フィリップスとミシェル・フィリップスを両親に持つチャイナによるコーラス・グループ、ウィルソン・フィリップスです。彼女たちのサード・アルバム『California』(2004)に収録されていました。


 それでは、ビーチ・ボーイズの歌声にロンドン管弦楽団の演奏を組み合わせたアルバム『The Beach Boys With The Royal Philharmonic Orchestra』(2018)に収録されていたヴァージョンで、今回はお開きとしましょう。


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